デジタルマーケティング連続講座⑧ CRMの基本 〜顧客起点のマーケティング戦略〜

2025年2月6日

本講座のアーカイブ動画および資料の公開期間は終了いたしました。講座の内容については、講座書き起こしをご覧ください。

デジタルマーケティングにおけるCRMの位置付け

※このテキストは『デジタルマーケティング連続講座⑧ CRMの基本 〜顧客起点のマーケティング戦略〜』の書き起こしです。文中の登壇者名表記は敬称略。

講座の折り返しと本日のテーマ

池田:皆さん、こんばんは。今週も始まりました、毎週木曜日のデジタルマーケティング連続講座でございます。皆さん時間通りにお集まりいただきありがとうございます。今回は2月6日、8回目です。今日で折り返しですね。16回のうちの今日が折り返しということで、前回のコンテンツマーケティングから具体のお話に入っておりますが、今日はCRMの回になります。

CRMと言うと、これだけ有名で多くの企業が導入している概念であり手法なんですが、良書が本当に少なくてですね。AmazonでCRMと検索していただくと出てくる本の冊数がめちゃくちゃ少ないんです。

僕も古くからあるこの本で勉強させていただいたんですが、数少ないCRMの本の中でも、基礎的なところから実践のところまで1冊で丸ごと、きちっとまとめていただいている本はなかなかないんじゃないかと思います。

ということで、今回のデジタルマーケティング連続講座のCRMの回はこの方をおいて他にいないだろうということで、株式会社スマートウィル代表取締役社長の坂本雅志さんにお越しいただいております。今日でこのCRMをなんとなく分かっているつもりでも、改めてCRMの奥深いところだったり思い違いがないかどうかの確認・復習も含めて学んでいってください。

マーケティングの全体像とCRM

さて、いつもお話ししていることですが、マーケティングはとにかく領域・幅が広くて1個1個の奥行きが深いので、全体を体系的に理解をして勉強していかないとすぐさま道に迷ってしまいます。最近はYouTubeだったりSNSとかで断片的な短編動画みたいなものがめちゃくちゃ多くなってきているので、つまみ食い的に学習をしているふりになってしまっているのが一番危ないです。

皆さんが学ぶ理由は、学ぶために学んでいるのではなく、とにかく実践の場で応用力を持って実務で使える状態になるためです。実務では教科書通りにいかないわけですから応用しなきゃいけないわけですが、立体的な知識を身につけるためには、とにもかくにも「面」として全体を俯瞰して、体系立てて理解をしていないとなかなか現場では応用ができません。

ただ個人でこの点を学んで線としてつなげて面として理解をしていくのは、なかなか(独学では)しんどいので、MARPSが面を示してその中の線、そしてこの線の中のこの点を学んでいるんですよ、という全体感を把握しながら是非学んでいってください。

デジタルマーケティング連続講座ですが、いつも言っている通り「デジタル時代のマーケティング」を学ぶという思考を常に忘れないようにしてください。以前はリアルがあってデジタルができて、両方やっていって別々じゃいけてないから融合させていこうね、OMOだよねみたいな話をしているわけですが、今日日すべてはもうデジタル化をしているわけですから、デジタル化された世の中の中にリアルの場所・空間・手法があるということです。

なので、デジタルの手法を駆使して何かマーケティングをやっていこうっていう時代はもう一巡をしていますので、ありとあらゆるものがデジタル化した中で、どのように今までやっていたマーケティングをデジタル時代に適合させていくのかということを是非考えていってください。

このマーケティングコミュニケーションのファネルマップで全体図を示しています。このピンク色に塗っているところがこのデジタルマーケティング連続講座の全16回で学んでいただくポイントになっています。今日はこの右下のところで赤く塗りつぶしているところがCRMに該当しています。

マーケティングはいつも言っている通り2つあります。このファネルの左側がプリマーケティング、お客様に買っていただくまでのマーケティングです。トライアル顧客にトライアル購入をしていただくと言い換えてもいいかもしれません。

ただ世の中の多くの企業の売上の大半というのは既存顧客によるリピート売上によって形成されているわけですから、昔までの「新規のお客さんに新規の商品を買っていただくまで」の左側のプリマーケティングだけじゃダメだよねということで、およそ2000年ぐらい、1990年代の後半ぐらいからデータベースマーケティングとかOne to OneマーケティングとかCRMの概念が出てきたわけですね。

右側、ダブルファネルの右側です。これがポストマーケティング、お客様に商品を買っていただいてからのマーケティングです。買ってもらうまでのマーケティングと買ってもらってからのマーケティングで、今日は右下の箱のところにCRMって書いてありますが、右側全体の思想みたいなところも復習をしていってください。

講師紹介とCRMの基本定義

講師・坂本雅志氏の紹介

では坂本さんご登場ください。こんばんは、よろしくお願いいたします。

坂本:よろしくお願いします。今日はMARPSの第8回ということで、デジタルマーケティング連続講座「CRMの基本 〜顧客起点のマーケティング戦略〜」というタイトルでお話しさせていただきます。

