連続講座の開催趣旨と全体像
※このテキストは『デジタルマーケティング連続講座③ デジタルマーケティング概論Ⅱ 〜デジタル時代のマーケティングプロデュース術〜』の書き起こしです。文中の登壇者名表記は敬称略。
池田:はい、皆さんこんばんは。今週も始まりましたMARPSのデジタルマーケティング連続講座でございます。今回は全体の3回目です。こちらの講座を開始をしておりますが、今日は全体の16回の講義のうちの3回目です。
前回がデジタルマーケティングの概論1として、本間さんに来ていただいて、今のデジタルテクノロジーの最前線ですとか、AIの活用実態について全体俯瞰をするお話をいただきました。
今日はこの概論のⅡとして、デジタル時代のマーケティングプロデュースというところについて、このテーマについてはこれ以上語っていただける方は、この方を置いて他にいないというベストインクラスプロデューサーズの菅さんに来ていただいてます。
概論なのでこれから細かいところを皆さんに学んでいっていただく前に、まずは一旦全体の森を俯瞰をしてみるといったところをやっていただく回になります。部分最適ではなく、全体最適を考えていく上でどうしたらいいのかという話です。
ここからいつもの話をおさらいで少しだけしますけれども、マーケティング特にデジタルはもう幅が広くて1個1個の奥がめちゃくちゃ深いので、自然に普通に勉強していくと、一体全体像がどうなっているのか、今自分が目の前で学んでいるものは全体の中のどこの点を学んでるのかということがよく分からなくなって迷っちゃうわけですね、道に迷って迷子になっちゃうと。
なので、以前からMARPSがやっているのは、この「点を線としてつなげて全体の面として理解」をして、現場で応用をして使っていけるような実践的なスキルを身につけてもらいたいということです。特にデジタルマーケティングは1個1個の施策がかなり点として散りがちなので、この点というのは一体マーケティング全体のどういう線の中の点なのか。
で、その線というのは全体のマーケティングの体系の中のどの線の部分を考えているのかといったところの、前工程、自分の今工程と後工程みたいなところがちゃんと線として繋がっていて、その線が全体の体系の面の中のどの位置付けなのかといったところを理解をしながら、今どの点を学んでいるのか、実行しているのかといったところを是非意識をしながら聞いていっていただきたいですし、この面とか線を示しながら今日はここの点ですよといったところをガイドしていきます。
今日のお話にもあると思いますし、前回の本間さんの話もそうだったと思いますが、リアルのマーケティングがあって、25年ぐらい前にデジタルマーケティング、ウェブマーケティングとかインターネットマーケティングみたいなものが出てきて。
リアルマーケティングだけじゃなくってデジタルマーケティングもやろうよという話になり、リアルとデジタル分かれちゃってるからこれを融合させようよみたいなことをずっとやってきたわけですが、もう今はそういう時代じゃなくて、ありとあらゆるものがデジタル化をした中におけるマーケティングをどう考えていくのか。
つまりやることはテレビCMかもしれないし、交通かもしれないし、イベントかもしれないし、SNSかもしれない。だけれども全部デジタル化をしているわけだから、それらをどのように適合させていくのか。
なのでデジタルマーケティングということを考えるんではなくて、「いかにこのデジタル化をした時代において今までのマーケティングを適合させていくのか」という考え方のほうが大事だよという話が今日も多分展開をされていくと思います。
今までは各社結構ゴールが違ったわけですね。うちのマーケティングの課題はこれ、山の頂上はこれでうちの会社はこっちみたいなところだったんですが、これ前回の本間さんの話でもありましたけど、やっぱりもうデジタルマーケティングっていうのは、僕の定義ですけど、One to Oneマーケティングをマスレベルかつリアルタイムで実行することを通してマーケティングのROIを最大化することであると、もうほぼこの山の頂がもう各社同じなんですね。
One to Oneマーケティングをマスレベルかつリアルタイムで行うことなんです。で、それによってマーケティングROIは最大化する。この山の頂上が一致しているということはもうあとはスピード勝負で誰が1番最初に山の頂上に近づくかっていう勝負に入っているなという風に感じます。
ということでデジタルマーケティングの連続講座はこのファネルマップで示してみますが、このピンク色のところを16回講義で学んでいくというプログラムの構成になってます。
この右側のファネルマップの1個1個の施策のところというのが、かなり奥が深い点の部分になっていくわけですが、前回と今回は左上を赤く塗りつぶしている概論を学ぶことによって、来週以降のそれぞれの概念、手法、1個1個のテーマについて学んでいく基礎を作るというのが、今日までの回の趣旨になります。
登壇者紹介と講義のゴール
時間割としてはこんな感じ。僕が前説を終わらせて、菅さんに御登場いただき、およそ20時20分ぐらいまで、ご講義をいただいて、最後に皆さんから事前にいただいている質問を時間が許す限りやって8時半には終了という流れになります。ということで、BICP菅さんに御登場いただきましょう。こんばんは。
菅:こんばんは。よろしくお願いします。
池田:今日はよろしくお願いします。皆さん、BICPの菅さんの話を聞けるのはめちゃめちゃラッキーですから、今日はバチっと聞いていっていただければと思います。
菅:だいぶだいぶ上げていただいてすいません。
池田:いえいえ。じゃあ菅さん、ここからよろしくお願いします。
菅:はい、よろしくお願いします。皆さん、こんばんは。株式会社ベストインクラスプロデューサーズの代表しております菅と申します。僕の方からですね、今池田さんからご紹介いただきましたけれども、デジタル時代のマーケティングプロデュース術ということについてお話します。
多分このタイトルで2つあって、1つは、デジタル時代ということですね。この講座はデジタルマーケティングの講座なんですけども、あえてデジタル時代という風に言わせてもらってますということと、マーケティングプロデュースってあんまり聞かないと思うんですけど、今日の講義を聞いていただいて、マーケティングをプロデュースするとはどういうことなのか、皆さんなりに考えていただけるとありがたいかなと思います。
自己紹介とキャリア
簡単に自己紹介をさせていただきますと、1998年にですね、中堅の広告代理店である朝日広告社というところに入りまして。名前の通り新聞系の会社です。いわゆるトラディショナルメディアである新聞系の広告代理店に入ったんですけども、2001年にたまたまサイバービジネス局っていうところに配属になりまして、そこから約15年ですね、デジタルどっぷりです。
2001年にはどういうことやってたかというと、僕は1番最初にやったデジタルの大きい仕事は人材派遣会社のウェブサイトを作る仕事だったんですけども、その会社はですね、「とらばーゆ」ってみなさん分かりますかね、コンビニとか本屋でいわゆる求人情報の雑誌を、求職者は買って、そこからお仕事情報を雑誌で見て、フリーダイヤルに電話して、派遣に登録するっていうのが、それまでだった。
2001年に初めてそれをWeb化しようってことで、もう今皆さんも就職活動とか転職活動とかで当たり前にやられてる、たくさんの仕事情報のデータベースの中から勤務地とかお気に入りの情報とかそういったものを選ぶのと、そして面接に行くのもオンラインで予約するみたいなのを2001年から2002年にかけて作りまして。
それを作った後に今度はそこに人を呼ばなきゃいけないよねっていうことで、ウェブの広告を始めまして、ウェブの広告をやったらですね、今度はこのどれだけお客さん来てくれたのかって計測しなきゃいけないよねと、みたいなことで、アクセス解析のツールを導入したりですね。
まだ全然2001年前後っていうのはそういった整ってない時代に、何か1つ1つ新しい手段を手に入れながら、結果的にデジタルマーケティングっていうところにたどり着いたんですけども。
