本日の講座概要と講師の紹介
※このテキストは『デジタルマーケティング連続講座② デジタル・マーケティング概論 ~最新デジタルマーケティング事例に触れる~』の書き起こしです。文中の登壇者名表記は敬称略。
池田:はい、皆さんこんばんは。今週も始まりましたMARPSでございます。今日から本番。先週はオリエンテーションでしたので、今週から本番が始まります。デジタルマーケティング連続講座、今日は概論の回でございます。
講座全体の構造と概論の重要性
全体のスケジュール感は全16回ですね。もしかしたら、後半にいろんなテーマの講師が足されて16回から延長される可能性もなきにしもあらずですが、概ねこのスケジュール感でやっていきたいと思っております。
マーケティングはとにかく範囲が広く、1個1個の奥が深いので、全体感を掴むっていうのがこのテーマについて学んでいく上ではめちゃくちゃ重要なんですね。ということで、今週のこの概論1と来週、次回ですね、概論Ⅱは是非とも受けていただいた上で、1個1個の細かいテーマのところに入っていっていただければと思います。
今日は、こちらの概論1ですね、デジタルマーケティング概論。このテーマについては、もうこの方の右に出る方はいらっしゃらないんじゃないかっていうお話を今日は聞けると思います。本間さんにお越しをいただいております。
前回オリエンテーションの復習
本間さんにバトンタッチする前に、ちょっと先週のオリエンテーションでもお話をした内容を本当にささっと復習をして入っていきたいと思います。
まずこのデジタルマーケティングもマーケティングも同じなのですが、とにかく領域が広く奥が深いんで、もう全体像が分からないとか、学ぶ順番が分からない。あとは、自分が今全体のどこで何を学んでいるのかが分からなくて迷子になってしまうみたいなことっていうのが本当に多いです。なので、これを解消するプログラムを今回は組んでおります。
とにかく、幅が広く奥が深いので、1個1個のテーマのところにぎゅっと入りすぎて行ってしまうと、あれ、結局一体これって全体のデジタルマーケティングなりマーケティングの中のどこのパートなんだっけといったところが分からなくなっちゃうんですね。
マーケティングというのは、非常に範囲が広い。売上を獲得するために様々な活動が、いろんな部署で同時並行的に行われているわけですから。このマーケティング活動の線の中で、前工程、自分の工程、後工程がどのように線としてつながっているのかということを意識しながら、個別具体を考えていくといったところがとても重要になります。
「知る」から「わかる」へ
皆さんはこの講座を通して、この「できる」の最終ステップに行かないと、仕事の精度が向上しないわけですから。学ぶために学んでいるのではなくって、仕事ができるようになるために学ぶわけ。知るっていうところですね。
この「知る」から「できる」というところは、即座に飛べないよっていう話は前回詳しくお話させてもらった通りです。仕事っていうのは、個別具体でそれぞれ状況が全く違う。同じ仕事だって、去年やっている仕事と今年やっている仕事っていうのは、内容は同じかもしれないけれど、状況が変わっているわけだから。必ず自分の頭で考えてカスタマイズをしながらチューニングをかけなきゃいけないわけですね。
そのことは、知っているだけだとできるようにならないわけですね。現場で応用ができるって自分で分かっているからできるわけです。なので、「知る」だけじゃなくって「わかる」状態にならないとできないっていうことですね。
この「わかる」から「できる」というのは、もう皆さんが現場で実践をしていく他ないです。どんなに学んでも、「わかる」ができるようになるには、もう皆さんがご自身で頑張るしかない。
世の中にかなり多いこの「知る」というコンテンツは、そのままではやっぱり「わかる」というところに行かないので。是非皆さんもこのデジタルマーケティング連続講座では、知っているとか聞いたことがあるという状態ではなくって。わかったのかと。自分はきっちりちゃんと理解ができたのか、納得できるのか、人に説明ができるのか、チューニングができる状態になったのかということを意識しながら是非学んでいってください。
そのわかるっていうのはどういうことかと言うと、やっぱりこの全体の体系の面の中で、どの線のパートを占めている点なのか。といったところの点と線と面がつながっている状態が、僕は分かっている状態だと思っています。この段階を分かっているから、立体って書いているのは、状況に応じてチューニングをすることができる状態になっているということですね。
くどいですが、とにかくデジタルマーケティングはいろんな手法だったり、テクノロジーだったり、ツールだったり(点ですね)が次から次へと出てくるので。その1個1個のところはとても重要なのですけれども。とにかくその点というのがどんな線の中の点なのか。それは全体の体系の面の中におけるどの線の部分なのかというところを常に意識しながら、とにかく点を学んでいくということですね。
デジタル時代のマーケティングへの適合
今までのリアルにデジタルマーケティングが追加された時代から、あらゆるものがデジタル化をした時代におけるマーケティングを皆さんは学んでいくべきですから。デジタルマーケティングの最新情報を学んでいくというよりは、デジタル時代における今までの従来型のマーケティングをどのように最新のデジタル時代に適合させていくのかっていう考え方を常に意識をしてください。
マーケティング、デジタルマーケティングの究極のゴールっていうのは、このOne to Oneマーケティングをマスレベルかつリアルタイムで行っていくことを通して、マーケティングを向上させることだと思ってますので。ゴールはもうここ1点なのかなという風に思ってます。
このビジネスとマーケティングの位置関係の中で、トランスフォーメーションが起こっているわけですが。このDXとMDX(マーケティングデジタルトランスフォーメーション)で。今日はこのマーケティングデジタルトランスフォーメーションのかなり広義の全体的なお話、全体感を理解をしてもらうという回になります。
これから16回、残り15回ですね、で学んでもらうのは右側がファネルマップの各個別な具体的な手法についてですが。ここに入っていく前に、この概論の1と2を学んでもらうというのが、今日と次回ですね。次回は、ベストインクラスプロデューサーズの菅さんに来ていただいて、概論Ⅱのお話をしてもらいますので。是非今回と次回は概論を理解をするという意味では、セットで是非聞いてください。
デジタルマーケティングの定義
講演者の自己紹介
本間:じゃあ、皆さんと一緒に資料を共有しながら講義の方を進めていこうかなと思います。
今日マーケティング論として、チャプター全部で4つ用意してます。皆さん1回目なので、デジタルマーケティングという言葉の定義が多分それぞれ違うと思うんですよね。なので、その定義っていうのを1回、私の定義は割と広めなんですけど、いろんなことをちょっと考えて欲しいなと思って広めの定義をお伝えします。
チャプター2からチャプター4まで、今日はケーススタディをたくさんお持ちしました。普段、日本でマーケティングをされてると、僕も花王という会社でマーケティングしてたんですけど、マーケティングの現場にいると意外と他社のマーケティングを見る余裕がなくなっちゃうので。
今日は割と他社のマーケティングを浴びていただいて。あ、確かにこういうところでデジタルマーケティングって進化してるねとか。あ、こんなやり方もあるんだとか。あと、これもデジタルマーケティングだったねみたいな確認をちょっとしていただきたいと思っているので。
今日はどちらかというと視座を広げていただき。そして、皆さんこの後15回学ぶと思うんですけど、より多くのことを吸収できる状態にガイドできたらいいかなという風に思っていますので、よろしくお願いします。
池田さんから簡単に紹介はしていただいたんですけど。元々は花王という会社に1992年から2015年まで23年間いました。20年間マーケティングの仕事をさせていただいておりました。1992年って私生まれてません、僕生まれてませんって方も今日はいらっしゃると思うんですけど。インターネットが日本に登場したのは1995年なので、1992年にはデジタルマーケティングという言葉はなかったですね。
逆に言うと、私の歴史はデジタルマーケティングが生まれた瞬間からデジタルマーケティングをずっと見てきたので。いろんな経験をさせていただいたってことがちょっとだけ皆さんと違う視点かなと。初期段階っていうと限りなくデジタルマーケティングも限られたメンバーでやっていたので、コアメンバーとたくさん会ってきたなみたいなことが、自分の1つの過程かもしれません。