簡単にアジェンダなんですが、まず私が何者かというのも簡単にご紹介させていただいた後に、導入編、そして第1編から第4編まで、顧客情報の収集・管理・分析・活用という、これを我々CRMの基本という風に呼んでおりますけれども、そのようなお話を少し解説していって、最後まとめと質疑応答の時間とさせていただこうと考えております。

まず私の紹介ですが、私は坂本と申します。大学を卒業した後に保険会社の方で12年2ヶ月、リテールマーケティング戦略の担当をずっとしてきたわけであります。東京の丸の内の本社の方でお仕事をさせていただいておりました。2005年に企業買収を主軸とする投資会社の方に参画いたしまして、そこでマーケティングの戦略担当として様々な業界の投資先に対してのバリューアップのお仕事をさせていただきました。

その後、テレマーケティングのベルシステム24というリーディングカンパニーがございますが、そちらに落下傘的に参画させていただきまして、その中でCOOまでやらせていただいたという貴重な経験をさせていただきました。その後2010年に独立いたしまして、スマートウィルを設立して現在に至っております。

このような書籍を出版させていただいていたり、青山学院大学の大学院ビジネススクールでCRM戦略という講義を通算13年やっています。来年もやることになってますので、累計430名ぐらいの履修生を輩出しているという状況です。

そんな私が率いる株式会社スマートウィルですが、基本的にはビジネス戦略コンサルティング会社として、小売・サービス関連の大手企業の皆様にサービスを提供してきたというようなことでございます。

2010年4月に起業して、今年で丸15年、16年に入っていこうという会社で、20名ほどの少数精鋭のメンバーでお仕事させていただいています。一部システム開発なども展開しており、ISMSの認証取得なども行っており、ビジネス戦略コンサルティングと併せてデジタルソリューションの提供開発をお仕事とさせていただいています。

主なクライアントさんが非常にブランド力とか信頼度の高い小売・サービス大手企業様に支えていただいています。多くはファッション、ジュエリーのジャンルが多いです。百貨店の中に入ってるようなブランドが我々のクライアントさんであることが非常に多くなっております。ファッション、ジュエリーや化粧品のジャンルですね。

そしてライフスタイル系で最近ちょっと増えてきているのが、ホテルですとかゴルフ場といったようなところもクライアントさんとしてお迎えさせていただいております。

CRMの定義とゴール

早速導入編からいきたいと思います。今回は「CRMの基本」というテーマでございますが、CRMにおいて様々な課題に皆さんも直面していらっしゃるかもしれません。

例えば成果が出るのに結構時間がかかるですとか、なかなかその成果が見えにくい、はたまた投資対効果が測れないじゃないかとか、すべき範囲が結構広くて手が回らないんだよねとか、投資対効果があまり良くないんじゃないか、何から手をつけていいかもわからないという風なことも結構お伺いします。

これらは私どもスマートウィル社が様々なクライアントさんや見込み客とお話をさせていただいている中で、色々とこうしたお話に直面してきたということでございます。

まず基本的なお話もしていきたいなと思いますが、「顧客」って言うじゃないですか。大きく2つに分類できるということで、一つはどこのどなたかが分からない「一般顧客」で、もう一つがどこのどなたかが識別することができる「顧客」。

これどういうことかと言うと、例えばペットボトルのお水をコンビニエンスストアで100円現金で出して買って帰っていく。そうするともはやそのお客さん、どこのどなたかは分からないですよね。どこのどなたかが分かるということはすごく我々にとっては大事です。

「識別できる状態」と私たちはよく申し上げています。識別できる状態っていうのはお客様とのインタラクティブ性というか、何らかの連絡先が分かっている関係、そういう状態になっているというのが、そのお客様、顧客という風な言い方をします。

私どもが提唱しているCRMの定義なんですが、CRMとは「顧客を適切に識別し、ターゲットとする顧客の満足度と企業収益、その双方を高めるための経営における選択と集中の仕組み」であります。

その定義の方法論として2つございまして、まずは「戦略としてのCRMの定義」です。ここに「企業に利益をもたらす顧客との長期的な関係構築・維持を担う顧客関係戦略」と申し上げてますが、売上と経費、その差が利益なわけですけれども、この売上の中身を分解していけば、識別できる状態にあるか、先ほど申し上げたような現金で物を買って帰ってしまったという風なお客さんは識別できない状態ですから、いかにして識別できる状態にしていくかというものがCRMの始まりとなっていきます。

その中でもですね、識別できれば「どのお客さんが2回買ってくれているのか」「あ、こんなものまで買ってくれている」みたいなことが分かるようになっていくわけですね。

そういった中で「優良顧客」というお客様を見出していく。その優良顧客に対して様々な経営資源(リソース)を優先的にシフトしていきましょう。これがCRMで展開していくべきお話となるわけであります。