2015年に独立した理由はですね、広告代理店でずっと、デジタルマーケティングというものをやっていた結果ですね。これは今日話すんですけど、広告代理店って中間業者が何かコミッションビジネスで稼ぐ時代ではなくて、事業会社・ブランドが自ら直接お客さんと繋がり続ける時代になると。
そうすると、より事業会社側で、マーケティングの戦略だとか、ブランドの構築だとか、顧客の体験設計だとかそういったことをできるようにならなきゃいけないだろうっていうことで、2015年にBICPっていう会社を作ったんですけども。うちの会社は、クライアントサイドに100%伴走してですね、企業とお客様のデジタル時代の関係を作るマーケティングをする会社をやってます。
ビジョンは「マーケティングの力で、人生を楽しめる人を増やす」っていうビジョンを掲げてまして。マーケティングの力ってやっぱり素晴らしくてですね、社会とか人間が抱えてる問題とか欲求を探索してそこに新しい価値を提案して、それが需要されることでマーケットができていくということだと思うんですけれども。
この思考を使うことで、よりその生活者の皆様にもハッピーになっていただきたいですし、その使い手である我々だけでなくクライアントや支援会社も幸せになろうよ、というようなビジョンを掲げてやってます。
今日もお話しする部分になるんですが、この右上にあるブルーのところですね。企業とお客様が出会ってから現在将来に渡るまでの顧客の体験のプロセスというものがあって。ここに、昔のように何か物を売っておしまいということではなくて、この体験自体が繋がり続けることによって最終的にはライフタイムバリューが伸びて売上利益が伸びていく。
この構造をどの企業も(それはメーカーであれリテールであれ)今考えてると思うんですけども。僕は何をやっているかというと、そこにマーケティングの思考を導入するということで、事業の問題の裏にあるお客様のインサイトから価値を考えてアイデアを体験に落とすということと、今は繋がり続ける時代なので、それを支えるデータの環境整備とかそういったものをクライアント企業と伴走しながらやってる会社です。
講義のゴール
色々な企業のお手伝いをさせていただいている経験からですね、今日皆様にお話ができればなと思ってます。今日のゴールなんですけども、デジタル時代ですね、我々マーケターから見たデジタル時代ってのは何なのかということを理解して。池田さんもおっしゃってましたけども、個別最適に陥らない全体最適のプロデュースの目線を是非手に入れていただきたいなと思っております。
アジェンダは3つです。デジタル時代って何だろうっていうのを最初に少し時代背景なんかも含めてお話をします。2つ目が今日の本題なんですけども、デジタル時代のマーケティングをプロデュースするその5つの視点を皆様にご紹介します。そして最後、まとめて池田さんとディスカッションできればなと思っております。
デジタル時代の定義と顧客体験(CX)への移行
ということで早速始めますけど、デジタル時代って何でしょうかということですね。おそらく皆さん日々お仕事してるといろんなキーワードがあると思うんですね。今1番熱いのは右上にあるAIだったりしますし、ダイレクトトゥコンシューマーもあるし、OMOとか最近だとユニファイドコマースだとか、いろんな言葉があって、あるいは経営から「DXせよ」みたいな感じでざっくりお題が降りてくるみたいな現場もあるんじゃないかなと思うんですけど。
IT政策大綱に見るデジタル競争の二つの幕
僕がいつもデジタル時代を話す時に引用してるのはこれなんですね。ひょっとしたらご覧になった方もいらっしゃるかもしれないんですけど、結構分かりやすいです。
2019年なんで、もう5年前なんですけど、日本政府が出しているIT政策大綱の中でこんなことが言われてます。デジタル時代の競争をですね、第1幕と第2幕という、2つのページに分けて整理してるんですけど。
第1幕:サイバー空間におけるサービス競争
この第1幕これまでの競争っていうのはサイバー空間におけるデータの収集とか処理とかサービスの競争だったよっていう風に日本政府は言っているんですね。どういうことかというとこの上のオレンジ色のとこありますよね。このサイバー空間、つまりインターネットを中心とした空間なんですけれども、この上のサービスですね、
ネット上のサービスの高度化競争をしていた時代であると。なので検索とかオンラインショップとかSNSとかショートメッセージとかいろんなのありますよね。ネット広告もまさにそうなんですけど、こういう時代で。
第2幕:フィジカル空間のデジタル化
これに対してこれからのデジタル時代の競争ですね。ここはもう第2幕に突入するよ、だから日本頑張ろうねみたいなこと言ってるんですけども、これどういうことかというと、フィジカルな空間のデジタル化によって製品とかサービスを高度化する競争、そういった時代に入りましたよと。
なので、モビリティとか医療とか農業とか、いろんな領域がデジタルによってより良くなっていく世界ですね。さっき池田さんの方で少しデジタルの位置付けが全てがデジタルの中に包まれてくみたいな話されてましたけど、まさにそういうイメージに近いんですけども。
もう少し分かりやすく言うとですね、このデジタル時代の第1幕は誰が勝ったかというと、もう皆さんご存知のGoogle、Amazon、Apple、Facebook、それからMicrosoft、ビッグテックっていうところが、このやっぱり20数年で勝っちゃったわけですよね。
残念ながら日本の企業はほとんどここで残らなかったということに対して、期待されてることっていうのはフィジカルなところ頑張ろうよっていうことですね。なのでメーカー、リテール、ディストリビューション、こういったことがデジタル化していきますよと。
なので、プロダクトがどんどんデジタル化していったりとか、あるいは小売の現場がデジタル化していったりとか、あるいはラストワンマイルみたいな、ディストリビューションのところがデジタル化していったりとか、そういういわゆるフィジカルに触れる体験の現場がよりデジタル化していく時代という風に言われてます。
当然なんですけどここに、ビッグテックも入ってきてるんですよね。例えばウォルマートがデジタル化したり、あるいはAmazonが小売を始めたり、Googleは車を作ったり、そういう競争になってきてるということです。
UXからCXへの変化
ちょっと話は変わるんですけど、こうやって世の中がデジタル化していくと我々もですね、第1幕と第2幕で大きくちょっと目線を変えなきゃいけないと思います。
ということで、UXからCXということで。これはGoogleトレンドでですね、ユーザーエクスペリエンスとカスタマーエクスペリエンスという言葉の2つを検索してみた結果なんですけども、大体2014年ぐらいからですね、UXよりもCXの方が検索ボリュームが増えてる。
UXもCXも皆さんよく使われると思うんですけども、改めてUXとCXの違いをお話ししておくと、UXというのは、特定のタッチポイントにおけるユーザー体験をより良くする。あるいは特定タッチポイントの前後ですね。
利用前、利用中、利用後、あるいは累積的なUX体験をどうよりよくするかというのがUXの概念。
これに対してカスタマーエクスペリエンス(CX)というのは何が違うかというと、1人の顧客がサイトにも行くし、アプリも使うし、店舗にも行きますよね。アプリのUXも店舗のUXもサイトのUXも全部ひっくるめて1つのお客様の体験であると。
で、その繋がりのある体験をどうより良くするかという概念でこのカスタマーエクスペリエンスという言葉は使われてます。
顧客体験の起点から完了まで
全米中の苦情を集めたグッドマンの法則で有名なグッドマンさんという先生がいるんですけど。この先生が書いてる『カスタマーエクスペリエンス3.0』っていう本があります。日本語だとですね、『顧客体験の教科書』という邦題で出てると思うんですけど、この中でCXはこういう風に定義されてます。
CXとは、顧客にサービスを提供するだけの者ではないと。CXは顧客体験の起点から完了までを差します。そしてその素晴らしいCXを実現するためにはサービス担当者の力だけでできるものではなくて慎重に設計されたプロセスとかテクノロジーの結合、組み合わせが重要ですよと言ってるんですね。