で、今は、マーケティングサイエンスラボという会社で、取締役というのか所長という肩書きでいろんな会社のマーケティング支援してたり。元々は数学家、数学者なので東大で数学を教えてたりするっていうようなステージに今います。本なんかも書かせていただいているんで、興味があったら、もう書店に本は並ばないので、Amazonとかでオーダーしてください。
国内外の定義の比較
皆さん、デジタルマーケティングの言葉の定義ってどう思ってますかね。デジタルメディアを使ったマーケティングのことを言う人もいるでしょうし。池田さんが説明されたように、マーケティングデジタルトランスフォーメーションを使ったデジタルマーケティング全般のことを思ってる方もいらっしゃるでしょう。
いろんな定義があると思うので、僕もこういう講義をする時には、そもそもどんな定義をみんなしてるのかなと思って定義を拾うことが多いんですけど。日本の代表的な協会と団体さんや企業さんから定義をいただきました。
- 日本マーケティング協会:インターネットやモバイル端末などのデジタルメディアを活用して行うマーケティング活動全般というのがデジタルマーケティングの定義だそうです。
- 電通様:デジタルテクノロジーを活用し、企業と生活者の接点を創出、拡張し、企業のマーケティング目標達成を実現するための施策って書いてますね。施策はマーケティングのアクションのことを言ってるでしょうかね。
- サイバーエージェント様:オンラインを中心としたデジタル技術を活用して、企業と顧客をつなぐマーケティング活動。皆さんの頭に1番近いのはどれでしょうかね。
- アメリカマーケティングアソシエーション(AMA):the use of digital channel to promote or market products and service to consumer and business. 消費者及び企業対象にデジタルチャネルを利用して製品やサービスを宣伝または販売すること。
AMAの方は販売って言葉が入っているんです。日本の会社はやらないんですか?いや、そんなことじゃないと思うんですけど、多分定義の書き方が難しいんでしょうね。なので、アメリカのAMAの方は販売も入っています。 - デジタルマーケティングインスティチュート:digital technologies to build targeted, measurable communication that assist the acquisition and retention of customers, and while building deeper relation with them. デジタル技術を統合的に活用し、ターゲットを絞った測定可能なコミュニケーションを構築することで、顧客の獲得と維持を支援する。
今日おそらく池田さんが最後に見ていただいた、One to Oneかつリアルタイムにマーケティングするという概念に極めて近い定義だと思います。
定義が若干アメリカの方が広いかもしれませんね。日本は具体的なメディアやテクノロジー、インターネットメディアを使うんだ、スマートフォンを使うんだっていう風にメディアや技術に言及していて。アメリカではそこの定義はあんまり入ってないです。デジタル技術全般使えばいいよねって言っていて。
日本は企業と顧客をつなぐっていう、どちらかというとぼんやりとした目標に対して。アメリカは、もう顧客獲得とか関係構築とか、ことによっては販売なんでしょうと。ビジネスゴールの設定が明確になっているのがアメリカの定義かもしれません。
ただ、ここら辺の定義は、個々で定義をされればいいと思うんですね。どれが正解ってことではなくて、定義はマーケター自身、私たち自身が決めればいいと思うんですけど。
デジタル化された顧客の変化
ECサイトの経験が実店舗の買い物に与える影響
結構重要なのは、マーケターが提供しなくてもお客さんがその先を行ってしまっている可能性があります。お客さん、消費者・生活者が考えているデジタルマーケティングって何なのかというのを考えることも重要かなと思うので。最先端のお客さんの状態をちょっと見てみましょう。
1番最近僕がお話をする例で言うと、この例をお話します。この中でECサイトを使ったことがない人ってもはやいないと思うんですね。
このECサイトを使っていることに関して、これはウォルマートさんが発表した資料です。ウォルマートさんのこれ、トイレットペーパー売り場です。ウォルマートのトイレットペーパー売り場ってイケてないよねっていう発表を2018年にしたんですね。
なぜイケていないのかと言うと、皆さんがトイレットペーパーをお店に買いに行った時。どれが得なのか僕は明確な答えを言えません。
なぜかというと、お店にトイレットペーパーってどんな状態であるかっていうと、まずシングル、ダブル。1枚、2枚重ねってサイズがあって。ビニールパッケージの中に入ってますよね。8ロール入り、6ロール入り、12ロール入りみたいな。ロールが違ってて、何個入ってるかの数ですよね。次にさらに30m、45m、60mってメーターが書いてある。で、プライスリストが書いてある。
どれがお得って言われた時、いやいや、1m当たりの金額換算できないので分かんないんですよ。なんだか重たそうなやつで安そうなやつを選ぶってこと、いつもお店でするんですけど。
これってECではこんな風になってないんですよ。ECで皆さん後で、お好きなビールでもジュースでもいいので買ってみてください。通常皆さんおすすめモードで見てると思うんですけど。おすすめじゃないパターンで見ると、ここに1回あたりいくらって表示が出てます。ECサイトでは1巻きあたりいくらっていう値段が表示されてるのに、リアルの店舗では1mあたりとかの価格って出てないんです。
最近だとドラッグストアさんのゲンキーっていうドラッグストアが関東近辺にも進出してますけど。このゲンキーさんは単価を提示してくれるドラッグストアなんですけど。
ウォルマートが言っているのは、ECの登場によって、お客さんってタイムパフォーマンスを求め始めてるよね、と。タイパって言葉が出る前からタイパってことを言ってました。トイレットペーパーって元々受け取る価値は低いのに、なぜか店舗で相当に時間を使わせていると。
でもお客さんは、価値が高かったら悩むし、価値が低いものは悩みたくないんだと。これって、お客さんがECサイトの経験によって得られたリアル店舗での買い物の変化なんだよねって言ってるんです。
これもデジタルマーケティングなんです。すなわちどういうことかというと。デジタル化されたお客様に対応するマーケティングの仕事も当然デジタルマーケティングなんです。意外とここって重要なんですね。
皆さんも、コロナ以後、居酒屋とかレストラン行ったらQRコードでモバイルオーダーすることが増えませんでした?これって結構便利だと思っていませんか。だって店員呼ばなくてもオーダーできるし、好きなタイミングでオーダーできるし。実は店員よりカスタマイズすることができますよね。
スターバックスのモバイルオーダーめちゃめちゃカスタマイズ可能じゃないですか。ココイチのカレー屋の場合、タブレットが置かれてますけど。ココ壱のタブレットの方が多分、好きなだけトッピング乗せられますよね。
あれ、店員に多分言うと嫌な顔されますよね。ソーセージとオムライスと野菜1/2とチキンカツ1個みたいな。そんなハイカロリーのカレーはオーダー出しちゃいけないのかもしれませんが、それでもオーダーできるようになっている。
すなわちどういうことかというと、デジタルによってお客様が変化してて。そのお客様の変化によってマーケティングが変わってるんです。
AIによる検索の常態化
似たことがあるのでちょっと映像を見て。
Googleの新しい検索エンジンで。実際の画面をちょっと見ていただこうと思います。ここにこんなフラスコマークがついたのにお気づきでしたかね。このフラスコマークはGoogleの検索エンジン、2年前からAIによる検索が可能になっています。ここにサーチラボAIによる概要って出てますけど。上に「なぜパンダは笹を食べるの」って打つとですね。
今までは多分この下しか出てこなかったんです。なぜパンダが笹を食べるのか書いてあったウェブサイトのリンクがあって。それを僕たちは押して、押さないと、なぜパンダが笹を食べるかどうかの理由にたどり着かないっていうのが今までの検索コードでした。
ところがGoogleはもう、答え出しちゃえばいいじゃん。検索エンジンじゃなくってAIでってなったので。ここにAIで出せるようにしたんです。今この生成AIはチューニング中なのと、いくつかの国の法規制の問題で、出る答えが相当絞られています。
