プレファレンス丨意味やマーケティングにおける重要性を解説
最終更新日:2026.6.30
作成日:2026.6.26
「認知度は高いはずなのに、売上につながらない」「広告や販促を打っても、最終的に競合が選ばれてしまう」。こうした課題は、生活者が買い物のたびに頭の中で振る「サイコロの目(自社商品)が出る確率」、すなわち「プレファレンス(プリファレンス)」が低い状態のときに起こりがちです。
プレファレンスは、『売上の地図(※)』において想起を高めるためのエンジンとして位置づけられており、事業責任者やマーケティング担当者が理解し、組織内でも共通言語としておきたい概念の1つです。本記事では、プレファレンスの意味や構成要素、マーケティング実務における重要性を解説します。
※株式会社トライバルメディアハウス代表の池田が約30年のマーケティング実務集大成として体系化した、売上の影響を与える主要変数の構造化スキームです。
要点まとめ
- プレファレンスとは生活者が買い物のたびに振る「サイコロの目が出る確率」
- 売上を増やすための「想起」を高める重要なエンジンとして機能する
- 価格、ブランドエクイティ、製品パフォーマンスの3つの要素の総和で構成される
- マーケターが直接コントロールできるのは主にブランドエクイティである
- 同一のパーセプション(認識)内における相対的な競争によってプレファレンスは決まる
目次
プレファレンスとはサイコロの目が出る確率
プレファレンスとは、生活者がブランドに対して持つ「相対的な好意度や選好性」です。
USJをV字回復させた森岡毅氏の言葉をお借りして、生活者が買い物のたびに頭の中で振っている「サイコロを転がして自社商品の目が出る確率」 と定義できます。また、特定のブランドや商品、サービスを選ぶ傾向や確率であるとも言い表すことができます。

例えば、山田さん、鈴木さん、佐藤さんがミネラルウォーターを1カ月に10本ずつ購入しているとします。月に10回訪れる購入タイミングのたび、サイコロを振っていると考えてみましょう。
山田さんが6/10、鈴木さんが4/10、佐藤さんが4/10の確率で自社商品を選んだ(自社を示すサイコロの目が出た)とするとき、全体で自社のサイコロが出た確率は14/30です。市場にこの3人しか存在せず、購入頻度が変化しないと仮定したとき、自社のシェアは47%となります。大半の市場は超高度に成熟化しているため、相対的なパワーバランスによって結果が決まります。このようにサイコロの出る確率「相対的に決まる競争優位の力」こそがプレファレンスです。
市場でトップシェアを誇るブランドは、すでにこのサイコロの目を多く持っているため圧倒的に有利な状態にあります。競合に勝ち、自社の商品を選んでもらうためには、プレファレンスを高めて自社のサイコロの目を増やすことが必要不可欠であり、プレファレンスを高めることで市場シェア拡大の可能性が高まります。
プレファレンスがなぜ重要か
「相対的な好意度や選好性」であるプレファレンスは、マーケティングにおいてなぜ重要なのでしょうか。
想起を高め、売上を増やす入力(説明変数)であるため
まずは『売上の地図』を用いて全体像を確認してみましょう。

『売上の地図』が示すとおり、売上は複数の因果によって成り立ちます。売上は単なる結果であるため直接的に上げることはできず、売上を増やすためには原因としての入力(説明変数)を上げていかなければなりません。
売上は「トライアル売上」と「リピート売上」の2種類があり、売り場と想起の2つによって決まります。売上をつくるためには、ニーズが顕在化した際に真っ先に思い出してもらえる「想起」を高める必要がありますが、この想起もまた出力された結果にすぎません。直接的に高めることはできないため、想起を高めるための入力が必要で、その入力こそがプレファレンスです。プレファレンスを高めない限り想起は上がらず、結果として売上も増えないという因果構造があります。
想起集合に入り生き残るため
生活者が商品を選ぶ際、頭の中に思い浮かべる好意的な選択肢の集合体を「想起集合」と呼びます。この想起集合に入る選択肢は非常に限られており、上位3つ程度しか入らないと言われています。想起集合は相対的な選択肢であり、競合がプレファレンスを高めて上位に入ってくれば、自社は引き出しから押し出されてしまいます。想起集合に入り続け、市場で生き残るためには、絶えずプレファレンスを高く保ち続けることが重要です。
プレファレンスは単なる好意度とは言えず、売上という最終ゴールから逆算された論理的かつ実践的な指標であるため、マーケティングにおいて重要視されているのです。売上を伸ばすためには、生活者のニーズが顕在化した際に真っ先に思い出してもらえる想起を高める必要があり、プレファレンスはその想起を引き上げるための重要なエンジンとして機能します。
プレファレンスを構成する3つの要素
プレファレンスは、「価格」「ブランドエクイティ」「製品パフォーマンス」という3つの要素の総和によって構成されています。一般的に、価格が低いほどプレファレンスが高まり、製品パフォーマンスの高さは信頼につながります。

そしてブランドエクイティは「認知」「知覚品質(良い商品だと思われているか)」「ブランド連想」「ブランド・ロイヤルティ(また買いたいと思われているか)」の要素から成り立っています。特に重要なのが「ブランド連想」です。