ポイントはCXというのは特定のタッチポイントの話ではなくて、ブランドとお客様が初めて出会って現在に至るまであるいは将来に渡るまで関係が続きますよね。その繋がりの全てをCXと言いますよ。
だからこそ、そこには慎重に設計されたプロセスが必要で、特定の1人の担当者だけでそのCXはできませんって言ってるんですね。
なのでプロセスと、人間力でできないところをどうテクノロジーを使いながらより良い顧客体験を作るかということが非常に重要になってきていると言ってるわけです。
このデジタル時代っていうのはいろんな捉え方があると思いますが、我々マーケターの目線で捉えると、デジタル時代というのはサイバーとかフィジカルとか関係なくですね、ブランドとお客様が繋がり続ける時代であるという風に言えるかなという風に思います。
繋がり続ける時代のブランド戦略とDNVB
デジタル時代とはブランドとお客様が繋がり続ける時代ですということです。
真実の瞬間(MomentofTruth)
ブランドというのは原理原則、企業側の持ち物ではなくて、お客様の頭の中で、お客様が勝手に想像するイメージ。これがブランドなんですけども。昔は、マスコミュニケーションでテレビCMをやります。新聞広告をやります。そういうことで、お客様の頭の中にイメージを作るというのがマスマーケティング全盛の時代のやり方だった。
これが、いわゆる空中線ってやつなんですけど。繋がり続ける時代というのはもうフィジカルにコンタクトする。ここのコンタクトしている瞬間が、どう、より良い体験なのかでここに本当にブランドに嘘がないのかみたいなことが非常に大切になってきている時代とも言えます。
これはデジタルによって繋がり続けるからこそ、ブランドの真実は地上戦の中でできて、逆にその真実を空中戦で伝えるっていう、そういう順番に変わってきてるということです。
もう1つ本をご紹介します。『真実の瞬間』という本です。これはスカンジナビア航空のCEOをやったヤンカールソンさんという方が書かれた本なんですけども。スカンジナビア航空は赤字だった。ヤンカールソンさんは、スカンジナビア航空のお客様が、従業員に年間15秒かける5回だけフィジカルにコンタクトする。このフィジカルにコンタクトする15秒かける5回の瞬間をお客様にとって、最高の体験にしようとした。
そのために、官僚型の組織、縦割りの組織ではなくて、現場の従業員の方にスカンジナビア航空の理念を徹底的にインストールし、問題が起きた瞬間に自分たちの意思で、この問題に対応するような権限を移上した。これによって、実際にお客様に接触する真実の瞬間で現場従業員の方が理念に基づいて素早く適切な対応、顧客サービスを提供するようになった結果、ロイヤリティが高まり、この会社は黒字化した。
実際にこのモーメントオブトルースというのは、ZMOTからサードモーメントオブトルースまでマーケティングの用語で使われてるんです。ZMOTはGoogleさんが提唱してる言葉で、商品に出会う前、探してる瞬間の体験をどうよりよくするか。
次にファーストモーメントオブトルースとセカンドモーメントオブトルースはP&Gさんが使っている言葉で、実際に初めて商品をお店で手に取る瞬間、あるいはセカンドモーメントオブトルースは家であるいは別の場所でその商品を使う瞬間。
サードモーメントオブトルースはそれを人に伝える瞬間という風に、いわゆる顧客体験の中にもいくつもの真実の瞬間があって、これをより良くすることで、お客様との繋がりというのは長く深くなっていくということを言われています。
ファネルからカスタマージャーニーへ
ファネルってよく使うと思うんです。認知して理解して比較検討して購入してみたいな感じなんです。基本的にこれは数で測るモデルですよね。このファネルの中ではですね、1人1人のお客様との関係って見えないんですよ。
これに対して右側にあるのはカスタマーディシジョンジャーニーで、これはマッキンゼーさんのモデルなんですけど。何か出会いとか気づきとかきっかけがあってから比較検討して評価して購入して実際の体験があってというこの線が全て真実の瞬間であると。
この体験がより良いものであれば次のきっかけの時には比較検討に回らずにこの黄色いロイヤルティのループが回り、長くお客様との繋がりが続きますよねというようなことを言ってるんですけども。
まさにデジタル時代というのは、マーケティングのメジャメント上はファネルの概念ってすごい大事なんですけども、お客様との繋がりを考えるということで言うとこの時間軸と線で、関係を捉えるということがとても大事になってきます。マーケティングのデジタルマーケティングの施策で言うとこの繋がりの線の中に、いろんな専門性の高い施策があるわけですね。
DNVB(DigitallyNativeVerticalBrand)の成長
そんな中でちょっとですね、こういう、デジタル時代ゆえにニョキニョキと出てきている新しいブランドたちをご紹介したいと思います。アメリカの話になっちゃうんですけど、D2Cビジネスですね。2024年は、30兆円ぐらいの規模になるという風に言われていますけれども、非常に伸びています。
有名なとこだとこのWARBYPARKERというメガネのブランドだったり、あとGlossier.ですね。コスメのブランド、あとEVERLANEといういわゆるファッションのブランド、あとCasperっていわゆる寝具のものなんですけど。
例えばWARBYPARKERとかだと、いわゆる事業のモデルはD2Cなんですけども、非常に高次の理念ですね。いわゆるパーパスを掲げていて、「すべての人に見える権利を」と言ってるんですね。
EVERLANEはラディカルトランスペアレンシーという風に言ってて、徹底的な透明性で、ファストファッションに対するカウンターなんです。大量生産・大量消費・大量廃棄あとは労働の搾取と言った問題に対して透明性のある事業しかやりません、という。
彼らは、D2Cというビジネスモデルなんですけども、ブランドのあり方としてはD2Cと呼ばれておらず、「Digitally Native Vertical Brand」(DNVB)っていう風に言われてます。
DNVBモデル
このDNVBは何なのかというと、左側にあるのがさっきもお話ししてた、いわゆるマスブランドですよね。ファネル型で、認知をドガンと取って、最終的にお客様を作っていく。これに対してDNVBはこのファネル型じゃなくてパイプなんです。
いわゆる特定の強い理念を持ったブランドがリーダーシップを持って、思想に共感する顧客と繋がり、故に直接繋がるんですね。これがダイレクトなんですけど、直接繋がることによってそのデータをお預かりできたり、テクノロジーでコミュニケーションできたり、そういうことをしながらこのパイプ自体をどんどん横に太く広げていく。そういうふうに成長しようっていうのがこのDNVBっていうブランドの成長モデルになります。
D2Cっていうのは製造直販という、ダイレクトトゥコンシューマーのビジネスの仕組みを表す言葉でしかなくて。その中でうまくいっているブランドのあり方としてこのDNVBというものがあります。これは理念とか存在してる目的とかそういったものをベースにお客様と太く長く繋がり続けるブランドのあり方ですね。D2CっていうのはDNVBであるための必要条件なんですけども、それだけだとDNVBではないという。
Glossier.の事例
1個、「グロシエ(Glossier.)」というコスメのブランドを持ってきました。元々これヴォーグの編集をやってた人がですね、「イントゥ·ザ·グロス(Into The Gloss)」という自分のブログを作ってそこでいろんなコスメを紹介するところから太いお客さんがついて結局ブランドにして成長したものです。less is moreというハイブランドの思想を持っています。
これはまだGlossier.がちょうど伸びてきたところで、アメリカ、ニューヨークのSoHoのお店の風景です。ここは売るお店ではなくて実際にタッチアンドトライをすることをメインに置いてるフラッグシップのお店なんです。
(動画再生)
店内でこの繋ぎを着てるお姉さんが店員なんですけど、売り子じゃなくて使い方をアドバイスするようなサポートスタッフが何人か立ってるようなお店です。
見てると欲しくなるじゃないですか。欲しくなると左側には、これ店舗内ですね。iPadを持ってきてくれて、これで決済しますって言うと、その場で決済してくれて。