ただ、こうやって「なぜパンダは笹を食べるの」っていうと、出てきます。これ、リンクボタンを押すと、どのウェブサイトからそのコンテンツ拾ったよってのも参照ボタンが全部出るんですね。これがChatGPTにない機能で。
ChatGPTはどこからその答えを拾ったのかっていうリファレンス、参考文献の身元を明かさないんですけど。GoogleのこのサーチラボAIは、参考文献の記述を全部表します。で、実際にそこのページ、これを押していただいたら、そのページから拾ったよって確認ができるんですね。
なんでこんな話をしてるのかって言うと。実は私たちはユーザーとしては知らず知らずAIを使っています。なんかAIのアプリ入れたみたいなことをよく巷で話してると思うんですけど。皆さんAIのアプリを入れなくても、Googleで検索してる時に知らず知らずAIを使ってしまっています。
AIを活用したコンテンツクリエーション
それは逆に言うと、コンテンツをクリエイトする側にも影響は出ていてですね。後で「マーケティングアドバイザー」と打ってみてください。なぜか私のサイトが上の方に来るようになってる人が数名いらっしゃると思います。
うちの会社はめちゃ小さいです。創業3年目です。なのに、なんで1位になってこのコンテンツが出るのかっていうと、そもそもこのコンテンツに行くんですけど、このページ僕は書いていません。
実はCreative Driveとかにいくと、いくつかのAIライティングツールってのはもう世の中に存在しています。このAIライティングツールによって書いてもらった文章がこれです。AIライティングツールはSEOのことをよく知っているので。SEO上位になる方法を考えた上で、ここの文章を作成してくれるんです。
どういうことかというと、お客さんもAI検索するんだったら、コンテンツクリエーションもAI使っていいじゃんっていう流れなんですね。
例えば今、Creative Driveが難しいか簡単かって言うとめっちゃ簡単です。Creative Driveさんのツールの場合、ここにSEO対策って入れていただく。と、簡単にSEO対策の文章が5分から10分で生成されます。
このコンテンツに関しては、ちゃんとCreative Driveさんで、裏からChatGPTを使ってるんですけど、著作権的なものに関してはクリアされた状態の文章を生成してくださっていて。そのまま自分のウェブページに貼り付けていただければ、コンテンツとして完成します。
AIのいいところは、SEO上位に来るという以外に、人間って些細なタイピングミスとかミススペルとかはするんですけど。AIだとタイピングミス、ミススペルがないんです。このツールの通りで言うと、値段表も、後でこの人のブログ、これブログなんですけど、追っかければわかるんですけど。非常に安価で、月2万円で5記事まで無料とか、そんな状態になっています。
領域が広がるデジタルマーケティング
すなわち、この1、2年で急速に、1個考えなきゃいけないのは、お客様のデジタル環境が相当変化してきています。ECにこなれてしまったお客さんが、すでにAIを使っている。そして、なんだったらお客さんがAI検索に対応している。それをひっくり返すと、私たちマーケターもAIを簡単に使えるようになった。去年よりも今年の方が多分皆さんAIをたくさん使ってますよね。
AIを使った、グラフィックのクリエーションが1番最初に話題になりましたけど。映像、画像の制作以外にもテキスト生成とかにまで及んできた。このAIも今や当然デジタルマーケティングの1つの範疇なんです。
多分これが5年前だったら、ウェブサイトどう作るの。SNSのお客様とどうエンゲージメントするの。SEOどうするの。ウェブのアクセス分析どうするのっていう風に、まだ少し守備範囲が狭かったかもしれません。AIの登場によって、拡大に範囲が広くなっています。
なので、実はデジタルマーケティングの領域、相当広いんだってことをまず認識してください。今日はその意味で3種類これからお話をします。ウェブサイトの話もあります。スマホのアプリの話もあります。マーケティングにおける製品の設計の話もありますが。
全てAIに絡んだお話を用意したので、あ、こういうのもそういうマーケティングなんだなと思ってちょっと聞いていただけたらと思います。全て実在するものなので、皆さん後で自分で調査かけていただけると、あ、そうか、そうかってさらに勉強できると思います。
AIを活用したEC/D2Cの進化
StichFix:AIスタイリストによるパーソナライゼーション
まず、StichFixというECサイトをご紹介します。残念ながらこのStichFixという事業は日本には進出していません。ただ面白いもので、服のサブスクリプションモデル型ECです。
このStichFixもできて15年以上経つ古のアパレルブランドです。日本だとZOZOさんとかが有名なんですけど。日本でスタイリストがつくサービス、ECではあんまりないんですが。
このStichFixは、スタイリストさんがお客様の体型、サイズ、好み、ライフスタイルを聞いて、以前は5アイテム勝手に箱に詰めてお客さんに送るというモデルでした。その5品に関して、お客さんは届いたら試着して欲しい商品だけ残して返品をするというモデルです。1年間に12回届くんです。その12回、最低1着買うんだろって前提でのサブスクリプション契約になります。返品の度数によっては、お金が返金されることもしていたそうです。
今まではこの返品によって、スタイリストさんはこの人の好みをさらに学習してフィードバックがあるので。それでさらにお客様に、よりお客様にふさわしい服を提案したり。あとはトレンドが変わるので、トレンドに応じて新しいスタイリストの提案をするってことで。ビジネスをし続けていたモデルなんです。
StichFixさんはこれをですね。コロナ禍において大きなビジネスインパクトがありました。やっぱりコロナになるとですね、人って服着て出かけなくなるので。このStichFixのビジネス自体、1回相当減衰しちゃったんです。立ち行かない状況になってしまいました。
彼らは、リアルなスタイリスト2000人、1番多い時でいたそうなんですけど。そのスタイリストを解雇せざるを得なくなってしまったんですね。解雇するときに彼らは、それをポジティブに捉えて、スタイリストをAIにしようって考えたんです。
AIのいいところっていうのは、スタイリストさんって人なので。この好みの人にこれ提案してもダメだよねって勝手に人なりの忖度をするんです。ところがAIというのは、もうデータに関してはすごい透明な瞳で見るんだけど、人に対してこの服はないんじゃないの、人が悪いんじゃないのっていうような提案をしてくるので。AIはですね、顧客が普段選ばないようなアイテムをも提案してくれるそうなんです。
StichFixのモデルってここに書いてあるように返品可能。だから、歩留まり悪くても送るのは勝手なんですね。StichFix自身は、AI提案したから返品されるかもしれないけどいいかって言って、入れて送ってたそうなんです。そうすると、「あれ、なんだ。提案しとけばよかったじゃん」って話になる。
結果、AIの方が提案の範囲が広くって。AIの方がデータ分析を24時間365日眠ることもなくやり続けるんです。だから、このフィードバックの分析をずっとやってくれることで、実は今ではコーディネーターの人よりも精度が高くなってるってStichFixは言っています。
しかもですね、今までは2000人のスタイリストの情報って、スタイリスト間では共有されてなかったそうなんですね。スタイリストさんごとに、得意な客別にスタイリストグループを切ってたそうなんです。
ところがAIは、どんなにデータ見ても疲れることはないので。全部のデータを見て分析してるそうなんです。そうすると、40代女性でこういう服が流行ってる。30代に提案したらどうするかなってAIは考えるんです。結果、今まで以上にスタイリスト提案の幅が広がってるんです。
人とAIの役割分担
もちろん、人もスタイリストとしては残ってます。この「人のスタイリスト」は、お客様とのコミュニケーションのみ担当することになったんです。
ねえねえ、今回こんな服一緒に箱に入ってたんだけど。この服の着回し方わからないんだよねとか。なんでこの服を送ってきたのってクレームもあるんですね。その時にスタイリストは、服を送った理由だとか。例えばトレンドから来ているのかとか。