じゃあ何をすればいいのかと言うと、「プロセスとしてのCRMの定義」としては、私は常に2つのことをやればいいんですという話をします。

それは一つは「顧客を識別する」ということで、もう一つが「識別した顧客のリレーションの構築」ですね。この2つをやればいいという風なお話を申し上げます。

もちろんそんなに簡単な話じゃなくて、顧客データをまず集めないといけない、しっかりと管理する。管理したらそちらはしっかりと分析を施し、その上でうまく活用していく。「収集・管理・分析・活用、これがCRMの基本です」と先ほども申し上げましたけども、こういったことを行っていく一つのゴールとしては「優良顧客の明確化」というものがあります。

収集・管理・分析・活用をしていく中で、皆さんにとっての「優良顧客」ってどんなお客さんなんだろうか?ということを明確化していくのが、まず顧客識別における一つのゴールになります。

それが明確化できれば、アジャストした形で顧客接点を設計・管理していけば良いですし、その上で効率的なプロモーションを描いていく、これをグルグル回していくことでLTV(ライフタイムバリュー)が最大化していくわけです。

顧客情報の収集と管理

1顧客1IDの重要性

第1編、顧客情報の収集について少し深掘りしてお話をしていきたいと思います。

まず顧客の捉え方ですが、私がずっと使い続けている「1顧客1ID」という言葉があります。これは何かと言えば、例えばあるアパレルブランドのケースなどで取り上げれば、池袋店でレディースの商品を8,000円お買い上げしているAさんと、渋谷店でメンズの商品を5,000円購入されていらっしゃるBさんと、オンラインストアで子供用品含めて1万5,000円ぐらい買われているCさんみたいな形が、実はこれ全部同じ方であると。

そんなのできているの当たり前じゃんていう風に思われる方もいらっしゃると思いますが、まだまだ色々とお話をさせていただいてると、そこまで至ってないケースをお持ちの会社も結構あるんですね。

1人の顧客を1つのIDでしっかりと管理していくということが非常に大事です。そうしていけば、VIP、優良顧客、リピート顧客、初回顧客というものがそれぞれプロットされていたAさん、Bさん、Cさんが、実は全員Aさんでしたという形になって、結果として実はこのAさんは優良顧客だね、我がブランドにとっては、となっていくことが見て取れるわけなのであります。

そういった中で顧客識別の概念として、ピラミッドとしては「商圏一般居住者」から「ご来店された方」、「ご購入された方」、その中からどれだけ識別できるのか、その中でどれくらい「優良なお客様」なのかということになります。

これはリテールの話ですが、サービス業であっても言葉が変わってもレイヤーとしては同じような構造になります。

その中で、どのレベルの顧客を把握することができるのか、どのようにその顧客を把握することができるのか、企業と顧客の関係、その度合いを識別して把握していきましょうということです。

購入顧客をいかに把握できるか。1顧客1ID化ができている前提で、例えばいつ・どこで買ったり利用されたりしたのか?どこからいらっしゃって、どのように買われたり利用されたりしたのか?どのような商品を買われたのか?誰のために買われたのか?どれくらいの量を買われたのか?

こういった購買行動の5W1Hといった要素をどれくらい把握できるのかが非常に重要です。

識別できる状態を作るための対価

識別できる状態っていうのは、企業と顧客との間でのインタラクティブ性があるっていう話ですねという風なことを冒頭申し上げましたけども、お客さんから企業にっていう話で言うと、そのお客さんのプロフィール情報の提供が行われるわけです。

お名前、住所、電話番号、メールアドレスといった、性別だったり場合によっては年収を聞かれたりするようなこともあるかもしれません。単に何か物を買ってその対価をお渡しして、これで取引関係は一旦終了してるわけです。

それを超えてさらにお客様の情報をいただくっていう風な別の取引関係を誕生させないと顧客識別までいかないので、一方でじゃあ顧客からそのように情報提供を受けたら、企業からは顧客に対して何らかの還元、特典を還元するわけですね。

その特典というのが経済的な還元であったり、非経済的な還元であったり、それは様々なブランドや会社で、仮にメンバーシッププログラムであればそういったことの中で、ベネフィットを提供していく、リワードを提供していくみたいなことが行われてるわけです。

識別手段としては、ポイントカードであったり、クレジットカードやインターネット、メールアドレス、携帯メールアドレス、SNSのアカウントとか様々なものがございます。

大事なのは、その顧客情報と商品なり何らかのサービスを利用している、お買い上げ情報だったり行動情報というものが紐付けられることが重要なんですよね。

よくある話としては「顧客名簿はあります。買い上げのPOSデータもあります。しかし紐づけられていません。」といったことがあります。そうすると分析にたどり着くことは難しいわけです。

さらに企業から顧客に対して情報を伝えられる関係性がある、宛先がわかっているということが非常に重要です。

関係度合いの基準、例えばそのお客さんは新規なのか既存なのか、上得意客なのか、年間どれくらいお買い上げいただいているのか、そういった関係の度合いに応じて情報提供や顧客対応を差別化していくわけです。よくあるゴールドステージ、シルバーステージ、ブロンズステージなどと区分けされているメンバーシッププログラムを皆さん思い浮かべられると思います。