決済するとですね、ここ2階の店舗なんですけども、3階がもういわゆる倉庫になってて、そこのそこで注文が飛んで、この1番右側のピックアップカウンターの風景なんですけど。上の倉庫ですぐパッキングしてこうやって、降りてきて、受け取って帰るみたいななんかこういうですね、いわゆる可愛い顧客体験ができる。
さらにこの左から2番目のこの窓口はいわゆるBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)ってやつですね。オンラインで注文して店舗に立ち寄ってピックアップして帰るためのものです。
Glossier.の場合、何が言いたいかって言うと、リアルのお店もあるんですけども、リアルからオンラインに行くこともできるし、オンラインからリアルに行くこともできるし、最初からですね、どこからでも入っていけるような顧客体験の設計をしている。なのでリアルでも繋がるしデジタルでも繋がるみたいなことをやっています。
マスブランドとの融合
D2CとかDNVBも順調ではなくて。ここはですね、この右側にいる方がエミリー・ワイスさんというイントゥザグロスを作ったカリスマ創業者なんですけど。
この方だけだとやっぱり経営手腕がなかなかで、今から2年ぐらいですかね。新しいプロの経営者で元々ナイキとかですね、そういうブランドでバイスプレジデントとかやってたカイル・リーヒーさんという方が新CEOになって、このカリスマ経営者も残ってビジネスをドライブする方とこのブランドの理念を大切にお客様と繋がるというところを2連で今やってます。
面白いのが、今度はですね、さっきのがいわゆるオムニチャネル的な自社のEC自社の店舗で垂直に繋がるモデルだったと思うんですけども。今SEPHORAっていうですね、これはLVMHグループのコスメの、日本で言うとアットコスメストアみたいなところなんですけども。ここと提携をしてですね、ダイレクトトゥコンシューマーのチャネルだけではなくてリテールの方に今進出を始めてます。
これがSEPHORAの中でだいぶ大きい棚を取ってですね、かなり売れてるということで一気に拡大をしてきてるという感じです。
マスブランドとDNVBというのはある種対比的にスタートしまして、元々はマスブランドは例えばユニリーバ、ウォルマートだったりとかで、データプラットフォームのIDを使う。広告は外部メディアで、マーケティングはアウトソースするみたいなモデルで。
DNVBは、自社のECで、特にShopifyとかは強いんですけど、そういったもので、自社のIDでお客様と繋がってゼロパーティデータを使うみたいなことで。実際にメディアも自社でメディアとかコミュニティを作ってマーケティングもインハウスでやるみたいな。
こういうマスブランドの育ち方とDNVBの育ち方ってちょっと違ってたんですけど、今何が起きてるかって言うと、相互に融合を始めてるんですね。
DNVBというのは、垂直型モデルで一定成長した後にもう今度は、いわゆるリテールと組みながらマス化に向かっていく方向で。一方リテールはさっきのSEPHORAみたいに、Glossier.のような、すごい強烈なブランドが欲しいんですね。
強烈なブランドを自社の棚に置くことによってそこについてるお客様がリテールの新しいお客様になるという。いわゆる小売としてのブランドの中にどうMDとして統合して新しいお客様を獲得するかみたいなことが相互に今乗り合い始めてるっていうのが今このデジタルのブランドとかデジタルの売り場のあり方になってきてます。
皆さんも最近リテールメディアってめちゃくちゃ聞くと思うんですけども、これもですね、こういう動きの一環ですね。ブランドを強化したいリテールの動きと、チャネルを強化したいメーカーがどう協力し合って、新しいお客様と、それぞれのチャネルとかプロダクトを超えてどう繋がるかみたいなことを模索してるのが今かなという風に思います。
繰り返しなんですけども、デジタル時代というのはブランドとお客様が繋がり続ける時代なんです。いわゆるオンライン上だけで繋がるだけじゃなくて、フィジカルな領域でも繋がるということで。今はサイバーとかフィジカルとか関係なくブランドとお客様が繋がり続ける時代になってます。
マーケターの役割の変化とプロデュースの基本動作
この講座はですね、デジタルマーケティングの講座なんですけども。ある種デジタルマーケティングって手段なんです。我々がやらなきゃいけないことというのはデジタル時代にどうお客様と繋がり続けるためのマーケティングを、デジタルの手段を使いながらやっていくかということがとても大事だと思ってます。
このデジタル時代のマーケティングの形というのはですね、やっぱり仕組みだけで繋がるんじゃなくて、ブランドがどういう「より良い世界」を作りたいかという理念のお話と。
もう1つはお客様の欲求を繋ぐためにマーケティングの思考を扱うということと。その結果どういう顧客体験を生み出してお客様と繋がり続けて売上とか利益に貢献していくかという、こういう構造で捉えることがすごく大事かなと思ってます。
ここまでがデジタル時代のマーケティングとはなにか、というお話なんですけど、じゃあこのデジタル時代のマーケティングをどうやってプロデュースするのか、プロデュースするために必要な5つの視点をご紹介したいと思います。
マーケターの周辺環境の変化とチーミングのあり方
マーケターですね、皆様マーケターだと思うんですけども、周辺環境が今どういう風に変わってるか、我々働き手の環境の変化をちょっとお話ししたいと思います。これですね、Trinity P3という、オーストラリアにある、エージェンシーサーチとかをやっている会社が、今からもう10年ぐらい前にまとめたマップなんですけども、これ何が書いてあるかというと、パートナーシップの変化を書いてます。
オレンジ色の丸がマーケター、事業会社のマーケティング担当です。いわゆるクライアントですね。これに対して赤い丸とか水色の丸とか緑の丸とか色々カラフルな丸があると思うんですけど、ここに何が書いてあるかとエージェンシーって書いてあるんですね。
マスマーケティングの時代っていうのは、クライアントが大手広告代理店にお願いするとその中で戦略のプランニングができて、コミュニケーションプランができて、クリエイティブができて、メディアのバイイングができて、セールスプロモーションができてみたいな時代だったわけですね。
なんですけども、今このチーミングのあり方がどう変化していってるかというと、左下の方にどんどん降りてってるんです。この1番左下にあるのがベストオブリードって言ってて、僕はベストインクラスと言ってるんですけども。マーケターが真ん中にいて、いろんな専門性の異なるパートナーが紐づいて1つのマーケティングのチームになってる。
昔はなんか1つの代理店でAEがドカンってやってたんですけど、今、デジタル時代のマーケティングっていうのは繋がり続ける時代のマーケティングです。繋がり続けるためにはいろんな専門性が必要ですよね。いろんな専門性といろんなパートナーが必要で、それをどうやってベストな組み合わせを作ってチームとしてマーケティングを行っていくのかが大事です。
なんですけども、現場で起きてる問題っていうのは、このブランドのマーケターの周りにいろんなパートナーがいますと。
総合代理店もデジタル代理店もいるし、リサーチ会社だとかリアル会社とかいるんですけど、よくあるのはその施策が分断したり、非連動だったりとか、あるいは個別最適に陥ったりっていうことがめちゃくちゃあります。特にデジタルマーケティングっていうのは傾向として個別最適に陥りやすいんです。
我々マーケターが何をやらなきゃいけないかというと、特に事業会社のマーケターの皆さんはこの上のブルーのところですね。下にいろんな領域のエキスパートがいますと。このエキスパートの皆さんを束ねて、それぞれの専門性を繋げ合わせてお客様から見た時には1つの顧客体験を作らなきゃいけないですね。
それをするために、マーケターにはプロジェクトをマネージメントする役割と、もう1つは戦略とか顧客体験をプランニングしてディレクションする役割ですね。これが求められますと。
