はじめに:講座の目的とPR効果測定の課題
※このテキストは『マーケターのためのPRスキル強化講座⑤ ソーシャルメディア時代のPR効果測定』の書き起こしです。文中の登壇者名表記は敬称略。
はい、皆さんこんばんは。今日も始まりましたMARPSでございます。
今日はですね、続けてまいりました「マーケターのためのPRスキル強化講座」最終回ということでお届けをしてまいります。
今のマーケティングの世界というのは、もはや広告とかPRとか販売促進とかデジタルとか、いろんなものを分断をして考えるのではなく、全てを統合的に考える必要があります。かつ、今の時代においては、今日もPESO(ペソ)の復習をしますが、広告の役割は引き続き大きいわけですが、広告だけで売れる時代ではなくなってきています。
ですから、このパブリックリレーションズというものを、いかにうまくマーケティングにつなげていくのかというところが、非常に重要な時代だということで、今こそマーケターの皆さんがPRを学ぶべきだということでお届けしてまいりました。
行動変容と意識・認識・態度の測定の難しさ
今日は最終回です。PRの効果測定というのは、広告効果測定とか、さらにマーケティングの効果測定とか、この効果の測定というのはめちゃめちゃ重要なテーマです。デジタル領域は数字が見えやすいので、ダッシュボードで何インプレッションしたとか、何クリックされたとか、割り算すると単価いくらだとか、コンバージョンしたとか単価いくらだとか分かります。
しかし、広告もPRもそうですが、意識と態度を変えるためにやってるわけです。
行動を変えるというのは、「来店してもらう」とか、「商品を買っていただく」とか、「買い続けていただく」というのが最終的な目的(行動の変容)ですが、行動の変容は意識が変わったり、態度が変わったり、認識が変わることによって起こります。行動を変えるためには、意識、認識、態度を変えなければいけません。
意識、認識、態度を変えることが役割なのですが、意識、認識、態度というのは行動の手前にある脳の電気信号が変わっているだけなので、ダッシュボードのデータとして現れないわけです。なので、効果の検証が難しいと思われているわけですね。
たった1時間半で効果測定の全てを話すことは難しいですが、およそこういう風に考えてみてくださいといったところの大枠のヒントはご提供できるのではないかと思っています。
全体構造を俯瞰することの必要性
マーケティングはいつも言っている通り、幅が広く、1個1個の奥が深いので、1回きりのマーケター人生の中で、全ての横にわたる全ての奥まで行くことはなかなか難しいです。だからこそ、なんとなくつまみ食い的にソーシャルで流れてきたものを勉強したり、点の学習に集中してしまうと、応用戦としての現場であまり役が立たないということになりがちです。
とにかく点を学ぶことは大事ですが、これが線としてつながってマーケティングという流れになり、その線というのはいろんな何本かの線が組み合わさっている構造体をなしています。現場は応用戦ですから、基礎を分かっていないと応用ができません。
応用するためにはまず基礎を分かっておかなければならず、その基礎というのは、全体を俯瞰をして構造として理解をしていることが必要です。全体を俯瞰し構造として理解をしているからこそ、あの線のここの点が課題なんだなということが分かり、しっかりとした課題設定や課題解決の施策というのがシャープに企画実行できるようになるわけです。
この、点を線としてつなげて面として理解をするのは大変な作業だったので、MARPSはできる限りこの面を示し、どの面の/どの線の/どの点を学んでいるのか、という位置関係を意識しながら学んでいきましょうと言っています。
PRの全体構造における位置付け
売上の地図とかマーケティングコミュニケーションのファネルマップとか、およそ全体の構造を俯瞰するとこういうことですよというところをいつも示しています。PRというのはここです。今日はここの位置付けのお話です。ブランドエクイティを上げるためにこのパブリックリレーションズ(PR)というものは行っているわけです。
ファネルマップの位置付けで言うと、パブリシティというのはここからこの辺で、戦略PRというのはこの辺です。戦略PRとパブリシティは違います。もっと言うとパブリックリレーションズとパブリシティも違います、という話をちゃんと理解をしていきましょう。
PR効果測定に関する誤解と現実
私の自己紹介は省略します。当社はお客様がこういった企業の宣伝部、マーケティング部、広報部の皆さんと約20年近くお仕事させていただいているので、この効果の検証というのは比較的、どこの会社さんも課題に感じているところです。
今日のゴールは、PR効果測定で、このよくある間違いを知った上で、あるべき測定・評価の方法を考える入口に立つことです。皆さん「答えをくれ」と思うでしょうが、答えがあったらみんなこんな苦労はしていません。
試しに皆さんPR効果測定でも広告効果測定でもマーケティング効果測定でもAIに聞いてみてください。びっくりするくらい質問に対して的を射た回答を返してくれません。また、Amazonとか本屋さんで、このPR効果測定、広告効果測定、マーケティング効果測定に関連する書籍を探してみてください。びっくりするぐらいないです。論文でもいいです。すごくないです。