「お客様に似たようなタイプの人たちが、これを着て喜ばれてたのでお客様好みかなと思って送りました」とか。あとは、せっかく送ってきた服を他のものと組み合わせたいんだけどみたいな問い合わせもあるので。その時に、他の服との組み合わせみたいなことを提案をすることによって。これをやることによって、この人はカスタマーサポートCS。顧客満足重視の仕事に注力できるので。かなりStichFixは復活したんです。
ここで勘違いして欲しくないのは、AI時代になったから、人の仕事が取られるっていう論調ではないです。StichFixも実はAIが得意な仕事と人が得意な仕事を明確に分けてって言い方をしています。
AIはデータ分析力にたけているから。今まで考えもしなかったデータ分析ってのはAIに任せるべきなんだと。ところがチャットボットみたいなもので、顧客満足度が上げられるかっていうと、それはある一定レベルは上がるんだけど。本当の深いところの分析は人がやるべきなので顧客対応は人がやりなさいってことを言ってるんです。
拡大するAI活用の事例
このことから学ぶことは結構多くて。ECという世界において、今AIはとても注目されてます。
今までは実はAmazonのレコメンエーションエンジンに叶うものはないと思ってたんです。ところがStichFixの事例。このStichFixのAI活用ってあんまり有名にならない理由はですね、StichFixのビジネスがそんなに大きくないんです。正直に言うとAmazonほどでかくないから日の目を見ないんです。
ところが逆のことを言うと、StichFixのような小さな会社でもAmazonのレコメンデーションエンジンと同等のものを提供できるくらいAIが安価になっているってことですね。ビジネスのデザイン設計をちゃんとすればいけるってことが分かり、そのことによって、実は海外ではこのモデルがめちゃめちゃ増えています。
- エーソス(ASOS):ASOSってのは日本にも進出してるので、ECサイトとしては日本から買えるんですけど。ここもAIを活用して顧客の好みやサイズを分析してパーソナライズされた商品を提供しています。
- フェアフェッチ(Farfetch):フェアフェッチってのも日本で買えるんですけど。ここは高級アイテムに絞られてますが。高級アイテムに関して、ここはパーソナライズされた商品推薦をしています。かつ、顧客がアップロードした写真の分析を結構してくれます。どういうことかというと、「こんな服ない?」って、お客さんは画像検索が可能になっていて。画像検索っていうのは結構良くってですね。お客さんが持ってる服ってこれなんだってわかるわけですよ。だって画像検索できるってことは、お客さんが持ってる服でしょうからね。今までお客さんの持ってる服は何?みたいなデータは集められなかったんですけど。フェアフェッチはお客様が持ってる服リストを作れる状態になったんです。これって多分20年前だったら億を越える投資だったと思うんですね。ところが今はこのAIのエンジンってGoogleさんが無償で提供しているので。ちょっとしたプログラマーがいれば数千万円でローンチできて、そしてデータが溜まれば溜まるほどAIの精度が上がっていくので。プログラム開発以上にですね、データが溜まればいいので。早くやった人勝ちなんですね。
- インスタカート(Instacart):インスタカートという食品のサブスクリプション会社があります。これ面白くって、インスタカートでいろんなSafewayとか、Walgreens、これ流通さんなんですけど。ホールフーズとかいろんなスーパーさんの商品をまとめて買えるサイトです。そうするとインスタカートに例えばピザを週末作りたい、家族でピザ作りたいって言ったら。ご存知ですかね。リュウジさんっていう料理研究家がいらっしゃいまして。リュウジさん並に固有名詞付きのレシピ提案をしてくれるんです。なので、例えば味の素のこれを使い、クノールのこれを使い、キッコーマンのこれを使ったら作れるよみたいなことを言ってくれるんです。それをいろんなチャネルからまとめて買って。商品届けてくれるっていうやつですね。この会社、ずる賢いのはお客さん向けのサービスを明確にやってるのかというと、実は裏がありまして。お店の在庫を知っているので、在庫が多いものから売るようにもなっています。なので、お客様と流通さんの痛いところを両方マッチングさせるAIサービスを、このインスタカートさんってのは提供しています。
- Netflix:1番有名な皆さんが使ってるのはNetflixですよね。Netflixのオープニング画面は全員違いますからね。どこかでNetflixの自宅とかスマホで見た画面、みんなでスクリーンショットを持って見せ合ってください。あれこんなに違うのねってぐらいになってますよね。それはどういうことかっていうと、お客様の過去の動画、視聴履歴によってレコメンドを変えますし。Netflixが1番注力してるのは「こういうコンテンツだと何万人くらい見そうだ」ってことを先に理解しているので。コンテンツの制作費の最適化を実は視聴データから行っています。
このように実はEC、D2Cの世界でAIっていうのはとてもよく使われているんですね。
皆さんの会社でもしECサイト持ってるよとか。CRMやろうよと思ってる会社がもしいらっしゃったら。CRM×AI。それからEC×AIってのはとてもホットな領域です。
今まではどちらかというとECサイトってのは商品説明。それから商品。それからそれに対する原稿を書くっていう。それを「ささげ(撮影・採寸・原稿の頭文字)」と言って、それがとても重要だと言ってましたけど。
そのディスプレイみたいなもうマーチャンダイジングの世界よりは、お客様に如何にパーソナライズして、お客様が欲しい商品に短い時間で接触させられるのか。それをリアルタイムにどれだけやるのかっていうのがこれからのECサイトの主戦場になってくるんじゃないかなという風には思います。
スターバックスにおけるAIマーケティングと業務最適化
DeepBrewの歴史とモバイルオーダー
それを実店舗でやってしまっている会社がスターバックスという会社です。スターバックスという会社は、デジタルマーケティングで他の会社がやりたくても、怖くてやれなかったウェブサイトを捨てて、スマホのアプリだけで勝負しようという会社です。
実はスターバックスさんでこの活動が1日にしてできたのかというと。歴史が相当古いです。モバイルアプリの実験は2007年スタートです。今から17年前ですね。
この17年前ってアメリカの状況を言うと、アメリカ人はQRコードってまだ知らないです。モバイル決済もまだないです。なのに、モバイルアプリでスターバックスはモバイルオーダーの実験をし始めたんです。立ち上がること10年。先へ進むこと10年。
スターバックスはQRコードを使って、このスタンドアローン決済って言ってますけど。お店でQR決済をし始めていました。日本でQR決済ってコロナまでホットじゃなかったでしょ。アメリカはもうボストンとか一部のエリアなんですけど。QRコード掲載してましたし。約1000店舗でバーコードスキャナーで連動したアプリも開発していました。
モバイル決済をすでに2010年からやってるんです。2011年、実はここまではずっとリンゴのiPhoneしか対応してません。で、2011年にAndroid用のスターバックスアプリを公開しました。
2013年、Squareってご存知ですかね。Twitter社を作ったジャックドーシーという人が作ったスモールビジネス用決済端末で、ここになんと200万ドル投資するんです。なぜかというと、スターバックスもこの後、携帯電話の直決済が主戦場になるって今から10年前に思ってたのでSquareごと買おうかなと思ってたんですけど。Squareの弱点が分かったので、彼らが偉いのは1年間でJP Morgan Chaseに決済(の連携相手を)変えるって。
そして2015年にジェリ・マーティン・フリッキンガー氏をCTOとして呼ぶんですけど、この人はまだスターバックスにいるんです。2015年にはクラウド使おうって言い出すんです。
2017年にMicrosoftと提携して、次世代パーソナライゼーションエンジンDeepBrewというものを始めます。DeepBrewはAIという言葉がない時代からAIが搭載されています。
モバイルオーダーの浸透とAIの活用領域
アメリカでは、スターバックスユーザーの75%がモバイルオーダーです。75%はモバイルでオーダーしといて。店に取りに行くだけってユーザーさんです。なのでモバイルオーダー&Payは非常に普及しています。
(モバイルオーダー&ペイの動画説明)