いろんな異なる専門性を束ねてプロデュースすることによって、お客様への価値提案と、それによって事業の問題を解決するということ。これをチームでコミットできる状態をどうやって作るかということが、非常に大事になってきているわけですね。
これをやる上で、これをマーケティングプロデュースっていう風に僕は言ってるんですけども、これをやるための5つの基本動作ということで、ご紹介できればと思います。
基本動作1:問題と課題の整理
1つ目、問題と課題を整理する。問題と課題を整理しましょう。
2つ目、プロセスとロードマップを描きましょう。
3つ目、マーケティング活動を構造化しましょう。
4つ目、チームを作りましょう。
5つ目、プロジェクトをマネジメントしましょう。
書くとなんか当たり前のことなんですけど、まあまあ難易度が高くてできていない現場がたくさんあります。というわけで、一つずつ説明していきます。
問題と課題の定義
そもそも問題と課題ってなんか言葉が似てるんですけども、違いって何でしょうか。
まずありたい姿、マーケティング活動を通じて到達したい姿。これに対して現実の姿ってありますよね。この間にギャップってあるじゃないですか。ありたい姿と現実の姿。
ありたい姿と現実の姿のギャップ、あるいはギャップによって引き起こされてる事象、これが問題です。
じゃあ課題は何なのかって言うと、この問題を解決するために取り組むこと。これが課題です。
例えば僕は、ベスト体重が60kgなんですけど、これが仮に90kgになったとします。そうするとありたい姿は60kg、現実の姿は90kg、で問題は30kg増量してること。あるいは30kg増量したことによって、来週の披露宴に来ていけるスーツがないこと。
この30kg解決するために、じゃ、明日から毎朝5km走りますとか、糖質制限を開始しますとか、なんか諦めて、90kgに合ったスーツを買い直しますとか、色々取り組むことありますよね。
これが課題なんです。大事なのは課題、1つの問題を解決するために取り組む課題っていうのは1つじゃないっていう、いくつもの課題があります。
マーケティングにおいても全く同じですね、まず現実の姿、現状把握しましょうと。これに対してこうなりたいってありますよね。世の中をどうより良くしたいのか、事業をどこまで成長させたいのか、お客様にどうなっていただきたいのかという、ありたい姿があります。
ここに必ず問題があるので、この差分を見て問題設定をしましょう。このプロジェクトではどういう問題を解決するのか、事業のどういう問題を解決するのか、あるいはお客様のどういう問題を解決するのかっていうのがまず必ずマーケティングのプロジェクトの頭では設定されるものです。
じゃあ、これを解決するためにどういう課題に取り組みますかと。この問題を解決するために取り組むことを洗い出します。そうすると課題が5個とか10個とか出てきたりするんですけど。必ずそのマーケティングの活動には予算というものがあったり、期日というものがあったり、いわゆる制限がありますよね。
そうすると課題に優先度をつけるということが大事になってきます。限られた予算とか限られた期間とか、その制限の中で最大効率的であり効果インパクトを出せる課題って何なのか、ということで優先度をつけてそれをロードマップ化して実行するというのが課題です。
特にデジタルマーケティングの現場で起きやすいのはこういうことです。
問題の設定が曖昧なんだけど、なぜかリスティング広告を500万円毎月回し続けるみたいなことが決まっていて。なんか500万円予算があるんだけど、25日になっても300万しか消化してないからあと200万ガッツで踏むみたいな。
なんかそういうことって起こりやすいんですね。デジタルマーケティングって。こういうことが起きるので要注意なんですけど。この課題がビジネスあるいはお客様のどういう問題を解決するためにやってることなのか。
そのやってる事というのは、いろんな選択肢がある中で優先度が高くて効率的で効果的なものを選択して実行しているのか、みたいな目線。必ず問題に常に立ち戻りながら、自分が取り組んでる課題が問題にインパクトするのかどうか、みたいな目線を持ちながらやることがすごく重要です。
プロジェクトの入り口で問題設定をする。これが失敗すると、ただ施策をやってるだけで問題にインパクトしない。目標に到達できずに迷子になるということですね。
マーケティング思考の重要性
このマーケティング思考っていうのはどういう問題を解決するのか。基本的にマーケティングは事業の目的とか目標とか、ある事業の問題を解決するためにやってるんですけども。このマーケティング思考のいいところというのは、この事業の問題をお客様の問題にひっくり返せるところなんです。
例えば売上100%の目標に対して70%しかいってませんという。じゃ、この30%をどう解決するかって言うと、「この事業で30%足りないのは30%分のお客様の問題を解決できていないからである」というのがマーケティングの考え方なんです。マーケティングにおける問題というのは、事業の問題とその裏側にあるお客様の問題を解決するということが、原理原則で重要であって、そのためにいろんな施策があるということです。
基本動作2〜5:プロセスの設計と活動の構造化、チーム作り、プロジェクト管理
基本動作2:プロセスとロードマップを描く
マーケティングってですね、戦略をアウトプットするとか、施策を実行するとか、そういったことも含めて一連のプロセスなんです。
プロジェクトを設計して戦略を作って施策を設計して実行して、データをうまく使いながらPDCA回していくみたいなことが、あるんですけど。そのプロジェクト設計にもさっき言ったみたいに目的があって、問題と課題の整理があって、ロードマップを作ります。
マーケティング戦略も原理原則、顧客理解から始まるんですけど。お客様を理解して価値を見つけて市場を定義します。いわゆるSTPみたいなポジショニングみたいなことやるんですけど、そこから4Pの方針ができて。そこの中の重点課題が決まって。実行計画が決まって。初めてRFPができてチームができる、その先に施策があるんですね。
こういう風にプロセスをちゃんと描いてやっていくということがとても大事なんですけど。やっぱりこれも同じですね。なぜか施策から始まってるという現場が、めちゃくちゃあります。
チームの競争力強化
なんでこういう、プロセスをちゃんと描いて実行するということが大事なのか。一言で言うとマーケティングというのはもう1人でやる時代じゃないですよね。自社の中でもいろんな部署をまたいで1つの顧客体験を作っていく。あるいは、社内だけじゃなくて、社外のパートナーともワンチームになっていて、そうするとチームで競争力を高めなきゃいけないんですね。
僕はプロセスデザインと言ってるんですけども、何かマーケティングのプロジェクトに取り組む時に必ずこの問題を解決するための、半年のプロジェクトはこういうプロセスを描いて、プロセスごとにやることを決めて、問題解決しましょうと。
問題把握して仮説作って、ロードマップ作って顧客理解して価値設計してシナリオ作って、みたいなことを要はプロセス化するんです。そうするとプロセス化をする中で今度はプロセスの中でどういう方法論を採用するかという議論が起きます。
例えば、問題の把握をするにしても事業の分析だったり、お客様にインタビューするというのもあるし、いろんなやり方があります。顧客理解にしても、アクセス解析もあればデプスインタビューもあればエスノグラフィもありますよね。
プロセスの中で次のステップに進めるためにどのやり方を選定するのかという議論です。今回のプロジェクトでは時間がないのでハウスリストからインタビューをする形で顧客理解を進めましょう、とかですね。その結果、アウトプットが出ます。
よくあるのはこのアウトプットのPDCAをぐるぐる回してるケースで、これは短期的にいいんですけども。これだけだとですね、やっぱりチームで戦闘力って高まってかないんです。
大事なのはこの目的に到達するためのプロセスを議論したり設計したりするということと、その中でどういうやり方を採用するかという議論と。そのあと初めてアウトプットってのは出てきますと。