こんなに重要な、何の課題を解決するために、どの施策にどれぐらいの時間とお金を使って、それは結果良かったのか悪かったのかということを評価できない限りは、大切な時間とお金を使っていることがちゃんとミートしているのか分かりません。
こんなに重要なテーマであるにも関わらず、PRとか広告とかマーケティングの本は死ぬほどあるわけですが、この効果の測定に関してはびっくりするぐらいないんです。
僕も20年以上探してきましたが、少なくとも僕は見つけられていません。そもそもそんなものはないんだということをまず思ってください。自分たちである一定の(今日、全体観をお話ししますが)これをヒントにしながら、自分たちで考えて決めていくしかないということをまず理解をしてください。
PR効果測定の土台となる基礎知識
測定の前提:PRが「何に効くか」の理解
PRの効果測定ってこうしたらいいよというお話は、正しい前提知識の基礎の上にしか成り立たないんです。
例えば、頭痛薬の効果の測定はどうしたらいいのかというと、頭痛薬を飲んで頭痛が治ったのかどうかで測定すればいいだけですよね。
しかし、今PRも広告もマーケティングの世界で何が起こっているかというと、頭痛薬を飲んでいるのに熱が下がらないとか、肌の調子が良くならないとか、二日酔いが治らないとか言っているわけです。それは全く薬と効果の測定の指標が合っていません。
なので、PRには一体何ができるのか、PRというのは何が何に効くんですか?逆に何には効かないんですか?といったところが正しく理解ができていないと、PRの効果測定の話が全く噛み合わないんです。
認知向上はPRの主目的ではない理由
例えば、PRによって認知が向上したのか、というところは各社皆さんが測っていますが、僕の個人的な見解は、PRの測定で認知の向上は測ってもいいけど、それは副次的な効果であって主目的ではないはずです。
なぜならば、認知は広告で上げるものであってPRで上げるものではないと思っているわけです。PRで上がるんですが、上げるものではない。なぜなら、PRというのはコントローラブルではないからです。自分たちがどんなに一生懸命がんばったって、出るか出ないかは保証ができません。どのように出るかも、どの時期に出るかもコントロールできないわけです。
そのPRに認知の向上を任せることは、果たして本当に正しいのか。頭痛薬を飲んで頭痛以外の効能効果を期待して、それができなかったら「なんだ、この頭痛薬イマイチだな」という話にしかならないので、全然歯車が合っていません。
PRというのは何に効く薬なのか、逆に何に効かないのかを、広告とオウンドメディアとシェアードメディアと、PRというアーンドメディアがどう違うのかということを、相対的に理解している。
だから、「これは広告で測定すべき」「これはオウンドメディアで測定すべき」「これはシェアードメディアにやらせるべき」「ここがアーンドメディアの真骨頂なので、この真骨頂のところが、頭痛薬が頭痛に効いたのかというところをここで測ろう」ということが決まれば、そんなに難しい話じゃないんです。
PRの理解がおよそずれている。これが、PR測定や広報効果測定がなかなか高度化していかない要因だと僕は思っています。
PRとマーケティング活動の比較と定義
「PR」という言葉が持つ誤解
このPRがすごく誤解をして多くのマーケターに理解をされちゃっているのは、マーケターに限らず世の中全般的にこのPRという言葉が持っている文脈的なものに引きずられているからです。
例えば、「自己PRをしてください」とか、「PRタイム」とか、あとインフルエンサーマーケティングにおいて投稿につけられている「#PR」のようなものですね。
自己PRをしてくださいと言われたら、普通多くの人たちは、自分はこんな人間です、こんなところが素晴らしいです、これができます、みたいなことを言います。PRタイムも同じで、自分の強みみたいなものをできる限り目の前の人たちに伝えるのが、いわゆるPRタイムです。
「#PR」がついているインフルエンサーマーケティング系の案件は、基本的に全てペイド的な施策、つまりお金でインフルエンサーさんと契約をして投稿してもらうものです。ただそれはスポンサードなので、オーガニックな投稿と見分けがつくように#PRをつけるということをやっているわけです。
これ、自己PRもPRタイムも#PRも全部広告なんですよね。自己PRというのは「あなたの魅力を広告的に私にちょっと主張してください」という話です。#PRというのも、本当は「#アドバタイジング」とか「#スポンサード」とかであるべきですが、スポンサードとか#広告とかやっちゃうと「なんだ広告かよ」という話になって反応が悪くなるので、#PRで濁しておこう、と分かりにくくしている。
広告とPRの比較:第三者による信頼獲得の強さ
広告というのは基本的に、テレビCMとか普通の広告と同じようにポジティブメッセージ100%になっていくものです。
広告とPRの違いは、例えば、食事をしている席で「俺ってさ、こんな会社でこんな仕事やってて、こんな成果出したんだ、すごいでしょう」と言うと、「はいはい、そうですか」となります。
しかし、自分がトイレに行っている間に、誰か(第三者)が「あいつさ、自分では言わないんだけど、マジすげえんだよ」と話しているのを聞くと、「そうなんだ、すごい人なんだ、いい人じゃん」となり、トイレから戻ってきた時に見る目が変わっているわけです。