この動画ってなんかすごいお客様にとって便利だなと思ってると思うんですけど。AIマーケティングの、これからちょっとMicrosoftさんとやった説明の動画見てもらうんですけど。実はスターバックスはお客様のことも考えてますが、ビジネスの成長のためにこのDeepBrewっていうものを作っていたわけです。
(DeepBrewの動画説明)
スターバックスのAIエンジンが従業員の配置だったり。店舗の機器のことまで書いてるっていう表現が出てきたと思うんですけど。ちなみにあの動画の中ではスターバックスは今3万3000店舗と出てましたけど。それは2年前の状態で、スターバックスもアメリカでは今ちょっと辛い状態。1万3000店舗くらいしかお店がないです。
スターバックスはその外食産業の地殻変動以外にもう1つ辛い状況になっていまして。世界でコーヒー豆の不足という問題があります。自宅でコーヒー豆、粉を買いに行ってる方だとお気づきだと思うんですけど。コロナ頃の2020年に比べて、今2024年はコーヒー豆の値段が約1.3倍に上がってるはずなんですね。
理由を大きく言うと2つあります。1つ目はコーヒー豆の生産が少なくなってしまった。2つ目は、コーヒーを飲む人の人口が増えた。飲む人口が増えたところはどこかっていうと、中国とインドです。人口が増えていて豆が足りないので、実はスターバックスは今、全米で同じコーヒーを出すことがもはや不可能です。
従ってどういうことかというと、スターバックスにメニューというものは全店共通メニューが置けないんです。そこで出てきたのがこのDeepBrewというAIエンジンでもあります。
AIによる需要予測とメニューのパーソナライゼーション
アメリカではモバイルオーダーの人が75%であるっていうことはどういうことかというと。スターバックス本部で今日コーヒーが何杯飲まれたのかっていうデータを毎日本部側で集めることが可能なんです。
この過去のデータというのはとても重要で、この過去の販売データや天候などから、将来の需要予測ができるわけです。この需要予測ってのは当然、コーヒー豆の仕入れにも関係しますし、店舗スタッフの配置も予測できますよね。だからAIとデータをくっつけることによって。いろんなことができるよって話が1個できます。
店舗ごとの在庫管理もしなくちゃいけないです。さっきのスターバックスのモバイルアプリ。どのお店でピックアップするかでピックアップボタンがありましたよね。あれっていうのは、個店の在庫を逆引きすることが可能なわけです。なので、お店ごとの在庫の状況が見れます。
これをひっくり返してみると、あのメニュー表は全員違います。なぜ違うのかと言うと、例えばニューヨークで飲もうとした時とサンフランシスコで飲もうとした時に、まずニューヨークに置いてあるスターバックスの豆とサンフランシスコに置いてる豆は違うんですね。
だからこの人がニューヨークにオーダーに行こうとした場合は、DeepBrewのモバイルオーダーのメニューがニューヨークの豆によって作られてますし。サンフランシスコだったらサンフランシスコの豆で作られてます。
もう1つ。豆を勝手に変えちゃうとお客さんが不満足に思うので。お客さんの過去に飲まれたデータから、このお客様過去にこういうものを飲んでいるから、だったらニューヨークでオーダーする場合、ニューヨークのこのお店で1番過去に飲んだものに近いものは何だろうっていう推測でメニューを作ります。
なので、お客さんからすると。ああ、俺が好きなコーヒーあるって思ってるだけなんです。裏では在庫の計算とお客様の好みを合致し、しかもですね。温かい日はアイスコーヒーが上の方に出ます。寒い日は暖かいコーヒーが上で、暑い日は冷たいコーヒーが上に出るんですけど。この冷たい熱いも気温によってだけでなくて、気温とお客様がその時ホットとアイスどっちを頼んだかのデータによって分析してます。人によって違いますからね。
このDeepBrewはその人の思考に合わせてメニューを変えています。
予防的メンテナンスと事業の方向転換
次にこれからちょっとお見せするのがスターバックスの店内に置いてある1番高い機械の動画をお見せします。
(エスプレッソマシンの動画説明)
このスターバックスのエスプレッソマシンってスターバックス専用品なんです。スターバックス以外で使ってるお店はありません。なぜ置いてないかって言うと、まずエスプレッソが通常の1.6倍出るっていうのは、蒸気温度が100度じゃなくて160度とめっちゃ高くてですね。この機械じゃないとスターバックスの大量の注文を捌けないです。
この機器メンテナンス予測って今まで結構スターバックスで重たい課題だったんですけど、モバイルオーダーのデータ集めたらこの店エスプレッソマシン何回使ったじゃんってカウントできるよねって分かったんです。
カウントするってことは、そろそろこの機械稼働状況的に故障だよねって分かったら、早めに送っておけばいいんです。そうすると、予防的メンテナンスって言ってますけど、予防的に先に送っちゃえば機械のダウンタイムがない。なので、これに使ってます。
もう1つは従業員のスケジューリングです。だって朝晩しか混まないですもんね、スターバックスって。なので、そこの人員配置計画に使う。
スターバックスの事例ってアメリカの、最近この領域をAIマーケティングという言葉で言ってるんですけど。AIマーケティングの論文とか書籍の中では必ず出てくるのは。スターバックスさんのこのDeepBrewという取り組みなんです。
何がすごいのかと言うと、さっきのStichFixのように「AIを使ってお客様の体験を最大化する」っていうのが今までマーケターの1番の出口だと思ってたんです。ところがスターバックスがやってくださったことは、お客さんのプロモーション、お客様とのエンゲージメントもやるんですけど。それ以上にマーケティングって原価ってものが発生しますよね、この原価の最適化までメス入れたんです。
これって今までのマーケティングって特に日本の場合はプロモーション領域にデジタルをたくさん使ってたんですけど。生産計画とか仕入れ計画の方が実はデジタルとマーケティングデジタルトランスフォーメーション使えるじゃんってことを差し示してるんです。
すなわちマーケティングのフォーカスポイントが今までより広くなったってことをスターバックスは言っていて。それに気づかされたので、多くのマーケットを研究したからしてもスターバックスすごいじゃんってなってるんです。
さらに驚くべきことが2つあります。
- 1つ目。実はスターバックスはこのDeepBrewのAIエンジンを外販しています。スターバックスは他の外食産業にこのツールを売り出してます。元々コーヒー屋さんだったのに、今は外食産業のコンサルティングに変わったんです。
- 2つ目。スターバックスは単なるコーヒーメーカーではなくって。AIをよく知っている外食産業会社になったので。コーヒー事業よりもAIをよく知ってる外食産業の方が今市場のニーズが高いんです。したがって彼らは事業の、事業の主戦場を変換しようとしています。
ただしこれに成功するためにはAIの利活用がフォロワー企業、いわゆる後から来る企業よりも先にできていなきゃいけないんです。先行者特権なんです。後進の会社に対して自分たちのノウハウを提供しても、ノウハウを提供してる最中に多分スターバックスはさらに半歩先を行ってるわけです。
半歩先をスターバックスはやっておいて、自分たちでこれいいよねっていうAIテクノロジーを、他の皆さんにどんどん下ろしていくってことです。彼らは今までと違うゲームをし始めたってことですね。
ここがAIの恐ろしいところです。AIってやっぱり相当ゲームチェンジさせる1つのツールなんです。
コカ・コーラにおけるAIの4Pへの応用
製品開発:フリースタイル自販機によるフレーバー分析
そのことを、ある意味、愚直なまでにいろんなところでやってくれていることを見せてくれているのがアメリカのコカ・コーラかもしれません。まずコカ・コーラの話で言うと、データサイエンス的なことを最初にやっているので。その動画からちょっと見ていただきましょう。
(コカ・コーラのデータ分析動画の説明)
この動画はGoogleの動画なのでGoogleの検索の話が途中で出てきますけど。途中に出てきたハイテクベンダーマシン(自販機)って何って話なので。ハイテクベンダーマシンをコカ・コーラの役員が紹介してる動画をちょっと次に見ていただきましょう。
(コカ・コーラ フリースタイル自販機の動画説明)
このベンダーマシンを使った取り組みっていうのは。1番最初にアメリカで披露されたのは2018年なんですね。
なんでこんな自販機を使ってアプローチをしなくちゃいけないのかって言うと。アメリカにおいて。このハイテクベンダーマシンって映画館とかファーストフード店にしかありません。日本のように路上にあるわけじゃないです。限られた場所にしかないんです。