アウトプットの振り返りもするんですけど、対応したやり方が合ってたのか間違ってたのか、今回のケースでうまくいったのかいかなかったのか、みたいなことの振り返りと、そもそもこのプロセス自体が合ってたのか間違ってたのか、みたいなことの振り返りと改善ですね。
なので施策の改善だけじゃなくて方法論の改善とかプロセスの改善をやることによって、チームの競争力が上がってきます。
これ、右に行くほど具体の改善で左に行くと抽象度が上がっていくんですけど、なぜこの抽象度の高い議論が大事かと言うと、同じ具体って二度と起きないからなんですね。
だから次の新しい問題に取り組むときにも、汎用性高く組織として取り組むためには抽象度の高い議論や振り返りというのも大事です。
これをやることによってプロセス・方法論・アウトプットを行き来しながら目的から成果に至る道筋を鍛えましょうという、再現性がチームの中に生まれてきます。
続けると何が起きるかというと、思考する手順とか方法論で議論できるようになるんですね。このプロセス自体の振り返りでブラッシュアップができるようになって、自社独自のメソッドとか方法論に進化していきます。
新しい人が入ってきたりとか、新しいパートナーと仕事する時とかもやっぱこういうプロセスとか方法論がある程度マーケティングチームの中にあると再現性が高まりますということです。
基本動作3:マーケティング活動を構造化する
デジタル時代というのはブランドとお客様が繋がり続ける時代であるというお話ししましたけれども。例えば商業施設とかの場合だとこんな感じの顧客体験のプロセスがあるんです。
施設の認知があって、どういう売り場があるのか理解してもらって、来場していただいて、買っていただいて、会員になっていただいて、再来場していただいて再購入いただく。
これがこういう形で繋がり続けて、それぞれが引き上がっていくことによって、売上利益に貢献できますよね。お客様と繋がり続けるっていうことはKGIに貢献できるっていうことですから。
このお客様の体験のプロセスと別にもう1個あるのが、サービスとかコミュニケーションの施策ですね。認知を上げるためにどういう施策があるのか、お買い上げいただくためにどういう施策が必要なのか、一度来ていただいたけど二度目来ていただけないお客様がいる時にどういう問題があってどういう施策を打つのか。
繋がり続ける時代のマーケティングというのは、繋がり続ける顧客体験のプロセスがあって、このプロセスを支えるサイバーやフィジカルを組み合わせた、横断的なサービスとコミュニケーションのデザインが必要になります。
これがいわゆるマーケティングモデルの構造化なんですけど、もう1個大事なのは、KGIとKPIなんです。よくあるのはKPIツリーってありますよね。あれは、KGIを分解してどういうKPIがあるかを把握するのと、今KGIを構成するどういうKPIがどういう状態なのかってモニタリングする意味ではいいんですね。
顧客体験設計もちゃんとKPIとかKGIに落とし込みながら設計するということがすごく大事です。KGIがあります。次に、マーケティングのKPIというのがあって。ちょっとKPIツリーとは別に、このお客様の体験のプロセスごとに、KGIに貢献できるKPIを顧客体験軸に分解するということです。
この顧客体験軸のマーケティングのKPIを引き上げるための施策というものがあって、この施策に対しても施策のKPIがあります。この繋がり続ける時代のマーケティングモデルは、こういう体験を描いて体験の中にしっかりKPIを落とし込んでいくことによって、この繋がり自体をマネージメントできるようになる、というような考えだと思います。
KGIはマーケティングのKPIに分解されて、マーケティングのKPIというのは施策のKPIに分解されますと。この施策のKPIをしっかり運用することによって、マーケティングのKPIは引き上がって、このマーケティングのKPIが上がっていくと売上利益は上がっていきますよね。なのでここをしっかり構造化しましょうということです。
これができないと活動全体の最適化って実現しないんですね。KPIのツリーって基本、分解されていくので、それぞれのKPIを達成しようとすると、顧客体験って分断していくんです。あるいは個別最適に陥っていくので、片方で顧客体験軸でKGIとKPIを構造化して、どこに問題と課題があるのかということを考えてマネージメントしないといけない。
この構造的にマネージメントするために大事なものが3つあって。1つはシナリオ設計ってやつですね。顧客体験のシナリオを、自社オリジナルで描きましょう。2つ目は、シナリオから導かれる施策を設計するということ。3つ目ですね、データです。データとかテクノロジーを使いながらサポートするかみたいなことも含めて繋がりっていうのはできるのでこのデータ活用計画という3つが重要になります。
シナリオ設計のプロセスって、まずステップ1ではありたい顧客体験のプロセスを描きましょうと。まず企業目線でいいんですね。この問題に対してコミュニケーションの課題というものを設定します。このコミュニケーションの課題に対してどういう施策を実行するのかという、3段階で問題を見つけて、解決するためのコミュニケーションの課題を設定すると。
そういうことやるとですね、パワポの中に落とせる範囲で書いてるんで解像度は粗いんですが、こういういわゆる施策マップみたいなものができるんです。お客様の体験のプロセスごとにどういうビジネス上の問題設定をしてどういうKPIで測ってどういうコミュニケーションの課題があるから今この施策に取り組んでるよと。
この施策はどういうKPIで測ってるよ、みたいなことが1枚の施策マップの中で表現できるんで。こうするとですね、異なるプレイヤーが1つの体験の地図を見ながら、その中で自分の役割を認識しながら、個別最適に陥らずにマーケティング活動の全体最適ができるようなものになります。
基本動作4:チームを作る
チームを作りましょうということで。これ先ほどのマーケティング活動の実行プロセスなんですけど。やっぱり今一社ではやりきれない時代なので、目的とかプロセスを共有して事業会社とかパートナー企業が一体となって、共創して成果を上げるチーム作りというのが大切です。
それぞれのプロセスごとにどういう専門性が必要で、どういう風に組み合わせてマーケティング活動を実行していくかということを描いて、チームにしてマネージメントしていく必要があります。
クライアント企業というのはですね、プロジェクトの要件を決めてマーケティングの戦略を描いて。それを実行するためのリクエストフォープロポーザル、RFPを作って、チームを作ってプロマネして、チームをディレクションしていくということが、クライアント企業側でできるのが理想です。
これが難しい時にはリードエージェンシーに入ってもらったりとか、PMOに入ってもらったりとかというのがあるんですけども。これはあくまでもやっぱりクライアント側でできること、やりたいこと。なぜならば直接繋がる時代だからですね。
チーム作りで重要な視点っていうのがあって。1つはこれ、クライアント企業にとって大切なことなんですけど、やっぱり基本戦略ですね。マーケティングの戦略と顧客体験の設計と、そこの中でどういう目的に対してどういう目標を持って、どこにお金をかけてどういう成果を得るのかっていうことですね。
この基本戦略とRFPを作って、パートナー企業にブリーフをしましょうということと。あとはやはりパートナー企業の開拓ですね。いろんな領域が必要になってくるので、どのパートナーにどういう強みがあるのかとか、お客様のなかでこういう困った問題が起きた時に誰に相談したらいいのか、みたいな引き出しをですね、常に持っておくことというのは重要で。
これなんか一朝一夕ではできないんです。なので、いろんなパートナー企業さんと日頃から関係作りをコツコツやっておくということは、とても大切になります。
基本動作5:プロジェクトをマネージメントする
プロジェクトをマネージメントするということで、これはプロデュース術の最後なんですけど。プロジェクトマネージメントするって、言ってしまえばプロマネなんで、当たり前じゃんということなんですけど。マーケティング活動ってほぼ思考なんですよ。考えてる時間が長くて。思考のプロセスもふくめてしっかりマネージメントしていくということが、とても大事です。
PMを支えるドキュメントとツール