したがって、顧客を特定し、企業の戦略への反応に応じて区分していくことが顧客の識別においては重要です。

まとめると、現実的には、企業がカスタマーカードなどによって会員登録を促し、購入客から顧客を区別し、企業から情報発信・対応可能な対象顧客とすること。さらにその関係度合いによって、企業からの情報発信や対応を区別していくことが、顧客の識別であるといえます。

顧客を識別するにあたって、顧客データを集めていかなきゃいけないのですが、集めていくにあたって様々な障壁があります。例えば、組織構造が縦割りになってしまっていて、データがなかなか連結されない企業があるという話はよく伺います。

部門ごとに分断されていて、なかなか情報の障壁を乗り越えていけないがゆえに、データ統合に時間を費やしてしまうといったことですね。しかし、これが一元化できてこそ適切なコミュニケーションを取っていくことができるわけです。

データクレンジングの必要性

顧客情報を収集して管理する、というところにおいて、第2編に入っていきますが「データクレンジング」というのがありますね。情報をいかにして精査していくかということがやっぱり必要になっていきます。

例えば企業名だったり担当者名、それぞれの項目でいろんな揺らぎがありますね。間にブランクが入ってしまってるとか、前株・後株の括弧書きだったり、住所の管理の仕方もハイフンで区切っているものと何丁目何番地で書いてるものと、様々なデータの揺らぎがあります。

その辺をクレンジングして精査していかないと分析も始まっていかないので、我々の方でもデータクレンジングの単発案件なんかもよくご相談いただいて受けさせていただくことも多いです。

ステップ1として重要なデータを選定する。クレンジングを実行して整理し直して標準化していく。それを定期的にアップデートしていくっていう風なことがすごく大事になっていきます。

メリットとしては生産性が上がり、データ分析精度の向上が行われ、それによって意思決定力が上がってコストも下がるというような効果も出るようになります。

顧客構造の理解と分析手法

筋肉質な顧客構造を目指して

次に顧客構造の理解についてお話を進めていきたいのですが、よく聞く話としては「新客獲得偏重型」になっていくと、だんだんこの顧客構造のピラミッドが初回顧客がどんどん増えていってしまうという風な、のっぺりな三角形になりがちになっていきます。

それをいかにしてきちっとリピートして優良顧客化して、必要によってはVIP化していくっていう風な「筋肉質な顧客構造」にいかにしていくことができるかということが非常に重要でございます。

CRM戦略を描いていくにあたってのゴールイメージとしては、こうした筋肉質の三角形です。リピート顧客が何らかの形での優良顧客になるためには、購買の単価や来店の回数を増やさないといけない。必要に応じてVIPプログラムによって顧客メリットの創造を行っていきます。

同時に「離反」をしていきます、顧客というものは。何もしなかったら大体我々がデータで見ていると平均50%は離脱します。それはVIPであっても離脱するので、離反防止というものはすごく重要です。

仮にそのVIP顧客のインパクトが初回顧客やランクの低いあたりの顧客の100倍ぐらい違うケースって結構あるので、1人を守ることでその100倍の効果が生まれるみたいなことも簡単に起きてますんでね。繰り返しますが、離反防止は重要です。

デシル分析とパレートの法則

顧客構造をどうやって理解していくかが非常に重要なわけですが、代表的な方法論としては、デシル分析/デシル移動分析/顧客離反分析/RFM分析といったものがあります。CRMといえばRFMとよく聞くと思います。

ただ、顧客構造を理解する前に押さえておきたいのは、「どのデータを対象にするのか?」です。1年データか、2年間か、「うちは足が長いビジネスなので5年、10年は必要」といったことを決めなければなりません。

分析軸としては、「表頭(ひょうとう)」と「表側(ひょうそく)」で考えるっていうのを私はよくお勧めしています。マトリクスシートに表現して考えていくと非常に分かりやすく整理されるのでお勧めしています。

まずデシル分析ですが、これはデシリットルと同じ語源で「10等分にする」という意味です。全ての顧客を購入金額の高い順に10等分し、その売上構成比を分析する手法であります。

例えば上位10%のお客さんが売上の何%に該当するのか、「上位20%の顧客で全売上の80%を占めている」みたいな言い方を聞いたことがありませんか?これがいわゆるパレートの法則とかニパチの法則と言われるようなものですね。

これをリテールの世界で置き換えていくと、実にドンピシャで当てはまっているなと。必ず20と80ということではありませんが、少ない要素で多くの売上を占めているっていう風な構造にはほぼなっているという風なことです。

(クイズセクション:スーパーマーケットの事例)
ある企業のCRMの姿なんですが、デシル1から10まで1万930人いらっしゃる顧客を10等分すると、上位10%(デシル1)で売上構成比が50%を占めている。来店数や客単価などのデータを見て、この企業はどんな業種だと思いますか?。

正解はAのスーパーマーケットです。デシル1から3までで大体80%くらいの構成比になっています。年間平均購買金額なんかを見ていると、デシル1の売上の倍率が2倍、3倍ぐらいある。

ただ、会員のほとんどのお客様が、客単価があまり変わってないですね。来店の回数にばらつきがあります。なので客単価は変わらないが来店回数によって違いがデシル1〜10の上位概念になっていくというようなことかなと思います。