アメリカのコカ・コーラの実際のマーケティングの主戦場はどこかって言うと、お店になります。お店をどうしたいかって言うと。お店の中でディスプレイ効果って言いますけど、棚をたくさん取った方が売上が膨らむってことは一般に知られてるので。ダイエットコークでも5種類のフレーバーを出しています。大体5種類の陳列を作ろうとしてる。
5種類の陳列を作る。と、小売流通さんとお仕事してる人だったらわかるように、必ず5種類の中には売れる商品と売れない商品、順番がついてしまいます。
そうすると必ず小売流通の担当者は、売れない商品に対してコカ・コーラさんにこんなことを言うんです。「コカ・コーラさん。今回出したこのチェリー味、売れないからチェリー味仕入れなくていいよ。うちには持ってこないで。来月から4列にするから」と大体言いたくなるわけですね。なので4列にされるってコカ・コーラ分かってます。
その時に、「ああ、すいません。チェリー味は売れなかったと思うんで新しい味を開発したんです。今度の味は売れき絶好調だと思うんで、これ入れてください。5列に戻してください」って商談をするわけですね。これは今の日本でもどの流通さんでも行われていることだと思います。
この流通がアメリカで6ヶ月周期で行われてるそうなんですよ。実は今までコカ・コーラって新しいフレーバーを開発するのに2年かけてたそうなんですね。2年だとこの周期に間に合わないとコカ・コーラは気がついて。しょうがないからAI導入しようと。
しかも今までは2年間かけて誰が味決めてたかって言うと、コカ・コーラにもフレーバリストっていう味と香りを決める専門家がいるわけですね。その味と香りを決める専門家が市場調査をして、この味この香りでいけるんじゃないかっていう研究をして。事前の調査をかけて。導入テストをして。テストマーケして出すみたいな。重厚頂大な製品計画を立ててたんですけど。
じゃあ間に合わないからもう調香師は使わん。もう自販機に調香師のデータ分析任せようと。売れてる商品を分析してやろうとやって出すようにしたんです。結果彼らは6ヶ月周期で商品が売れるようになったんです。これがコカ・コーラさんにとって1番最初のマーケティング領域のAIの取り組みと言われています。
AIによる多角的なデータ分析と業務の効率化
その後、コカ・コーラさんは至るところでAIを活用した分析をするようになっています。
- ソーシャルメディア分析:トライバルメディアハウスさんがお得意なソーシャルメディアの領域において。今までソーシャルメディアの分析っていうのは、ちゃんとそのツールを導入した場合っていうのはツール側でリアルタイム分析可能なんですけど。今AIを使うと、AIをエージェントにしてリアルタイム追跡可能になってたりするので、コカ・コーラさんは今ソーシャルメディア分析にもAIを使ってるそうです。お客様がハッシュタグのタグの内容とか、言葉を結構変えるんですね。今までのようにプリコードされてたテキストだけ分析するっていうんだと、ちょっと遅れを取るっていうのをコカ・コーラさんは言っていて。特に最近セレブリティの人が言った言葉によって言葉が 変えられたりするので。そういうものに関してやっていたり。AIってテキスト以外の画像分析も得意なので画像分析をさせたりもするそうです。
- 消費者行動予測:今まで購買データとトレンドの予測っていうのは、本当に重たい統計の専門家しかデータ分析できなかったんですけど、統計分析者以外もAIを使うと分析可能。最近僕もいろんな会社にAIを使ったデータサイエンス導入のご支援させてもらってますけど、ChatGPTとかClaudeとかに、頂いているアンケートのデータ食わせて、このデータ分析してって言ったら勝手に5分で分析かけてくれますからね。そんなことができるようになったり。
- 製品開発とフィードバック調査:今までだと製品開発の場合って、消費者フィードバックのデータ、実際テキストデータのことが多いんですけど。花王でもそうなんですけど。このテキストを研究員が読み込んで、これってどういうことかなって。トヨタさんが言う「なぜなぜなぜ-5Whys-」みたいな分析をかけて。これってことは潜在ニーズなんじゃないみたいな話をして。じゃあ1回作ってみようかみたいなことをやったり。既存品に関して投入した後のフィードバック調査をかけるんですけど。これもAIを使うことによって非常に早くできるようになったという風に言われています。
- キャンペーンの効果測定とABテスト:キャンペーンの効果測定も、今まではキャンペーンが終わらないと分析できなかったと思うんですけど。AIのいいところはリアルタイムに追跡可能なんです。AIにABテストの設計をさせるっていうのが流行り。人じゃなくて。こんなマーケティング調査、キャンペーン調査をかけたいので。「A案これにしようと思ってるんだけど、B案はAIの方で作ってくれる?」みたいなことです。チャレンジデータの作成をAIにさせるっていうのが。結構多くの会社さんが取り組まれてて、ここは結構うまくいってますね。人に対して壁打ち相手をAIにさせる。
- 製品の使用状況の画像分析:最近ソーシャルメディアに投稿された画像から製品の使用状況を分析する。日本人って未だにInstagramに居酒屋とかレストランの写真をあげますけど、あれって食べる前の写真じゃないですか。自宅の食事シーンって意外と食べた後の写真とか出てきたりするので。食べた写真なのか、食べてない写真なのかとかって、今まで探すのは目視だったんですけどAIだと分類が訳なくできるので。食べた食品、食べた料理の写真だけ出してとかね。AIかなり製品ブランドは理解してるので、食卓に上がっている醤油のブランド全部書き出してとかね。そういうことができるようになってます。
AIが変える4Pの範囲
実際のもので言うと。コカ・コーラのフリースタイルの話はしましたよね。
コカ・コーラさんってサントリーの天然水のことに気がついてしまいまして。サントリーの天然水が必ずもう4年5年くらい前からかな。秋口とか夏口にフレーバー入りの天然水を出しますよね。レモンの香りがする天然水とか。
コカ・コーラも、水に色とフレーバーをつけると売れるのかって理解をしたらしくて。それをAHAっていうブランドで売ってるんですけど。そのフレーバーの組み合わせって今までこれいけそうかなっていうギャンブリング的なマーケティングをしてたんですけど。
SNSの分析をすると、最近こんなフレーバーとかこんな味ってよく注目されてない?って出てくるので。その味とフレーバーをSNSのデータから持ってきて、その水を出す。みたいなことをやってたりします。
AIって意外と時間の壁はないんです。やっぱり相当今のAIは賢くて分析能力たけているので。そんなことやっていたり。
あとSmartwaterって水も出してるんですけど。Smartwaterはですね。こんな高級な水。ボトルに入った。コカ・コーラのラインナップとしては高めな水なんですよ。これに関しては、若干、富裕層狙いなので。富裕層がそもそもフレーバー付きを好むのか、好まないのか。あとスティールウォーター、水だけがいいのか。スパークリングタイプ炭酸入りがいいのかみたいなことを。これは時々刻々変わるんです。
やっぱりスパークリング流行ってる時とスティールが流行ってる時って結構トレンドがあるので。このトレンドカーブを見て、もうスマートウォーターのラインナップ変えようみたいなことをやってたりするんで。そんなこともAIで分析してたりします。
その意味ではコカ・コーラさんって割とですね。AIを使ったフルスペックをやってくれて。ここは割と調査分析系のページですよね。ここはどちらかというと広告よりです。このページは製品開発系ですよね。
なのでプロダクトの開発から。プロダクトの開発の前に、市場調査っていう。カスタマーインサイトの領域。カスタマーインサイト。製品開発。プロモーション。全ての領域でAIを使い始めていてですね。
ここまでAI使えるんだ。AI使えるんだってことは、今日の文脈で言うと。今までデジタルマーケティングで製品開発しようって論は日本で出てこなかったと思うんです。どうしてもデジタルマーケティング=プロモーションって思ってたと思うんです。
ところが実際に皆さんマーケティングに4Pってありましたよね。プロダクト、プレイス、プロモーション、プライス。本当はこの4Pにおいてちゃんとマーケティングをデジタルトランスフォーメーション(MDX)しなくちゃいけないんだと思うんです。