左上にあるのはプロジェクトの起案書とかプロジェクト設計書みたいなものですね。このプロジェクトの目的は何なのか。どういう問題と課題を設定してるのかです。どういう検討プロセスで何を成果とするのか。どういうロードマップで動かすのか。予算はいくらなのかみたいなことをちゃんとドキュメント化しておくということです。
常にこういうものがあるとプロジェクトの目的に必ず立ち戻れるので、このプロジェクトの発足起案書みたいなものをちゃんと作っておく。
もう1つは、ウェブの開発とかをされてる方はご存知だと思うんですけども、WBSとかガントチャートというやつですね。これは、スケジュール表とはちょっと違って、いわゆるロードマップをより詳細にタスクレベルに分解しているものです。それぞれのタスクがいつまでにやらなければならないというクリティカルなパスが設定されているもの。
これはなぜ必要かと言うとプロジェクトを1社でやらないからです。これはA社のタスク、B社のタスク、C社のタスクと、異なる会社あるいは異なる社内の部門のタスクもふくめて、1つのロードマップをタスクレベルで可視化していく。それをマネージメントしていくことで、多くの人が関わるプロジェクトもマネジメントしやすくなります。
あと、これも本当に当たり前と言えば当たり前なんですけど、意外と配布されてない現場もよく見かけます。アジェンダと議事録ですね。アジェンダというのは、ミーティングの前に必要なもので、このミーティングの目的とか検討事項とか時間配分です。
あとはこのミーティングが終わったら速やかに関係者に議事録を配布するということで、議論の記録と、どういうその問題とか課題があるのか。その持ち帰りのタスク、各者の持ち帰りタスクは何なのか。次回のミーティングのテーマは何なのかみたいなことを、ちゃんと会議前、会議後にこういうドキュメントを配布するという。
もう1つ懸案管理表って言うんですけど。プロジェクトって、例えば半年とか1年とかやっていくと当初想定してなかったような懸案事項とかって出てくるんですね。そういうものをこのExcelの表にですね、この懸案は誰がオーナーなのか、いつ起案していつまでに解決するのか。その解決方法はどういう解決方法を選択したのか、今検討中なのか済みなのかみたいなことをずっと積み重ねて書いていくんです。
そうすることで、想定外の件案というものがちゃんと可視化されていくんです。後で言ったとか言わないとかですね。この時こういう懸案に対してこういう判断しましたよね、みたいなことが明確になるんで。非常に地味なんですけど、こういう、プロマネのツールを使うことによって、複雑なプロジェクトを相当スムーズに回せるようになります。
もう1つ大事なのが会議体の設計ですね。顧客体験全体をマネジメントしようとすると、戦略の目線と、横断的な顧客体験の目線と、もう1つはそれぞれの施策の領域の部分、個別の領域と、いわゆる横断と縦断が組み合わさって初めて顧客体験ってできると思うんですけど、特に縦断の方が分断化しやすいんです。
なので、このプロジェクトはこういう会議体を組み合わせて運用していきます、ということをプロジェクトの最初に決めて、会議体をマネージメントしていくことで、この横断的な目線と縦の目線がしっかり組み合わさって1つの顧客体験、繋がり続けるマーケティングというのはできるようになります。
よくやるのはステコミっていうステアリングコミッティなんですけど。これは戦略的なことを議論したり全体のことを議論したりするもので、ここにはCMOとかブランドマネージャーとか戦略パートナーとかが入ってくる。
もう1個別に分科会と言って、ペイドメディアに関する分科会とかPRに関する分科会とかデータ活用に関する分科会とか、そういったものがあったり、あるいは認知系の分科会があったり、CRMの分科会があったり、顧客体験別で分かれることもあるんですけど。
こういういわゆる顧客体験そのものを、会議体としてしっかり分けて組み合わせて運用していくことで、先ほど構造化したような顧客体験というのがうまく出来上がっていきます。
マーケティング活動って無形なんです。思考のプロセスなんで。PMを可視化するっていうのは結構難しいんですけど、これをちゃんと道具を使って可視化することによってうまく回せるようになりますということです。
講義のまとめ:マーケターズジャーニー
以上がプロデュースの5つの基本動作です。問題と課題の整理、プロセスとロードマップの整理。そして、マーケティング活動を構造化する、チームを作る、プロジェクトをマネージメントすると、5つですね。繋がり続ける時代のマーケティングをマネージメントするための5つの目線をお話ししました。
デジタル時代とは、ブランドとお客様が繋がり続ける時代ですよという風にお話ししました。
そして必ずしもデジタルマーケティングが良くないということではなくて、我々はまずデジタル時代というものを捉えてマーケティングをする中で、デジタルマーケティングという手段とか仕組みとかツールとかを適切に使っていきましょう。これはお客様と繋がり続けるためにやっていくんですよということ。
マーケターの周辺環境が変わりました。一社にまるっと投げといて何かができる時代ではなくて、やっぱ繋がり自体を事業会社が描いて、それをマネジメントする時代で。それには様々な専門的な、パートナーとの組み合わせのチームが必要になりますよということ。
これをマネジメントする時に重要なのが、まずプロジェクトの入り口で我々はこのプロジェクトでどういう問題を解決するのか。そのためにどういう課題があって、どの課題が優先度が高いのかということをしっかり整理しましょう。
もう1つプロセスを描くことによってその共通言語ができるので、チームというのは持続的に成長しますよというようなお話。マーケティング活動を構造化しましょうと。
構造化っていうのはすなわち繋がり続けるをデザインし、その繋がり続けることをマネージメントすることで、売上利益、KGIに貢献できますという風なお話です。
それを実行するチーム作りが、超大事で、いろんな専門性が必要なんで、日頃から一緒に仕事ができる仲間ですね、ネットワークを作っておきましょうということ。
最後ですね、複雑なプロジェクトだからこそ、PMを仕組み化すると、随分動かしやすくなりますということをお伝えしました。
僕はマーケターズジャーニーって言ってましてですね、カスタマージャーニーじゃないですね、マーケターズジャーニーなんです。
なかなかやっぱ一直線に行かないんですけど、一直線に行かないからこそマーケティングの思考の扱う試行錯誤が起きるわけであって、それ自体を一緒に皆さんと楽しんでやれるといいかなと思っております。私からの講義は以上になります。ありがとうございました。
Q&A
池田:いやあ、しびれる、何回聞いても痺れる内容ですね。僕は久しぶりにこの話を伺いましたけれども。菅さん53ページ目ちょっともう1回出してもらっていいですか。多分今日話を聞いた方々は、結構抽象度高いなみたいな感じだったと思うんですけど。
菅:そうですね。はい。
池田:5つポイントがあって全部大事なんですけど、やっぱりもう1個目のところのその、問題点はある程度分かるんだけど、その課題ってのは問題点に対して1対1で、1個だけじゃないって話じゃないですか。
1個の問題に対して課題はいっぱいあるし、その課題は優先順位、ま、経営資源が有限だから優先順位決めなきゃいけないとか、あるじゃないですか。そこでずれるともうそっから先全部ずれるんでもう1個目重要みたいなところだから、ま、1個目だと思うんですよね。
で、この2個目の話してる人もほとんどいないと思うんですけど、これまさに右上のこの広告の施策やったけれどもいまいち、PDCA回して改善しようみたいな超部分最適化されたところのPDCAばっかりがデジマの真骨頂みたいになっちゃってるけど。
まさにこの施策としてのアウトプットが出てきた時にこれってどういう方法論で分析したんだっけ。それってなんでこの方法論選んだんだっけってプロセスデザインまで帰ってぐるぐる回る。これはみんなやってないっすよね。
菅:やってないっす。で、これをやってる会社は強いんですよ。やっぱり某外資系とか。誰を切っても同じ基本メソッドをみんな持ってるみたいな会社ってマーケで成果上げるじゃないですか。