これがPRです。他者、第三者が、その対象物のことに対して何がしかの情報の発信なり報道なりみたいなことをやっているから、興味がなかったけど興味を持ってもらえたり、好意が上がったり、信頼度が上がったり。これが本来的なPRの強さなのです。
PRだと多くの人たちが持っているものと広告というものが、こういった言葉と概念が世の中に一般的に広がっていることで、ものすごく誤認されやすい状態にそもそもなっているということです。
マーケティングとパブリックリレーションズのゴールの違い
マーケティングとPRの位置関係を、近い距離で比較することが、パブリックリレーションとマーケティングとマーケティングコミュニケーションの違いを理解する近道だと僕は思っています。
僕が以前、広報専門の大学院大学で客員教授をしていた時にも、マーケティングとマーケティングコミュニケーションとパブリックリレーションズの違いを分かりやすくまとめたものが探してもありませんでした。そこで僕的な解釈でまとめたのがこちらのスライドです。
マーケティングというのは、お客様に買っていただく、ないし買い続けていただくために行う全事業活動ですから、コミュニケーションだけに限定された話ではありません。
- マーケティングのゴール:売上(買っていただくこと)
- 売上ないし利益を獲得するために行う活動です。
- パブリックリレーションズ(広い意味)のゴール:売上ではない
- 広い意味でのパブリックリレーションズというのは、「パブリック(大衆)とのリレーション(信頼関係)」を作る活動で、ものすごく広いです。
- ゴールは売上の獲得ではありません。パブリックとのリレーションを作り、維持向上させる活動なので、効果の検証は「パブリックとの信頼関係が作られたのか、維持できているのか、向上しているのか」であるべきです。
にも関わらず、ゴールが売上のマーケティングの中に、売上を目的としたPRが入っていると、ここでよく分からなくなります。左のPRと右下(マーケティングコミュニケーションの中)のPRは何が違うんだ、という話になるわけです。
左側(広い意味のPR)は、売上をゴールにした活動ではありません。一方、右側は売上を目的にしているので、最終的には売上に繋がっているのかどうかで測るべきなんです。
パブリシティ、戦略PR、広報の活動領域
マーケティングコミュニケーションでここに書いてあるのはパブリシティです。パブリシティというのは、超分かりやすく言っちゃうと、「新しい商品が出る」「商品のリニューアルをした」「こんなサービスがある」「出荷台数◯◯台突破した」、といったプレスリリースを書いてメディアに取り上げていただく活動です。
このパブリシティというのは究極何のためにやっているかというと、比較的短期的にニュースにしてもらい、独自の記事として取り上げてほしいというものです。できる限り短期的にリードの獲得や商品の売上につなげるためのPR活動です。
パブリシティというのは基本的に、売上を上げる、お客様に買っていただく、買い続けていただくために行っているPR的な施策なので、このマーケティングコミュニケーションの中にあって然るべきだと思います。これを狭義の広報と呼びます。
戦略PRについても、戦略PRとパブリシティの違いを簡潔に説明できる方は少ないです。超強烈なパブリシティだと思っている方が多いですが、全然違います。
超分かりやすく言っちゃうと、広告というのは特定の商品サービスを売るための認知を向上させる施策ですが、興味がない人に広告を100回見せたって興味がないものは興味がありません。
基本的に、広告を出稿する前に、その商品が「来てるね、話題だね、ちょっと気になっている、もしかしたら買っちゃうかもしれない」ぐらいの世の中の空気を作っておくのが戦略PRです。商品サービスのことには触れず、カテゴリー、その対象に対する空気を作る。
例えば、ハイボールの事例で、サントリーさんが行った戦略PRは、「角」のパブリシティとしてやったのではなく、「今ハイボール来てます、ハイボールブーム来てるぜ」みたいに、カテゴリー啓蒙をしました。ウイスキーというおじさんが飲んでいるイメージがあったものが変わってきた時に、広告で角を売るわけです。
戦略PRの多くは宣伝予算で、自社の商品・サービスを売る手前でカテゴリー啓蒙をするという活動なので、基本的に中長期的に売上を作っていくための前哨戦をやってるわけです。PRファースト、アドバタイジングセカンドのPRファーストをやっているので、これも戦略PRというのは売上を作るために行っているPR的な施策であると整理できます。
大きな企業の広報部がやっている活動というのは、ほとんどが左側のパブリックリレーションズです。企業とかグループ広報とか、社内報だったり、社内のエンゲージメント向上による意識の向上だったり、採用広報、IR、あとはレピテーションマネジメントなどが左側に入ります。
パブリックリレーションズ、パブリシティ、戦略PRそれぞれを行っている時の効果測定指標というのは、目的が全然違うわけです。あと、時間軸も違います。なので、効果測定の指標が違う、KPIとKGIが違うということです。
マーケティング最大の課題:「興味の換起」
認知と興味の溝
今マーケティングとして各社一番どこに困っているかというと、僕はここだと思っています、「興味の喚起」。多くの企業でめちゃめちゃ課題になっているのがここではないでしょうか。
