振り返り記事
公開日:2024年4月17日

ブランド実践論③超実践的ブランド構築論~実務家が語るブランディングの理想と現実~ 振り返りレポート

目次

抽象度が高い概念である「ブランド」についての理解と、具体的な打ち手の検討に役立つ知識の習得を目的とした連続特別イベント「ブランド実践論」を開催しました。

全3回中第3回となる今回は、『実務家ブランド論』(宣伝会議)の著者であり、ダイキン工業株式会社で広告宣伝グループ長を務める片山さんをゲストにお招きしました。

ブランドに関する著書や理論は世の中に多数存在するものの、そっくりそのまま現場で使えるものはほとんど無いと言っても過言ではありません。これらのブランド論を土台として学びながらも、実務に落とし込んでいくためにはどのような方法や考え方が求められるのでしょうか。

30年以上にわたって事業会社の最前線でブランドに向き合ってきた片山さんの口から語られる、ブランディングの実践方法とは? 希少な実務家によるブランド論について解説いただきました。

ブランドとはなにかを定義する

ブランドづくりをするためには、「ブランドとはなにか」を定義することが欠かせません(前提として、ブランドには絶対的な定義が存在していません)。ブランドを定義する言葉として代表的なものに「顧客との約束」「差別化」などが挙げられます。これらがブランドを捉えていることは間違いないものの、実務ではそのまま使えないと片山さんは指摘します。そのため、ブランドづくりに取り組むために、実務で使える定義が欠かせません。

定義がなければ、関係者が同じ方向を向いて取り組めなくなったり、本来経営全体で取り組まなければいけないはずのブランドについて「自分は関係ない」と考えてしまう人が出てきたり、「予算が余ったら取り組めばいい」くらいの温度感の人が表れたりなど、ブランドづくりにおける障害が増えてしまいかねません。

また、ブランド論の教科書は、多くの人が知っていて、かつ多くの人から愛されている“超一流ブランド”を研究したものが中心であり、提唱されている方法論を鵜呑みにすることでダイキンも失敗を重ねてしまったそうです。

だからこそ、“超一流”ブランドでなくても再現可能性のある、“フツウ”の企業・商品で使えるブランドの定義と方法論づくりが必要です。片山さんが実務で試行錯誤を繰り返した結果、片山さんはブランドの定義を以下のように考えています。

たとえば、同じものを見て、何を思い出すかは人によって異なるはずです。
以下の図をご覧ください。これは何だと思いますか? そして、どんなイメージがありますか?

これを見て、「梅干し」と考えた方がほとんどのはずです。また、さまざまなイメージを持ったはずです。「すっぱい」「塩分が多そう」などが挙がるのではないでしょうか。

ちなみに、これは梅干しではありません(梅を甘く煮たおやつ)。それでも、この画像を見て梅干しだと考えて、梅干しに関するイメージを持つことができるのは、企業側が何をしなくても、「この形をした物体は梅干しである」のようにブランド(≒妄想)が頭の中に出来上がっているということです

一方、外国の方が先程の画像を見ても、それが何であるかは多くの方が分からないはずです。梅干しのことを知らない人は、何のイメージも持たないはずです。つまり、知らないのであればブランドではありません。たとえば私たちが企業のロゴを見たとき、それを「知らない」のであれば、私たちの頭の中にブランドはありません。

このようにブランドを定義したとき、ブランドづくりとは以下の取り組みであると言えます。

なお、企業や商品・サービス自身が持つ特性がブランドになりやすく、自身が持っていないものでブランドをつくることは困難です。梅干しに対して「酸っぱい」「塩分が多い」というイメージができるのは、梅干しは酸っぱいものだからです。「とても甘い」というイメージをつくることはできません。ブランドをつくるには実態や事実が伴っている必要があることをおさえておく必要があります。

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