この会社の課題は、識別できる売上比率がまだ6割程度にとどまっているということなので、改善していくべきポイントがいくつかあるのかなと思っています。

この企業は、食品を中心とした地方の中堅スーパーマーケットで、ポイントカードに比較的早くから取り組まれていて、顧客情報は5年以上保有しておられて、地元の老舗としてチェーン展開していたのですが、競合他社との競争激化による売上確保のための特売とポイント合戦に陥り、利益の低下に苦しんでいる…といった数値をデフォルメしたものです。

ここでのメッセージは、皆さんが様々な企業に属していると思いますので、こういったデシル分析を見て売上構成比などを確認して、どのくらいのポーションでどのくらいのお客さんが占めているのか、といったことを分解していく作業をすることで分かることがたくさんあると思います。ぜひやってみてください。

様々な分析手法

続いてデシル移動分析というものがあります。前年度上位顧客だったお客様が今年度どこに移動したのかを見える化していくものです。

例えば昨年度最優良だったお客様が今年度は優良ランクに落ちているのが320名いらっしゃる。じゃあこの320名の人にどういうアプローチをするの?みたいな使い方になっていくわけです。

あとは顧客離反分析。前年度から今年度の中で離反の率が上がっていく。例えば離反率が25%っていうことは、4年に1回一巡してしまうっていうことなので、顧客寿命が4年ぐらいみたいなイメージになるわけであります。いかに食い止めることができるのかということが非常に重要になっていくという概念になります。

あと非常にオーソドックスなRFM分析というものがあります。CRMといえばRFMというぐらいですね。RはRecency(最新の購買日からの経過期間)、FはFrequency(頻度)、MはMonetary(累計の金額)という風なものになっています。

これを5段階だったり3段階だったり評価ランクをつけて顧客をプロットしていくという概念です。例えばある百貨店の事例ですが、縦軸にRecency(R)、横軸にFrequency(F)を取って、直近購入かつ頻度が高い象限のお客様をロイヤル顧客とする。

この中で一斉にDMを打つとどこが一番戻ってくるかというと、統計的には間違いなくこのロイヤル顧客が戻ってきます。離反してしまった層はあまり戻ってこないですね。何が言いたいかというと、お客さんが離反したらもう終わりなんです。ですから離反する前に手立てを打つべきなんですね。

真の優良顧客の定義と戦略

戦略的指標の導入

上位顧客を優良顧客と捉えて果たして本当にいいんですか?という疑問もあります。私が常々提唱しているのは、企業にとっての優良顧客っていうのは企業の戦略を反映した指標が必要なんです。

企業戦略への共鳴、例えば戦略商品を購入するとか、複数カテゴリーを購入したり利用したりしてくれる、そういったことが大事なんだと思います。

事例を紹介しましょう。ある化粧品の会社のケースです。化粧品はメイクアップとフレグランスとスキンケア、大きくカテゴリー3つに分けられます。

フレグランスとメイクアップに関してはどこで買ったか分かるそうですが、スキンケアまではさすがに分からない。なので「スキンケアを買うお客様を大事にする」という風なことを顧客セグメンテーションとしてよくやっているケースがあります。

年間購入金額とか回数だけでなく、プラス「カテゴリー区分」という概念で顧客セグメンテーションを行ったりするわけです。

また、あるベージュのコートで有名なイタリアのブランドさんの場合。ベージュのコートを最初に買うお客さんって、実はリピートすることがないんです。

なので一番優良顧客になってくれるお客さんっていうのは、最初のタイミングでニットとかカットソーとかっていう風な、ブランドアイコニックではないけれども良質なものを手にとって2〜3点買って帰るお客さんが、1年2年経つと50万、100万、200万のお客さんに育っていくみたいな構造になっていたりします。

チョコレートの会社の事例もあります。ここは当初分析しても、なかなか特徴的なものが現れてこなかったんですね。ただ商品ラインナップを観察していくと、誰かにあげるための商品ラインナップが多いんですね。

そこでMDの方とご相談させていただいて、カテゴリー区分として誰かにあげる用と自分用とにフラグを付けて分析してみたところ、自分用商品の購入者のロイヤリティがすごく高いっていう結果が出たんです。コロナ禍も相まって、「自分のため」みたいなプロモーションをやられて非常に成功したというケースもあります。

このように、優良顧客をどのように考えていくかは、会社によって違います。真の優良顧客はどういうお客さんなのかを見つけるのが非常に重要ということです。

RFM+αのメソッド

よく見られる顧客ランクとして、いくら以上お買い上げでAランク、Bランクとするのは実に簡単にできる。シンプルで分かりやすいですが、一度にたくさん買っていつ来るか分からないお客さんも優良顧客と捉えてしまったり、離反の傾向が捉えられないというデメリットがあります。
なので、戦略との関連性でプラスアルファの軸で考えることが必要です。