大きな企業、歴史のある企業であればなおさらですが、すでに国民認知率が80%とか90%とか100%に近い状態になっている商品サービスは世の中にたくさんあります。その企業はもう認知獲得できています。広告によってある一定のところまで認知を向上させることはできるわけです。
超荒っぽく言っちゃうと、認知はお金で買えますので。予算さえ投下ができるのであれば、一定のレベルまで認知を向上させることは今の時代誰だってできます。
問題は、お金を払って認知を購入し認知度は上がったけれど、一向に売上がらないことです。なぜかというと、多くの人は「これ知ってますか?」に「知ってるよ」と答えるが、「なんで買わないんですか?」には「必要ないでしょ、興味ないです」という話になるわけです。
知られていることと興味があることっていうのはめちゃめちゃ全然違って、ここにはマリアナ海溝ぐらい深い溝があると思ってください。認知向上したぜ、やった、という話は大事ですが、その次にめちゃめちゃ大ジャンプしないとこのマリアナ海溝を抜けられず、右に移行していけません。
そして、興味はお金で買えないんです。興味はお金で買えません。広告で100回言ったって興味がないものは興味がないのです。
行動変容のプロセス
行動の変容(来店してもらう、商品を買ってもらう)というのは、意識、認識の変容ないし態度変容の結果起こるものです。意識、認識や態度変容しないで行動変容、つまり今すぐ買ってもらう方法というのは、一番は値引き、割引きです。
意識も認識も態度も別に変わってないけど、販促やったら買うという行動の変容は起こります。しかし、当然値引きの販促の原資は必要ですし、それをやりまくっていたら参照価格が下がり、ブランド価値の毀損につながります。
なので、できる限り価格を下げて買ってもらうなんてことは、最後の手段なのでやりたくない。健全に買ってほしい、健全な行動変容が持続する状態で行いたい。そのためには、しっかり意識、認識や態度を変えた上で、行動が持続可能な状態で起こっていくということを作らなきゃいけない。
この意識、認識や態度を変えることによって行動を変えていくというところで、この興味の壁があるわけです。
興味の壁の背景:市場の高度化とコモディティ化
興味の喚起というところがマーケティングコミュニケーションにおいて重要度が上がっているのは、今の特有の課題です。
戦後80年経ち、各社の企業努力は凄まじいものがあります。企業の歴史は、お客様が抱えているお悩みや課題、まだ満たせていない未充足なニーズを探索し、それを叶えるための製品サービス作りをしてきた歴史です。
特にメーカーの場合、未充足なニーズを解決するためには技術を磨く必要がありました。昔の洗濯用洗剤の例のように、技術が未充足ニーズを解決するところに一役買い、そこに到達をした商品が一番売れるという技術の時代だったわけです。
その技術競争を数十年繰り返してきた結果、今は業界各者の持っている技術というのは素晴らしい状態まで磨き込みが行われ、各社の持っている技術は大体同じところに揃ってきています。昔に比べると技術レベルは大体横並びになってきたわけです。
その結果、世の中に並んでいる商品っていうのは、もう全て素晴らしい商品だけの時代になりました。どの商品を買ったってほとんど失敗する商品なんてないぐらい磨き込みが行われている素晴らしい商品ばっかりになった。
ただ、どの商品買ったって素晴らしいんだったら、ちょっとでも安い方を買うか。このコモディティ化による価格競争が、全カテゴリーで進行しているのが今の時代です。
全てが素晴らしい商品になったからこそ、どの商品買っても変わらないんだったら価格が安い方を買う、という状態になった時に、自社の新商品を出しても「いや、別に困ってません、大丈夫です」という状態になってしまっている。これが一番大きな市場の環境変化であり、市場は高度化を極めている状態なわけです。
とにかく各社が自社の商品を買ってくれという広告競争が始まっています。アテンションエコノミーと言います。とにかく注意を払ってもらうことがめちゃくちゃ大変な時代になった。
広告まみれの世の中であっても、広告を打てば上手に認知は向上させることができますが、認知はお金で買えるけれども興味はお金じゃ買えない。認知を上げることはできても、次のところでつまづきやすくなっているのです。
無関心ゾーンの克服とPRの役割
「好きの反対は無関心」:関与度の重要性
とにかく今の我々はヒューリスティック処理(何も考えず85%は自動運転で習慣で生きている)の状態です。興味を持ってもらうというのは、めちゃめちゃ大きなチャレンジなのです。
好きの反対は嫌いではなく無関心です。好きと嫌いには共通点があり、関与度が高い状態であるということです。関与があるから好き、ないしは関与があるから嫌い。無関心というのは関与度が0なのです。
この無関心な人の関与度を上げるというのが興味喚起ですが、めちゃくちゃ難しいわけです。
Yahoo!ニュースの事例と認知の限界
試しにYahoo!ニュースアプリでトピックスをチェックしてみましょう。Yahoo!ニュースには、トピックスに上がらない裏側に膨大な数のニュースが配信されています。1日に3,000本から5,000本ぐらいのニュースが毎日配信されていると思います。