ただコカ・コーラが差し示したことで言うと。このプロダクト。プレイス。プライスくらいまではいけそうだって言ってて。プロモーションは元々得意だからやれるよって言っているので、「実は4P、AIでできるよ」と。
すなわち今までデジタルマーケティングってプロモーションだけだったけど。これからのデジタルマーケティングっていうのは4P全部やってくれるってことをコカ・コーラが言ってるんですよ。
まとめ:デジタルマーケティングの今後の方向性
このデジタルマーケティングの講座、たくさん講座があると思うんですけど。もちろんプロモーションの領域はたくさんあるんですけど、プロモーションの話を聞いてる最中でも、これプロモーション以外に使えるのかな、使えないのかなってこともちょっと考えながら聞いていただけると、多分皆さんの応用範囲が広がるはずなんですね。
少なくともアメリカ、ヨーロッパではAIマーケティング、デジタルマーケティングの中のAIマーケティングという狭い領域の中では、4P全部やるってのがなんとなく皆さんの定番になってます。
最後の消費者サーベイだと、さらに露骨なことをやってて。まさにパーソナライゼーションマーケティングキャンペーンをやっていてですね。笑い話なんですけど。
アメリカでファンタ復活中なんですよ。僕もアメリカに先月行きましたけど、ファンタが大量に売られてんだよね。なぜかって言うと、SNSで。意外と10代はナチュラルテイストの味じゃなくって、どぎつい味が好きって発見したんですコカ・コーラが。この人工的な味いけるんじゃんってなったんで。
ファンタのキャンペーンは確実にパーソナライズマーケティングをやってて。しかもその人が好きそうなファンタの味を提供することによって、ファンタとパーソナライゼーションマーケティングの組み合わせでファンタすごい復活してたりします。
イギリスから買収したコスタコーヒーも今一応なんとなくアメリカで復活させに落とし込んでるんですけど。この缶入りコーヒーですよね。缶入りコーヒーってやっぱり売れる位置が限定的なんですよ。なので今は全米展開というよりも、売れる場所だけで動かすってのがコカ・コーラさんの取り組み発想みたいです。いずれにしてもいろんなことをやらています。
講義の要点再確認
今日皆さんにデジタルマーケティング概論で割と視座を広げてもらいたかったことなので。色々なケーススタディを多めにお話しました。4つ振り返っていくと。
- 領域の拡大:まずデジタルマーケティングの定義は広いんですよって話ですね。特にAIが組み合わされてマーケティング業務自身、製品開発とかそういうのもデジタル化されてきてるので、皆さんの活躍範囲はこれから広がります。是非一足早めにデジタルマーケティングを学ぶことが得策だと思います。
- AI×CRM/パーソナライゼーション:StichFixの話をしましたね。多分AI×CRMはえぐいことになると。皆さんの言葉で言うとパーソナライゼーションが半端なくなります。それやってるのNetflixで。Netflixのオープニング画面は誰1人同じじゃないってNetflixの人が言ってますからね。パーソナライゼーションされたCRM。Netflixが提供してますね。
- スマホサービス化:スターバックスって実はこの広告しないってのがスターバックスの売りになっていて、ある意味ウェブサイトは捨てました。スマホサービスだけをやるということで、お客様とのエンゲージメントをする。今までスマートフォンっていうのはなんとなくWebの代替物と思ってたと思うんですけど。皆さん使ってる側からすると、もうスマホなしに外に出かけられないじゃないですか。決済もできないし、地図も分からないし。それくらい逆に言うと、スマホの中のサービスとして皆さんの会社がマーケティングツールとして入れられたら多分オッケーなんですね。だからマーケティングサービスとして提供してください。
- 組織変革リーダーへ:そして組織変革をコカ・コーラはやっています。ありとあらゆるマーケティング領域にデジタルを入れることによって、コカ・コーラはマーケティング組織の仕事の仕方を相当変えてくださっていると思うので。ということは、逆に言うと今日参加されてる皆さんは組織変革リーダーなんですよ。なので、イニシアチブを、会社の中で推進役として取ってくださいってのが、皆さんにお伝えしたかったこと全てとなります。
Q&A
池田:いや皆さんどうですか。痺れますよね。皆さん多分聞いて、うんうん頷いているところと、「やべえ、この先この世の中はどうなっていってしまうんだろう。自分はその中でマーケターとして活躍し続けることができるんだろうか」っていう不安を相当感じた方が多かったんじゃないかと思います。
まさに今日、本当にこのテーマについて、デジタルマーケティングを学ぶ1番最初に聞くべきはこの本間さんの話であるっていう風に冒頭でお話をした通り。今日これを聴講されている方の多分8割、多ければもう9割の方々がデジタルマーケティングのプロモーション領域、主に広告領域の方々がほとんどで。
いかにその広告を最適化しながらCPAを下げて、チャンレートを下げながらライフタイムバリューを向上させるかみたいな。大体そこら辺の領域。このマーケティングの中でも獲得系の。さっき本間さんも4Pの中のプロモーションの話をされていましたが。そこの中のさらに狭い広告のところを担当してる方々が多いと思うんですが。
もう今や時代は、商品開発の手前のインサイトの探索。商品の開発、改善。あとはもうダイナミックプライシング。あとは、店頭との連携。まさにスターバックスがやってる通り。その在庫の管理だったり。メンテナンスの予測だったり。あとはレイバースケジューリング。プラントの連携だったりとか。その商品の資材の調達。物流。まさにこのこっち側のところとくっついてるんですよね。
なので、いわゆるバリューチェーンそのものの最適化にデジタルマーケティングってのは当然。商品を調達をしてきて、運んで、商品を開発し、適切な値付けで、適切な場所で、プロモーションをして売っていくみたいなところっていうのは、より一層つながってきてるわけです。デジタルによってね。
という広がりを感じてもらった上で、これから学んでいくといったところが重要だということで、素晴らしい1回目のお話を今日は頂戴できたと思います。
ここから残りの時間も短いんですけども、皆さんに事前にいただいている質問の中で、やっぱりこのデジタルマーケティングが全盛で、特にAIだったり、CRMがとんでもないことになるって本間さんもさっきおっしゃってましたけれども。
多くのマーケターが今1番期待以上の恐怖を感じてるのは「自分どうなっちゃうんだろう」だと思うんですよね。やっぱり人間なんでね。なので、花王時代からデジタルマーケティングを長年やってきた本間さんに。これから変わるものと変わらないものみたいなところも聞きたいんですけど。
そこからの、今これを聞いていらっしゃる方々が。世代によってもね。担当して経験を積んできた方によっても。キャリアっていうのは千差万別だから一言では言えないんだけど。
これからのこの10年の変化って凄まじいものがあると思うんで。それを見越して、どんな学習とか、ないしは知識。だけじゃなくて、やっぱ経験を積んでいく。それの順番みたいなところに対する、本間さんなりの思いとか考えを聞かせいただければなと思います。
本間:質問してくれた人の中にも、花王のデジタルマーケティング、早々期から初期からやってきたんで。そこら辺の経験も踏まえて話してっていう質問もあったんですけど。25年前のインターネットの、デジタルマーケティングとかなくて、まだインターネットマーケティングって言ってたと思うんですけど。
その頃は正直に言うとインターネットマーケティングをやってるやつは変態って言われてたんです。まだテレビ全盛じゃないですか。ソーシャルメディアなんてまだなくって。口コミって2チャンネルのこと言ってんだろみたいな。それくらいまだメジャーゾーンじゃなかった時に、怯せず新しいことが起きそうだから、自分で前向きに取り組んでみるってことは普遍的なテーマだと思うんですね。
要は誰もやってないからこそ、やってみることが結構重要で。当時いろんな人たちと言っていたのは、インターネットと今回のAIも。今までのテレビ広告、雑誌広告のテストだと。
テレビ広告でテストしようとしたら「2000万かかります」みたいな。雑誌広告作ろうとしても「400万かかります」みたいな話だと思うんだけど。例えばバナー広告変えましょうって言ったら、多分AIでももう無料でできるし。出稿費も多分Facebookとかだったら2万円ぐらいでできるはずなので、安価でできる。
ってことは自分で実験できるので、是非マーケターの皆さんが誰かに聞くのも当然なんだけど、聞いたら必ず自分で実践してみるっていうのは今後も必要なことだなと思ってて、そこは普遍的なことだと思ってます。