ゆえに上位顧客から優良顧客にたどり着いていくプロセスとしては、先ほどの年間いくら以上買っていただけることに加えて、あるいは複数カテゴリ部門で購入いただいている、新商品をいち早く購入していただく、あるいは各社の持っている戦略商品を積極的に買っていただいているなど、色々な軸を経て決定していくというイメージになります。

真の優良顧客を導出する我が社スマートウィルのメソッドとして「RFM+α」というメソッドを持っています。

徹底した3C分析(Customer、Company、Competitor)を行う中で、通常のRFMでの顧客定義からプラスアルファを導出していく。それが新しい顧客の定義として、その先にある優良顧客がどんなお客さんなのかということが分かっていけば、それに適合した会員プログラムや顧客接点を描いていくことにつながっていくわけです。

宿泊業界におけるCRM

事例として、GoogleやAmazonをはじめとするGAFAは御存知の通りですが、今をときめく優良企業は皆さんCRMをとても重視しています。

例えば巨大ホテルグループであるマリオット・グループのCRMプログラム、マリオットBonvoyがあります。これは7,000以上のホテルが参加する世界最大級のプログラムで、アプリなどを活用して会員の顧客情報を分析し、そのランクに基づいてカスタマーサービスを展開しています。
私がとても感心するのは、マリオットBonvoyの会員制度があるがゆえに、76%のお客様がそこから宿泊予約をされるそうです。

一方、日本の宿泊施設の直接予約率は30%ちょっとなのです。ほとんどが旅行代理店やOTA(オンライントラベルエージェンシー)からの予約になっているのです。宿泊施設にとってCRMを展開していくことは自社予約率を高めることが、収益性を高めていくことにつながりやすい概念なわけです。

目黒にあるホテル雅叙園東京さんの事例では、優良顧客をどう定義付けていったかというと、全室スイートの1泊10万円を下らないホテルとして、その価値を正しく理解してくれる顧客、具体的には「記念日にご利用いただく」という形に変換して展開されました。

「MIYABI PASSPORT」というものを展開されて非常にうまくいっており、今年から「アニバーサリーホテル」というタグラインで展開するようになったぐらい成功した事例であります。

このホテル雅叙園東京さんには長くお世話になっていて、伴走しながら様々な課題を解決していくことができた事例です。ホワイトペーパーにもなっているので、ご興味ある方はうちのホームページからご覧ください。

クライアンテリングと顧客情報の活用

CRMとクライアンテリングの相互関係

最後に、顧客情報の活用について。CRM効果を発揮しやすい業態があります。

ロイヤリティの高低という概念と価格や頻度の高低という指標で見た時に、ロイヤリティが高い業態では期待売上や購入頻度を上げるCRMが必要ですし、価格・頻度が高いのであれば、密なコミュニケーションでロイヤリティを上げるCRMが必要なわけです。

そこに「真のラグジュアリー」や維持・拡大するCRMというものがあるわけです。

私たちが最近提唱しているのが「クライアンテリング」という概念です。これは小売・サービス業などの企業が顧客との関係を維持していくための戦略的なアプローチで、接客の技術として取り上げられていますが、私たちはクライアンテリングとCRMには非常に強い相補的な関係があると考えています。

顧客を見極めて多彩な個別対応を実施するために顧客情報を主に現場のスタッフが収集していく。

それをCRM的に管理・分析して顧客の行動パターンや思考性を理解する。

それを元にクライアンテリングに基づいた、顧客に寄り添った提案やサービスを提供し、さらにフィードバックを得て改善していく。

このループが高度化していくことによって的確なマーケティング戦略にたどり着くことができるわけなので、1to1的なことが柔軟にできていく。

なので、クライアンテリングとCRMの相補的な関係が、これからのCRMの基本であると最近常々申し上げています。

たどり着く世界としては「あなたのブランドにとって、真の優良顧客は誰なんでしょうか?」その着地イメージとしては「ああ、このブランドは私のことをよく理解してくれているな」となることが重要です。それを成し遂げるために必要なのがクライアンテリングとCRMなのです。

ザ・リッツ・カールトンの事例

先行事例としてザ・リッツ・カールトンがあります。ホテル満足度ランキングの最も宿泊費が高いホテルの部門で、何年も連続して上位を占めています。

彼らのターゲット顧客は企業経営者や外国人ビジネスパーソンなどの高所得層で、CSの原点として最高水準のサービスを受けることができる、顧客の気持ちを先読みして行動する、マニュアル対応ではなく状況や顧客に応じて柔軟に対応する、ということがあります。

有名なのが、ザ・リッツ・カールトン・ミスティークと言って、顧客側も予想していなかったようなサービスを展開しています。

顧客接点としては、従業員の能力に支えられたパーソナライズ・サービスということで、商品・空間が豪華で清潔なのはもちろんなのですが、接客としてクレドによる価値観の共有をしています。

特徴的なのがタイミングの良いサービスを実践するための権限委譲ですね。1日に2000ドルまでの決裁権限を持つとか。例えば大阪のリッツ・カールトンに泊まっていたあるお偉いさんが、東京での講演会の原稿を忘れてしまった時に、スタッフが新幹線に乗って追いかけてお渡ししたみたいな話があります。