Yahoo!の担当者が3,000本から5,000本のニュースの中から、これは多くの人たちが知っておくべき重要なニュースであると選別しています。Yahoo!は公共性、公益性という社会の報道という責務を負っているので、クリックされなくても大事だと思うものを報道的なスタンスで選んでいます。
PRをやっている人なら分かると思いますが、どこかの報道機関やコンテンツサイトにニュースとして取り上げていただくのは、それだけでもめちゃめちゃ大変なことなのです。ニュースとしての価値があると認められたものが、広告ではなくPRとして第三者に取り上げてもらえるわけです。
その勝ち組3,000本から5,000本のニュースの中から、さらに厳選されたYahoo!トピックス(100本前後ぐらい)。これは「日本国民は知っておいた方がいいですよ」というニュースの決勝戦に勝ち上がっているわけです。
皆さんはそのトップオブトップのYahoo!トピックスを、たまにエレベーターを待っている時とか、電車に乗っている時とか、30秒1分の時に見ます。何のニュースを読んでいますか?だいたい2本とか3本とか5本とかで、多くても10本とかだと思うんです。
100本の超勝ち組Yahoo!トピックスの中でさえ、皆さんは全ニュースを読んでいません。これが我々の認知限界なのです。すごい重要だと言っているのに、我々は全部クリックして読んでいない。びっくりするぐらい我々は多くのものに他人ごとなのです。
「自分ごと化」の難しさ
好きの反対は嫌いではなく無関心であるという話。マーケティングにおいてめちゃめちゃ重要なのは、上(関与度)に上がらない限り右(好き)に行けないので、まず上に上がらなければいけないです。
コンビニには3,000種類、スーパー、ドラッグストアは2万種類、イトーヨーカドー、イオンには10万種類の商品があります。新商品も毎週大量にリリースされています。ほとんどの商品サービスは下に入っちゃってる、無風ゾーンです。
右よりも、とにかく上にどうやったら上がるのかということを考えないといけない。これがファネルマップのところにある興味の溝なのです。
無関心ゾーンは、超小さい関心があり、その関心の中にさらにすごい小さい興味というものがあります。興味は関心よりもさらに強い状態です。まず関心を持ってもらう、その上で興味を持ってもらう。これがマーケティングコミュニケーションにおいてどれだけ貴重でどれだけ大変なことかということです。
PRは関心や興味を喚起することが得意だからこそ、この話をしているのです。
PRファーストとPESOモデル
「他人ごと」から「自分ごと」へ:三つの「ごと」
興味がないのは他人ごとだからです。他人ごと、たにんごと。自分には関係がない。
超ラッキーに、そうじゃない関心を持たれているゾーンが、真ん中にある三つの「ごと」です。自分ごと、仲間ごと、世の中ごとです。
- 世の中ごと:会社の同僚も話している、友達も喋っている、帰りの電車の中でも喋っている、家族も喋っている、みんながそのことに対して興味を持って、みんながそれについて喋っている状態。
オリンピックのようなもので、全ての人が同じテーマに対して興味を持ち、会話をしている状態。これはね、デジタルとかSNSではなかなか作れないです。世の中ごとはやっぱりマスメディアしか作れないです。 - 仲間ごと:デジタルやSNSは、特定の興味関心を持ったトライブなるコミュニティの中で情報が共有されていく場という特性を持っているため、仲間ごとが得意です。
特定の界隈ではめちゃめちゃ話題になっているが、そっから一歩出たら、誰も興味がないところがそんなこと知らない、という状態。 - 自分ごと:いろんな膨大な情報の中から、「あ、これは、自分が知っておくべき、自分のための情報である」という風に選別をされた、本当にごく一部の状態。
山ガール事例に学ぶPRのムーブ作り
この自分ごとがいかに難しいかという事例として「山ガール」の話をします。
昔、山に登るというと、高齢な方々の社交場だったり、きつそう、トイレなさそう、虫が多そうなど、多くの人たちが山に登りたくありませんでした。
これを広告の力で変えることはできません。モンベルやパタゴニアが「山に登れ」と広告で打ちまくったって、興味がない人はその広告すら頭に入ってきません。
山ガールの場合は、昔いくつかのアウトドアメーカーが山でファッションショーを始めたり、ライフスタイル系の雑誌社が山系の雑誌『ランドネ』をリリースしたり、徐々に徐々に、「若い女性が今、山に向かっている」というムーブがPR的に作られていったわけです。
自分ごと化は直線的に行えるものではありません。例えば、朝の情報番組で若い女性たちが可愛らしい服を着て高尾山に登っている様子が報道され、「デトックスが」「リラックスが」と話す。へえ、そんなもんかね、と世の中ごと化が起こってきます。
そこから1ヶ月とか半年後、自分の身近な人がInstagramで山の頂上で「最高です」「気持ちいい」と投稿していたら、「え、あの人が山登ってるの?」。
「私もね、山とかマジ絶対ありえないと思ったんだけどね、これが1回登ったらすごいのよ」という話を聞くと、「何?みんな登ってるの?この人も登ってすごくいいって言ってる。ちょっと興味出てきたかも」。
これが自分ごと化の壁を超えた瞬間の例です。
自分ごと化のハードルは極めて高く、世の中ごと化や仲間ごと化の方と、あとはその遅延浸透効果とかいろんなものがストックされて、しきい値を超えたところでようやく自分ごと化をするのです。