池田:はい。そこの再現性を中でどういう風に育てられるかっていうのが大事。この話とかまさに、デジタルマーケティングを何周かしてなんかうまくいかない、なんかうまくいかない。もうどうしたらいいんだ。なんかこの改善のやり方じゃ限界があるんじゃないかっていう、天井が見えて、それを突破したらまた次の天井が見えて3周目ぐらいでようやく「そういうことだったのか」となる。
要はこの53ページ目の奥深さと本質が、結構「僕は分かるけど」レベルの抽象度で。「デジマやり始めたけれども、もっと効率的にCPA下げるためにはどうしたらいいんすか」みたいな話を今現場でやっている人からすると、「いやこんな抽象的な話とかどうでもいいから右上のPDCAの回し方知りたいんですよ」みたいな感じでギャップがあるんだけど、でもこの話は結局行きつくところ全部ここに帰ってくるっていう話だから。
是非今日聞いている皆さんも、ちょっとなんかこの話よくわかんねえとか、そういうことじゃねえんだよって思った人は多分ね、3年後にこの話がそういうことだったのかみたいなところが分かっていただけるんじゃないかと思います。
菅:一応今日の僕の役割っていうか、ほら、各領域ってこれからやるじゃないですか。だから専門領域がすごく大事なので。その専門領域を本当に「部分」にしないためにも。多分横断的にこう捉えるとか全体のちょっと俯瞰で見る目線を話す係が今日の僕。
池田:いや、本当そうなんですよ。本当そうなんですけど、やっぱり今から点を学ぼうとしてる人は、その点が何者なのかっていう話と、その点の効果測定とPDCAをどうするのかっていう話が1周目の話だから。それらが全部出来終わるとなんか点の確からしさとか点個別のPDCAの限界が見えてくると、こういう話になっていくという話だから。いくつかの森をさらに上から俯瞰をしたみたいな話だと思うんですよね。
菅:はい、そうですね。
池田:葉っぱがついている枝、枝がついている幹、その木が林しになって、林が森になっている。その森をいくつかまとめて上からさらに俯瞰をしてみているみたいな話だったなって今日は思いましたんで、是非皆さん今日はそういう話だったっていう感じで。はい。
多分ね、半年後とか1年後にせっかく今回の動画とかアーカイブさせてもらうんで、なんか定期的なんかちょっと限界が見えてきたみたいな時に今回の菅さんの話とか半年1年に1回ぐらい振り返ってみるとめちゃめちゃ毎回僕は気づきがあるんじゃないかなと思いました。ありがとうございました。本当にありがとうございます。
で、ちょっと残り少ない時間なんですけど、皆さんから来ている質問の中にはやっぱりデジタルマーケティング部的なものを作っている会社もこれから作るぞみたいな会社も、色々ありますけど。こういった組織、今日の話で聞くと、そういう話じゃないんだよみたいなとこもあるんですけど。
菅:いやいやいや大丈夫ですよ。
池田:組織を作っていく時にどういうことを気をつけた方がいいんだっていう話もそうだし、そのデジタルマーケティングの組織の中にはどういうスキル要件を持った人間が、社内から移動してくるのか、新しく採用するのかみたいなところの、部署の立付けの問題とかと、あと人の問題、ここら辺なんかは菅さん、どう考えますか。
菅:えっと、デジタルマーケティング組織を作る時は、どういう組織の中でそのデジマ組織を作るかによるんですけど。僕が前職時代にトラディショナルなエージェンシーでデジタルマーケの組織を作った時にやったことはまず独立採算にしてくれっていう。
池田:うん。うん。
菅:自分たちでPL回すからそのPLの中をしっかり回す。独立採算でやることによって採用の柔軟性だとか、あるいはデジタルのテクノロジーだとかツールに対する投資ができるようになったりだとか。
それをいわゆるトラディショナル組織の中でやろうとするとやっぱり意思決定が遅くなりますよね。例えば、デジタル部署からそうでない部署に上申をすると理解ができないとか、意思決定ができないとか、価値が分からないとかになるので。
まず可能だったらなるべく独立採算と言いますか、その、デジタルマーケ組織の中でこうある程度柔軟に意思決定ができる環境を作るっていうのはまず1つですね。
池田:これ、事業主サイドにおけるデジタルマーケティングの部門になると、今度は他の部署との連携が逆にものすごい重要になってくるじゃないですか。エージェンシーのデジマ組織と事業主サイドのデジマ組織ってまたちょっと立付け違うと思うんですけど。事業主サイドだったらどうなりますかね。
菅:うん。事業主サイドはでもなんか進化のプロセスというのがあると思ってて、最初はなんかデジタル特化みたいなことでいいと思うんですね。そうすると、じゃあSNSやりますとか、オウンドメディアやりますとか、DMPやりますとかっていう組織になるんですけど、多分そのフェーズがないとやっぱり専門性って溜まってかないと思うんですね。
だけどそれやっていくとだんだん事業側との分離が起きてきて、「デジマの連中ちょこちょこやってるけど全然ビジネスインパクトないじゃん」みたいなフェーズになってくるので。
そうなってくると、次にはやっぱ事業理解みたいなことが必要で。そこで多分事業側とデジタル側の人材交流みたいなことが少しずつできると、デジタルマーケティングも、よりそのブランドとか事業に貢献できる存在にもう1段階上がっていくみたいな。
なんかそういう、最初の辛い時期はあるんですけど、でもまずグっと専門的に行くみたいなステップかなって僕は思って。
池田:なるほど。結局、分断しちゃって点だけやってても意味がないから、そこをすっ飛ばして、もっと統合的にやれる組織を作りたくなっちゃうんだけど、意外とそれはうまくいかなくて。まずはベタベタの個別最適化された、分断したところでスペシャリティを掘って、上と横と繋がっていかなきゃいけないよねと。準備が整ってから統合していかないとなかなかうまくいかんと。
菅:はいはいはい。
池田:いやあそんな気がするわ確かに。人の問題はどうなりますかね、そうするとね。
菅:いやあ、デジタルのスキルって言ってもめちゃくちゃ多様じゃないですか。
池田:いやそうなんですよ。そうなんです。
菅:「デジタル人材の採用」ぐらいのこうジョブディスクリプションだとだいぶ危なくて。
池田:危ないですよね。「デジタル人材」って何だよみたいね。
菅:そうそうそうそうなんですよ。だからさっき言ったみたいな、構造化した時に我が社のサービスの顧客体験を構成するには、どの領域にどういうスキルが必要で、それを社内で補うのか、アウトソーシングするのかみたいなことのまず分解と整理をした上で。
データアナリストが必要なのか、あるいはSNS運用が必要なのかって、ある程度やっぱ解像度は多分上げた方がいいんじゃないかなと思います。
池田:だからやっぱりさっきの図とかでもありましたけど、マーケティングの構造化のマップの中で、自社の喫緊の課題っていうのはここだからここのところの点をまずは解決ができるスペシャリストっていう意味での。デジタル人材の定義みたいなところをしていくってことですね。
菅:そう。そうです。そうですね。なんかやっぱ入口はもうそこで良くて、あとはでもじゃ、ずっとそこを専門家として掘り下げていくのかさっきの組織間の結合じゃないけど、そういう専門性を持ちながらもう1段階全体を描ける人材になるとか。あるいはブランドマネージメントできるようになるとかっていうなんかそこの登り方は多分次のステップとしてあるんだろうなと思います。
池田:ま、働いているデジタルマーケターは横に展開していくのか、上に、より上流とかマーケットの連結していくのかみたいなね。
いやあ、1,2時間ぐらい話せそうな感じですけど、時間が来てしまいましたので。これにて終了とさせていただきます。
本当に今日は貴重なお話をいただいてありがとうございました。是非皆さん今日のアーカイブの動画を半年1年に1回見ながら、今日の話の奥深さを今後数年かけて、理解を深めていてもらえたらなと思います。はい。
ということで今日はマーケティング、デジタル時代におけるマーケティングプロデュースについてBICPの菅さんにお話をいただきました。改めてありがとうございました。
菅:ありがとうございました。
池田:皆さんまた次回お会いいたしましょう。お疲れ様でした。さようなら。