従業員の裁量が大きいことで、やる気がサービス品質を大きく左右することになりますし、そういった活動に対する表彰プログラムも整備され、教育・研修なども行われています。評価や報酬は、顧客からの感謝や同僚からの感謝といった社会的な報酬に満足する、という概念付けになっています。

これがクレドです。こういったものを大事に考えているということで、有名なのが「We are Ladies and Gentleman, Serving Ladies and Gentleman(紳士・淑女にサービスをする私たちもまた紳士・淑女である)」という言葉です。このような考え方でクライアンテリングを実践していらっしゃるわけです。

これを支えているのが「ゲスト・プレファレンス・パッド」と呼ばれるメモです。このメモを全従業員が持ち、お客様の特徴を克明に記録していっているのです。これが、全てのコンタクトポイントの情報収集の窓口となっているわけです。

ドアマンやベルボーイ、フロントスタッフからハウスキーパー、レストラン、バンケット他さまざまなセクションの皆さんがプレファレンス・パッドを持っていて、集めたお客様の情報を回収箱に投函していきます。

投函された情報をゲスト・レコグニションが担当を選別して入力し、PMS(プロパティ・マネジメント・システム)やCRMに「これは東京限定で良い」「これはグローバルで共有する」といった形で仕分けながら情報を循環させているのです。

全てのコンタクトポイントが情報収集の窓口になっていて、お客様の特徴や好みを記録し、それをシステムに格納して全世界で共有する。これがハイタッチサービスの源泉となっているわけです。現場のスタッフはサービスを提供する人であると同時にマーケターでもあるという意識が非常に重要です。

顧客属性や特性に合わせた最適なチャネルを配置する、ホテルであれば従業員の方々あるいは設備もそうです。そして顧客の情報収集から購買やその後のフォローまでの対応を管理していく。そのデータをちゃんと一元管理して、組織として活用していく。

それがシームレスな顧客対応を生んで顧客のロイヤリティが上がっていくと。実に仕組み化されているわけです。

なので、もちろん一人ひとりの従業員の優れたパフォーマンスによって立つところも大きいのですが、それを支えるための仕組みを整えているということが彼らの強みの源泉なわけです。

CRMの成果と評価指標

顧客の声と成果

コトラーさんの顧客開発プロセスについてですが、今回は時間がないため割愛していきます。何が言いたかったかと言うと、お客様はだんだん離脱していきます。離脱していく前に色々とやることがありますと。

離反率を下げるために「顧客の声を聞く」ことが重要です。不満を感じたお客さんの95%は何も言わずに買うのをやめるそうです。なので顧客が苦情を申し立てやすい仕組みが必要です。
苦情を申し立てた顧客のうち、6〜7割は不満が解決されると再び取引を行い、すぐに解決されたと感じるとその確率は95%になります。

さらにそれが満足できるかたちで解決すると、顧客は企業の対応の良さを平均5人に話すと言われています。

CRMの成果として、ターゲット配信の来店購買率58%をマークした事例や、買回り率120%アップ、リピート率30%アップ(50%→80%)といった事例があります。上手に取り組んでいけば必ず成果が出せるのがCRMの特性なんです。対前年比プラス30%みたいなことは確実に生み出すことが可能です。

LTVとKPI

LTV(ライフタイムバリュー)の最大化もCRMの目指すゴールですが、個々の顧客単位の集計値となっているので、直接的にKPIとして用いるには少し間接的です。LTVをもとにセグメンテーションを行って施策に活用するのが効果的かと思います。

CRM活動においての指標としては、リピート率、再購買・再利用率、優良顧客維持拡大率、キャプチャ率(会員獲得数などの捕捉率)などを考えていくべきです。

ロイヤリティが高いブランドでは、4回買ったお客さんが5回、5回買ったお客さんが6回買う確率は90%を超えていきます。そういう時のリピート率はF2転換率(初回購入した顧客のうち、2回目の購入に至った顧客の割合)として見るとだいたい50%を超えます。

なのでリピート率や再購買・再利用率などの数値を見ていけば、どこから手を打てばいいかというのがすぐわかります。

あとは優良顧客の維持拡大率ですね。実際にどういった顧客を優良顧客として、その維持拡大率をどんな風に追っていくのかということが大事です。

キャプチャ率は最初にお話した通り、顧客のインタラクティブ性を獲得できるということです。例えば会員プログラムをやっていれば会員獲得数ですし、お客様になんらかのメンバーシップをやっていれば、その登録率になります。

これはいわばCRMのスタートラインに立つためのものなので、キャプチャ率は追いかけるべき指標かなと思います。

まとめ

顧客情報の収集・管理・分析・活用というCRMの基本に、クライアンテリングという概念も加えた形で、顧客を理解し、顧客との多彩な接点を創出し、その真のニーズを把握してロイヤリティを醸成して収益貢献につなげていくということが、CRMができることであります。

成功条件としては、ビジネスにとっての優良顧客とはどんなお客さんなのかを見出すこと優良顧客が満足する企業からの提供価値はどうあるべきなのかを考え続けること。そしてデータ分析を行い、洞察力を磨いていくこと。これらを解決する方策の一つとして、私のスマートウィルに是非ご相談いただければと思います。