PRファースト、アドバタイジング・セカンドの役割分担
「1回ぐらい山に登ってみてもいいかな」となり、「じゃあどの靴買おうかな」となった時、「うちの靴おしゃれですよ、かっこいいですよ、履き心地がいいですよ」みたいなのが広告の役割です。
これがPRファースト、アドバタイジング・セカンドと言っている由来です。PRで扉を開け、扉に入ってきた人に対して「私どうですか」というのが広告の役割であるということです。
扉が開かない人に「私どうですか」というのは届きません。自分ごと化のハードルを超える一つの手法がPRではないかと僕は思っています。
PESOモデル各メディアの役割と効果測定の視点
PESOモデルの復習
効果測定の前に最後にもう一度PESO(ペイド、アーンド、シェアード、オウンド)をおさらいしておきましょう。
この4つのメディア施策からの刺激が真ん中の方に刺激を与えていっています。それによってブランドのエクイティが上がることによってプレファレンスが上がり(相対的な好意度、サイコロの目が出る確率を上げる)、そのプレファレンスが上がることによって、想起が上がることで売上が上がるという構造です。
この4つは、それぞれ全然違うお薬なので、効果の検証の仕方は全然違います。
ペイドメディア(認知獲得メディア)の役割
ペイドメディアは一体何に一番強いのかというと、認知の向上に強いということです。そしてコントローラブルであるということです。
出したい商品・サービスを、出したい時期に、出したいメディアで、出したいだけ出すことができるのが広告の強みです。コントローラブルである。その代わりお金がかかります。
認知はお金で買えますので、ちゃんとしたクリエイティブをちゃんとしたターゲットにちゃんとしたメディアで広告を出稿すれば、一定割合で認知というのは向上させることができます。
ただし、広告の弱点というのは、自分で言っているのだからポジティブメッセージ100%であり、額面通りには信じませんよという風に、興味なり信頼を向上させるということには限界があるわけです。
また、認知をしてもらったとしても興味の壁を超えない限りは、意識、認識、態度変容が十分に起こらず、行動の変容まで繋がらないというところも課題にあります。
ペイドメディアは一言で言ったら認知獲得メディアです。
アーンドメディア(信頼度と自分ごと化)の役割
アーンドメディアが出ていく場所(メディア)は、ペイドメディアとほぼ同じ場所です。テレビとか新聞とか大手ニュースサイトとかコンテンツサイトとかで、情報ないしは報道として出ます。
左側(ペイド)は広告枠にお金を払って買って出しているのに対して、右側(アーンド)は同じメディアなんだけど番組の中そのものとか記事で取り上げてもらうわけです。
アーンドメディアが効くのは、第三者が取り上げているからです。自分で言ってないから信頼度が上がる。なので、PRの効果の一つは信頼度の向上です。
アーンドメディアの真の効果:検索数(自分ごと化)とUGC(仲間ごと化)
いいニュースとは、また違う側面もあります。
- 検索数(自分ごと化の促進):自分ごと化が促進されると人は何をやるかというと、ニュースを読んで「もっと知りたい」と思って、コピペして検索してみることをやります。ニュースを読んだ瞬間に自分ごと化をしたのです。
いいニュースの一つは、自分ごと化を促進をすることができるニュースであり、データとして現れるのは検索数です。 - UGC(仲間ごと化の促進):「マジかよ、これはすごい」とか「これはやばい」とか「これは面白い」という風に人の感情が揺さぶられた時、人は誰かにそれを伝えることによって、感情のアンバランスな状態を正常な状態に戻したいという心理が働くわけです。感情が動かない限り口コミはしません。
いいニュースのもう一個は仲間ごと化されることです。仲間ごと化のサインはUGCです。特にXの投稿数で、そのニュースのURLがどれだけXで投稿されているか、引用のリポストとして語られているかを見ると、仲間ごと化がされたんだなということが分かります。
ただ、自分ごと化と仲間ごと化は、いずれもただの手段であって目的ではありません。検索数やUGCが増えても、それによって目的としていた意識、認識、態度の変容が起こっていない限りは、いい意味での検索やいい意味でのUGCにはなりません。
アーンドメディアは、他の施策(ペイド、オウンド、シェアード)では比較的不得意なところをすることができます。興味を喚起する、好意度が上がる、信頼が上がるといったところは、ペイドとかオウンドとかシェアードではなかなかできないことです。
アーンドメディアが、興味喚起、好意度の向上、信頼獲得に効くのであれば、効果測定は、目的が興味喚起をしたい時、好意を上げたい時、信頼を上げたい時にPRの施策を選択し、それが達成されたのかどうかを検証すれば良い。
オウンドメディア(理解促進メディア)の役割
オウンドメディアは求められて来てもらう場所です。メディアという言葉がついていますが、基本的に来てもらう場所という意味では4つのメディアの中ではちょっと違う位置付けです。
コンテンツサイトとかウェブサイトとかランディングページには、用がある人しかいないんです。用がある人が用がある時にしか来ない場所です。用がある人というのは、「ほにゃららについてもうちょっと詳しく知りたいです」という人です。