例えば「鳥取といえば?」と聞くと、多くの方が「砂丘」と答えますが、それ以外の観光地や食べ物についてはあまり出てこないことが多いのではないでしょうか。一方で「沖縄といえば?」と聞くと、海水浴や水族館、沖縄そば、首里城など、色々と連想できます。豊かで厚みのある連想ができるから沖縄は観光客が多いのです。
ブランドにおいて考えると、ブランド名を聞いたときに連想するパッケージ、色、サウンドロゴ、プロモーションに起用されている人物など、これらすべてがブランド連想です。プレファレンスを上げるためには、この連想がとても大切で、サイコロの目が出る確率を高めることにつながります。
注力するべき「ブランドエクイティ」
プレファレンスを構成する3要素のうち、価格と製品パフォーマンスは、マーケティングコミュニケーションの力だけで変えることは困難です。マーケティングコミュニケーションを通じて影響を与えられるのはブランドエクイティに限られることから、あらゆるコミュニケーション施策はブランドエクイティを向上させ、プレファレンスを引き上げるという狙いで行われることが多いです。このブランドエクイティを高めるための入力として、広告、PR、オウンドメディア、ソーシャルメディアといったPESOモデルの各メディアを最適に活用していき、前述の例え話に出てくるような連想に種類や厚みをもたせ、ブランドに影響を与えていくことが欠かせません。
価格、ブランドエクイティ、製品パフォーマンスの総和、さらには(ブランドエクイティにおいて)認知、知覚品質、ブランド連想、ブランド・ロイヤルティによってプレファレンスが上がり、想起が上がり、結果として売上が増えるという構造です。
カテゴリーエントリーポイントとパーセプション
プレファレンスに近い概念として、CEPs(カテゴリーエントリーポイント)とパーセプションにも触れておきましょう。いずれも独立しているものではなく、「生活者のニーズが発生してから、商品が選ばれるまでの一連のつながり」における概念です。
カテゴリーエントリーポイント
まず、カテゴリーエントリーポイント(CEP・CEPs:Category Entry Points)とは、消費者が特定のカテゴリーを想起するきっかけ、オケージョンやニーズのことです。例えば、「仕事で疲れた(オケージョン)、甘いものが食べたい(ニーズ)」、「来週大事なプレゼンがある(オケージョン)、清潔感のあるスーツが着たい(ニーズ)」といった具体的な状況や文脈のことを指します。
パーセプション
パーセプションとは、多くの人が持っている共通の認識や理解のことです。生活者はこうした認識や理解に基づいてあらゆる意思決定をしています。CEPsというドアをガチャっと開けた時、そのニーズを満たせる解決策として「こういう状況ならこういうカテゴリーだよね」と思い浮かぶまでの認識のことです。いくら自社商品を売り込みたくても、生活者のパーセプション(認識)がずれていれば、そもそもドアの向こう側に存在できず、比較検討の土俵にすら上がることができません。この認識のなかで思い浮かぶ選択肢が想起集合です。想起はパーセプションに基づいて行われます。
プレファレンスはこれらの地続きにあります。同一パーセプション(同じ土俵)に乗った競合商品たちとの相対的な競争において、自社商品が選ばれる確率のことです。土俵に上がった商品の中で、このプレファレンスが一番高いものが真っ先に思い出され(第一想起)、最終的に選ばれます。
一連の流れにおける例
3つの概念について、大塚製薬株式会社の『ポカリスエット』を例に挙げ、風邪をひいたときというシーンに当てはめてみましょう。

- CEPs:風邪をひいて熱が出た(オケージョン)、何か水分補給をしたい(ニーズ)
- パーセプション:「風邪をひいたときの水分補給には『ポカリスエット』(他に水、お茶)」が良さそうだ、という認識
- プレファレンス:水とお茶ではなく『ポカリスエット』が良いという相対的な好意度、選考性
この例では、風邪のときの水分補給に「水」「お茶」『ポカリスエット』が同一パーセプションの中で並び、プレファレンスの強さによって『ポカリスエット』が選ばれました。
いくらプレファレンスを高める努力をしても、生活者の脳内にあるパーセプションが自社の意図とずれていれば、購買の入り口であるCEPsで思い浮かべてもらうことができず、サイコロを振ってもらう土俵にすら上がれません。自社商品が選ばれるには、生活者にパーセプションを持ってもらったうえで、競合よりも自社のサイコロの目を増やす努力をしていくことが求められます。
プレファレンスを高め、生活者に選ばれるブランドになるために
プレファレンスをはじめ、これらの概念について自社商品は「どのドアを開けたときに(CEPs)、生活者にどのような認識を持たれていて(パーセプション)、競合と比べてどれくらいの確率で勝てるのか(プレファレンス)」を考えてみましょう。「そもそも開けてほしいドアに、正しい認識で入れていないのではないか?」と疑ってみることが、この3つの概念を使いこなすポイントです。
プレファレンスは、生活者に選ばれる確率を論理的に高めるための指標です。自社のプレファレンスを構成する要素を分解し、適切なコミュニケーション施策を通じてブランドエクイティを向上させていく視点がマーケティング戦略において求められます。