Q&A

池田:ありがとうございます。時間もぴったりで完璧でした。いやあ、やっぱり改めてこうやって網羅的に通貫して聞くと面白いし整理されるし奥深いですよね。

質問いくつかあるんですが、CRMという言葉が一般的になる前、1995年の『One to Oneマーケティング』や1998年の『顧客識別マーケティング』などがありましたが、スマートウィルさんの設立当時(2010年頃)はデータをいっぱい貯めて分析しようとするものの、うまくいかないケースをよく聞きました。

最近はどうですか?改善されてきているのか、まだまだなのか。

坂本:随分と整備されてきている印象はありますね。私が起業したばっかりの頃は「なんだお前CRM屋か」って結構言われた記憶があります。一時システムベンダーさんを中心に高額なシステムを入れたけど成果を生まないじゃないかということで、あまり役に立たないものみたいなイメージを持たれていましたが、そこからすると随分と今、隔世の感があるかなという感じはしますね。

池田:もうCRMなんてうちは関係ないんだなんてお客さんもういないですよね。やっていけないっていうぐらい当たり前に取り組まなきゃいけないものになりましたもんね。

次の質問なんですが、成果が出るCRMを実行してる企業が増えてきているというのはおっしゃる通りだと思うんですが、一方でリピートがあまりうまくいってないのって、商品サービスのパフォーマンスの問題なんだよな、みたいなところって結構あると思うんですが、その辺りをお客さんとどう会話されていますか?。

坂本:それはステージによって全然変わっていって然るべきなんですよね。例えばあるアパレルブランドさんで、そんなにプレミアムブランドではないけれどファストファッションにちょっと毛を生やしたようなブランドさんの分析をした時に、4ランク設定しているんだけど一番下のランクに90%以上が滞留しているみたいなことになってたわけです。

ブランドが考えるあり方とマーケットから受け止められているものが違う時に、とにかく「ワードローブに2点入れてもらえればいいな」という着地があったんですね。なので私たちは顧客ランク設定を2つにしちゃったんです。AランクとBランクだけで、Bランクもすごく低い水準、例えば2万円かつ2回以上みたいなことだけにしました。

そしたらそれがすごくうまくいって、2回目を達成するための会員プログラムに変えたことでロイヤリティも形成されていくことができたんです。必ずしもVIPカスタマーを用意しないといけないということでもないんですね。

池田:なるほど。その企業の今の顧客基盤の状態によって柔軟に切り替えて、少しずつ基盤が厚くなってきたら階層を増やしていくみたいなステップ論があるってことですね。

坂本:そうなんです。でも皆さん、なんとなく3つ4つに仕分けなきゃいけないとか、VIPを設定しなきゃいけないとか、実態と合っていないのになんとなく形に収めようとするケースは失敗例として伺うことが結構ありますね。

池田:次は具体的な質問なんですが、連絡手段としてLINE連携が圧倒的に増えてきているなと思います。アプリはインストールしてもらうハードルが高いですが、LINE活用は進んでいると思います。効果の実感値としてはいかがでしょうか?。

坂本:もう社会インフラ化しているので、うちの顧客管理システムにもLINEを使ったコミュニケーションなどをビルトインさせたりもしています。ただボトルネックになっていく話としては、やっぱりコミュニケーションコストが結構かさんでいくことです。

一時流行ったスタンプを配信してお友達を獲得して、何百万アカウント持ってますみたいなブランドさんが、ワンメッセージを全体配信しようとするとそれだけで数千万かかっちゃうみたいな話になっているので、その中でもCRMアカウントに落とし込んでいくみたいなことをお勧めしています。

池田:AIチャットボット系の導入はいかがですか?最近の推論モデルで人が対応するよりも最適な回答を返すようなものもありますが。

坂本:そんなに進んでいる感じはまだないですけども、デジタルでやるべき煩雑な業務っていうのはデジタルに任せて、最後の最後のところでやっぱり人の手によるコミュニケーションが重要視されるようなゾーンもあります。

例えばファミレスだったら配膳ロボットが来ても許せるけれども、三つ星レストランでやられるとどうなのってなるじゃないですか。どういう顧客基盤でどんなサービスをされてらっしゃるブランドなのか企業なのかによって、最終の顧客接点をAIチャットボットにするのか人力でやるのかを決めていく必要があると思います。

池田:なるほど。一律的に考えないで柔軟に取り組むということですね。

坂本:そうですね。1to1「的」にというのはそういうことなんです。全て1to1でやるというのは難しさもありますから、人手不足なのはどの業界も同じなので、AIの力もデジタルの力も使いながら底支えしてあげるというのが我々の考えです。

池田:あっという間の1時間半でした。今日はCRMの基本についてスマートウィル代表取締役社長の坂本さんにお話を頂戴いたしました。改めてありがとうございました。

坂本:ありがとうございました。

池田:では皆さんまた次回お会いいたしましょう。お疲れ様でした。さよなら