オウンドメディアの役割は、もうちょっと詳しく知りたい人に、もうちょっと詳しく知らせてあげることです。
オウンドメディアに来る前と来た後で、知りたいと思っていたことの理解が促進できましたか?これが一番重要なビフォーアフターの指標であるはずです。理解が促進されることによって、意識や認識や態度が変わり、買いたいという購入の意向が上がるための理解促進です。
僕がオウンドメディアの効果測定で重視するのは、来る前と来た後でちゃんと理解が促進されたのか、その理解が促進されたことによって意識、認識、態度の変容が起こったのか、それによって次回購入意向が上がったのかあたりがポイントだと考えています。
シェアードメディア(興味換起と共感)の役割
シェアードメディア(SNS)も、パブリックリレーションズとパブリシティと戦略PRのように、公式アカウントやタイムライン、UGC、レビューによって大きく役割が違います。場所も違うし、薬の効き方も違うし、役割が違うんだから効果の検証の仕方だって全然違います。
シェアードメディアもPRとやはり近いです。興味がなかったものが、いきなり興味喚起される(例:映画『国宝』)。また、人と人が繋がる場所がSNSなので、共感みたいなものも生まれやすい。あとは、意向の獲得(行きたいとか買いたいとかやってみたい)にも繋がります。
シェアードメディアがここら辺を目的に行うべきであれば、ここら辺を測定し、効果が上がったかどうかを見るべきです。
アーンドとシェアードの影響力増大と相乗効果
メディアは昔はテレビ、ラジオ、新聞、雑誌しかありませんでしたが、今は4つの指標に分かれ、分散化(フラグメンテッド)しています。
昔はペイドイズキングで、ペイドの予算で認知を上げて、続きはWebでとオウンドメディアに誘導し、PRに連携してアーンドで取り上げてもらうというPOE(ペイド、オウンド、アーンド)の3点セットの時代がありました。今は右側、アーンドとシェアードの影響力が大きくなってきました。
アーンドとシェアードで意識や態度変容が起こりやすいのは、企業が直接的にコントロールすることができないからです。企業がコントロールできる情報というのは、企業にうまいこと作り込まれているものなので、「そのまま額面通り信用はできません」という警戒の状態になっているわけです。
そして、アーンドとシェアードはめちゃくちゃ相性がいいわけです。アーンドだけにこだわるのではなく、右側は両方どうやったらセットでシナジーがバキバキに効く状態にできるかを考えるべきです。
アーンドに出たらシェアードで口コミがバッと増え、そのシェアードで増えたものを一番見ている人(メディアの人間)がまたニュースにするというループで回っているのです。もはや単独で行う時代ではありません。
アーンドはシェアードとの掛け算の設計が大事です。
PR効果測定の進め方と脱却すべき指標
KPIとKGIのずれ:なぜPR測定が進まないか
実効果の測定のポイントは、ここまでの話をきっちりと皆さんのチームや部署や上長と、ある一定の共通言語で認識が揃っていれば、ここからの効果の検証は実はそこまで難しい話ではありません。
しかし、ここまでの理解が全員バラバラだから、多くの企業で「この前PRであんな施策やったけど、認知は上がったのか?売上は上がったのか?」という話が延々と繰り広げられる。本来のPRのメインの指標ではないものから始めなきゃいけないから、進んでいないのです。
よくある広報効果測定、PR測定の問題は、アウトプット的な指標で測られています。何本ニュースに出たか、リーチやインプレッションがどれぐらいか、評判がどうだったか、UGCがどうだったか、広告換算値もそうです。これらは、「だから何なの」に答えられない指標です。
いっぱいニュースに出すためにPRをしているわけでも、広告換算でROI300%になるためにやっているわけでもなく、ターゲットとなるステークホルダーの人たちの何がしかの意識や態度や認識を変えることによって、何がしかの行動の変容をするためにPRをやっているわけです。これが目的です。
それが達成されていればいいし、達成されてないんだったら、どんなにいっぱいニュースが出ていようが報道で取り上げてもらえていようが、目的達成されてないんだから、PR測定で出た結果は目標未達になるはずです。
広告換算値からの脱却
広告換算値というものは、90%ぐらいの企業の広報部では、未だに結構重要な、代表的な広報効果測定の指標として使われているんではないかと思います。
しかし、2023年6月に更新されたバルセロナ原則4.0では、「広告換算値は測定方法として使うべきではない」と明記されています。なぜなら意味がないからです。
PRは他の施策ではできないこと(興味喚起とか好意の向上とか信頼の向上)をすることにトライしています。それが一定割合でできたかもしれないのに、それをなぜ広告で換算するのか、というのは何重にも意味が不明なのです。
とにかく分かりやすいという以外のメリットが一切なく、その超分かりやすいっていうのは、超間違いの分かりやすさを示しちゃってるので二重で罪深い。広告換算値からどうやって脱却するかが、とにかく一番最初のファーストステップだと思います。
アウトプット、アウトカム、インパクトによる測定
バルセロナ原則では、アウトプット、アウトカム、インパクトを報告すべきであるとされています。