もう1つは、やった時にダメだと思わず、ダメだった理由が何なのかを考えてください。が、とても重要で。たまにあるのが時代より早すぎちゃったからダメなこともあるの。時代より早すぎたからちょっと2年間寝かせておこうって話も重要なので。そんな話が1個。
AIに置き換えられる恐怖心の話で言うと、まさに1年前。僕はちょうどポルトガルのリスボンで、ウェブサミットってカンファレンスがあったので行ってみたんです。マーケティングの会議なのに話の8割AIでした。
そこにオグルビーのアメリカの社長がやってきて、「みんなAIに仕事取られるなよ。仕事取られないようにするにはどうしたらいいんだ。AIが思いつかないことを思いつくんだ。」ってみんなで拳をあげたのを覚えていますけど。
AIっていうのは残念ながら過去のデータを吸い上げて出すことしかできないので、やったことがないことに関しては出てこないんです。分かりやすい例でよく言うのは。ピカソの絵を見たことがないAIは。ピカソの絵を描けません。ピカソが偉かったのは。ピカソの作風は誰も書いたことがない作風だったから。多分ピカソの作風はピカソの絵とみんな認識する。
だから今まで以上に逆に言うと、クリエイティビティ。子供っぽい想像性が求められてて、過去やったことがないからやっちゃいけないんだ、じゃなくて。過去やったことがないからやってみるみたいなことが結構重要なので。
そういう意味だとマーケターである皆さんは今まで以上にちょっとチャレンジング、野心的な気持ちを持って進んでいただくとAIに仕事を取られないと思います。
池田:だから、やっぱりこれは逆から言うと、その創造性を発揮するようなところに貢献をしていく仕事ができないと。AIの方が得意な領域が増えていっちゃうのはもう事実だから。そこを磨かないといけない。で、それをどうやったら磨けるのかって言ったら、まさに本間さんがおっしゃってたところに僕は全てが詰まってるなと思うんですけど。
まさに花王さんが昔デジタルマーケティングセンターでしたっけ。石井さんのね。作った時に、確かに本間さんは花王が年間で800億900億マーケティング予算使っていて、8割9割方テレビCMにまだ使っていらっしゃる時代に、いち早くそのデジタルマーケティングセンターで。ウェブマーケティングとか、インターネットマーケティングって言われている時代から、いろんなところに首突っ込んで。確かに変態キャラで色々やったじゃないですか。
その全てがうまくいったなんてことはありえなくて、ああでもないこうでもないとかで。他の人にもあいつ変わってんなみたいなこととかやってて。でも結局それが今、なんか20年ぐらい経って結実している感がある。
やっぱもうどれだけちゃんと自分で体と手を動かして、経験を蓄積していくかみたいなところが、めちゃくちゃ重要なのかもしれない。
本間:うん。少なからず、今日参加されてる方はこの領域に興味があるってことでは他の人よりも秀でてる場所があるので。確かに。
これからやることは。弱みを塗り潰すことより強みを伸ばした方がいいので、好きなこと、強みをどんどん伸ばしてくれると自分にしかできない仕事が広がってきて。そうすると「あなた変態だけど、それはあなたに任せたい」っていう形になるとは思いますよね。
池田:だから別の会社ではそれをやらせてくれないみたいな方々も。すごく多いと思うんですけど。本間さんおっしゃる通り、さっきご紹介をいただいたツールを使いながら色々とこう文章を書いてみようとか。それでSNSに投稿してみよう、だったり。あとは本当に身銭。5000円1万円でもいいから。何がしかの広告運用した時に、そのAIを使ったABテストなるものが一体どういうものなのかみたいなこととか。
やりたい人1万人。やる人は1%の100人。やり続ける人はさらに1人みたいなこと。まさにここでも適用される気がしますね。どんだけ時間と身銭を切りながら、その将来に対して費用ではなくて投資をしていくかみたいなところが。5年後10年後になんか普通の人よりも一歩先に行っているかみたいなところなんですかね。
本間:特にAIに関して言うと。今その登録費用って発生するとしても、たかだか20ドルだったりするわけですよね。月でね。1ヶ月単位で契約切ればいい話なので。使ってみて。その20ドル払ってる1ヶ月間は。もう20ドルの元を取るんだと思って。がむしゃらに使ってみる。
そうすると、そのAIの得意領域・不得意領域が分かり、それを知るだけでも他の会社の同僚たちよりも、AIのここの強みも知ってんだよね。というスペシャリティになるはずだから。
そういうところから始めることがとても重要だし、もうちょっと大きな話で言うと、怖がらず好奇心持ち続けることが結構重要な気はしますよね。やっぱりね。
池田:なるほどね。ということですよ、皆さん。マーケターの中で確かに皆さんは。その中でもこのテーマを今日聞いて、強い期待、ワクワクと共に危機感を感じていらっしゃるトップランナーだとするならば。やっぱそこからどれだけちゃんと行動に移せるかと。その行動を継続できるかみたいなところなんだろうなって思いました。
本間さん最後に。このマーケティングのデジタル化のところを20数年見てきた中で、今までに起こったこの20年の過去の変化と。これからの20年で起こる変化の総量ってもうなんかレベルが全く違う次元に入っていくじゃないですか。
本間:そうですね。
池田:今これを聞いてくださってる方のその年齢が仮に30歳だとするならばね。70歳まで働く世代だとすると。あと40年働くわけですよ。で、40年後って言ったらもうとてもじゃないけど想像ができないけれども。今30歳の人が40歳、50歳。10年後、20年後に。
一体どんな社会になっていて、マーケティングは明らかにこういう世界に突入しているといったところを、なんとなくざっくり概観を話していただいて終わりたいんですけど。どれぐらいの変化だと思いますか。
本間:実はコトラーがマーケティング4.0の中でそれを示唆したことはこっそり書いていて。
マーケティング4.0の中で初めてアドボカシーという言葉が大量にコトラーの本に書かれていて。アドボカシーとかエヴンジェリストって言葉を使ってるっていう裏話を言うと、広告って10年後になくなってる可能性があるって示唆なんですよ。
要はまさにSNS的なチェーンネットワークが進化するから。商品の伝播っていうのは人から人によって行われる方がパワフルで。今までは人から人によっての情報伝播量が少なかったから、マスメディアによる情報伝播量が圧倒的だったと。ところが、これからは人から人の方が重要視されてくる。
まさに今回トランプ大統領が勝った1つの原因になっているのが、トランプ大統領って意外と小さなポッドキャストにたくさん出てるんですよね。アメリカで3時間のトークショーに結構出てるんですよ、トランプって。
ポッドキャストのいいところは、ポッドキャストってそもそもフォロワーがいるから。こういう人が聞いてるってわかるので。トランプ大統領は聞いてる人の属性に合わせて、その人たちが好みそうな話を3時間すれば口説けるんですよね。
これってトランプ大統領ってテレビ討論会から逃げたじゃんって言われてますけど、テレビ討論会だと表層上の話しかできないけど、SNS的なコミュニティだったらちゃんと奥深くまで誤解することなく伝えられる。
これって分かりやすく言うと。コトラーが書いている通り、広告が若干瓦解し始めてるってことなんですね。
だからまさに今日池田さんが書いてた文章で言うと、リアルタイムの究極のOne to Oneパーソナライゼーションとコミュニケーションがこれから広がるので、その意味では10年後のマーケターのあり様は、そんな中でマスっていうのはもう捨ててくれと。
逆に言うと、ラバブルな愛されてる人を愛し続けることがマーケティングの主要テーマになるので、それをちょっと真剣に考えてくれると勝ち残りそうな気がします。
池田:ついに当初の社名であるトライバルマーケティングが本格化をいよいよしていくのかもしれないですね。共通の興味関心の単位でマイクロマーケティングをやっていくと。
いや、皆さんいかがだったでしょうか。ものすごく刺激的な時間でした。次回は菅さんに来ていただいて、また別の切り口からの概論のお話を伺います。
今日はもう実質の第1回目。非常に素晴らしいお話を本間さんをお招きして伺いいたしました。時間になりましたね。これにて終了となります。本間さん、今日は改めてありがとうございました。
本間:こちらこそ皆さんありがとうございました。お疲れ様でした。
池田:皆さんまた次回お会いいたしましょう。さよなら。