- アウトプット(KPI):今回のPR施策によって何本どこにどれぐらいのニュースが出たのか。リーチやインプレッションなど。
- アウトカム:そのアウトプットによって何が起こったのか(意識、認識、態度変容)。アウトカムは若干短期寄りです。
- インパクト:アウトプットによるアウトカムによってどんなインパクトが出たのか(中長期的な効果)。売上増加や問い合わせ増加など。
アウトプットは分かりやすく外注しやすいですが、アウトカムは意識と認識と態度が変わっている状態なので、アンケート調査しない限りは絶対に把握できないんです。そのニュースを読んでいない人と読んだ人で、どれだけの差分(リフト)が出たのかが評価なんです。
皆さんは絶望するかもしれませんが、アンケート調査じゃなきゃ分かりません。人の意識や態度や認識が変わったかどうかというのは、広告もPRもマーケティングも全部アンケート調査しない限りは分からないと思ってください。
なので、年に1回か年に2回、PR測定をやるための予算を取っておかない限りは測定できません。
講義のまとめと告知
測定の目的は評価と改善のループ
効果測定の目的は測定ではありません。測定は、やった施策が良かったのか、いまいちだったのか、最悪だったのかを評価するために行っています。評価も目的ではなく、評価をすることによって改善したいのです。
測定、評価、改善のループが回って初めて、測定している意味があるのです。多くの企業は測定はしていますが、評価が曖昧で、改善ができず、また測定をしています。測定のための測定をやっちゃっているわけです。効果測定は目的ではない。目的はこのループを回すことであると思ってください。
目標設定の重要性
成果を出すためには、このループを回すということは、限られた時間とお金、工数の中で、より良い仕事に改善をしていかなければなりません。効果の検証にどれだけの時間とお金を使ってこのサイクルを回しますか、という話を状況とすり合わせておかないと、「なんでお前こんな測定もできないの」と職務怠慢にされてしまいます。
皆さんの身は自分で守らなければいけません。多くのPRに携わっている方々は、個人やチームの努力では解決することができない変な十字架としてのKGIを処されているんです。それがPRによって認知を上げろとか、PRによって売上を上げろというものです。
上としっかりと「その測定指標で私たちを評価をしてはいけません」ということが握れてないと、ずっとこの溝は埋まらないのです。なので、共通言語で議論をする、指標を合わせる、時間軸を合わせるという作業がめちゃくちゃ重要なのです。
短期効果(費用)と中長期効果(投資/BS思考)
PRの効果測定は、KGIを測っていきましょうという話や、正しいKGIを設定しましょうという話もありますが、ニュースに出る、報道される、コンテンツとして取り上げてもらえるというのは、今期の売上だけにヒットするんじゃなくって、その持続的な活動がミルフィーユのように層をなしてストックされて、それによってブランド価値が上がります。来年再来年、皆さんの商品を買ってくれるところに一役買っているはずなのです。
しかし、効果の検証というのは、「今期あなたは何に時間とお金を使って、どれだけのアウトプットとインパクトを出したんですか」ということで測られがちです。
PRというのは、短期に今期やったことが今期に効いているのは、多分僕の実感値としては1、2割で、残りの8割ぐらいの今期出たニュースの効果というのは、来年度以降に繰り越されているんです。
皆さんの会社が使っているROIという言葉は、ほとんどがROC(リターンオンコスト)の意味合いで使われています。今期いくら使ってどんだけ成果出したの、というPL思考に終始しちゃっている。
本来は、今年がんばったPRの施策が来期再来期にかけてどのようなストックとしての効果を出したのか、積み上げたのか、ブランドエクイティを上げたのか、というBS(バランスシート)的な測定をしていかないと、過小評価をずっとし続けることになります。
KGIとKPIを分け、さらに短期と中長期で2つに分けるということをやらないと、PRの価値はすごく大きいのに、いつまで経ってもずっと過小評価がされているというところに強い課題を感じています。
まとめと告知
広義のPR(コーポレートコミュニケーション、売上を目的としない全ステークホルダーとの良好な関係構築)の施策と、狭義のPR(マーケティングよりのパブリシティと戦略PR)は全部違います。PESOの中でも全部違いました。
PRの目的は色々あるでしょうが、主にPESOの中での役割分担で考えると、興味喚起、好意度の向上、信頼性の向上、ここがPRの真骨頂なんじゃないかと思っています。
KGIとKPIを分ける、短期と中長期も分ける、というところを是非復習をしながら、議論を開始していただければと思います。
今日の講義はこれにて終了です。マーケターのためのPRスキル強化講座はこれで終了です。復習の詳細は書籍やYouTubeでも参照できます。
次のシリーズ講座は、来年、費用対効果と投資対効果について徹底的にこの界隈に詳しい一流の講師の方々に来ていただいて、連続講座を今仕込んでいる最中です。広告、PR、マーケティング全て費用と投資の両面からしっかり考えるということが超重要なので、興味がある方は是非受けてください。


