振り返り記事
公開日:2023年12月20日

売上と広告 ~いま、どうやって広告を活かすべきなのか~ 振り返りレポート

目次

多くのマーケティング担当者は、広告をマーケティングコミュニケーションの主役として考えています。

しかし、デジタル化の進展によって情報の大爆発が起こり、現代の生活者は一日に数千以上の広告に接触しているとも言われます。そのような環境変化を受け、広告は時として煩わしい存在だと感じられることもあります。

一方で、広告は短期的なレスポンスの獲得から中長期的な態度変容、ブランド価値の育成まで、幅広い役割を果たすことができます。広告がもつ性質を理解し、戦略的に活用することができれば、目的達成のための不可欠な手段となり得ます。

マーケティングコミュニケーションの代表的手段である広告と、私たちは今どのように向き合うべきなのでしょうか。

今回の特別イベントは『広告ビジネスは、変われるか?』(宣伝会議)の著者であり、多数の広告賞を受賞した経歴を持つ安藤さんをゲストにお迎えしたイベントの内容をまとめます。

博報堂DYホールディングスにて取締役常務執行役員CTOを務める安藤さんの目に映る、広告のあるべき姿や未来、そしてマーケターに求められるスキルとは何かについて解説いただきました。

「広告」の本質的な価値とは?

いま、「モノ」から「サービス」への転換点がさまざまなビジネスで訪れています。たとえば、自動車メーカーは自動車という「モノ」を生産する企業から、モビリティ(移動という自動車が持つ本質的な価値)=「サービス」をあわせて提供するビジネスモデルへと転換を図っています。

※「モノ」から「サービス」への変化については、こちらの講座でもくわしく解説しています。

広告枠を販売するメディアと、広告を出したい広告主の間に立ち、売買を仲介することで手数料を得るのがこれまでの広告会社の主要なビジネスでした。「モノ」から「サービス」への変化から考えると、広告会社のビジネスにも変革が迫られていると安藤さんは言います。あえて例えて言うならば、「モノ」としての広告(=広告枠)を提供するという考え方ではなく、広告が持つ本質的な価値を提供していくと考える必要があるということです。広告が持つ本質的な価値とは、広告主が必要としている、広告で得られる「効果」です。

たとえば、20代女性をターゲットとした商品を販売している広告主であれば、20代女性が商品やサービスに興味を持つ・好きになる・サイトに訪れて商品への理解を深める・店舗に来て商品を購入する、などが広告主が広告に対して期待している効果でしょう。

一方で、広告の価値を「広告枠を提供すること」から「広告主が期待する効果を出すこと」だと捉えようとしたとき、メディアごとの取引指標と、広告主が考える効果の評価指標が分断していることが大きな弊害となる、と安藤さんは指摘します。

たとえば、テレビCMではGRP、Webメディアではインプレッションなどといったように、メディアごとに計測する指標が異なるため、メディア同士の効果を横並びに比較することが困難です。また、これらの指標は広告主のKPIと紐付けにくいことも少なくありません。広告主のKPIは、認知度や好意度、第一想起といったより売上との距離が近いものであることがほとんどです。メディアごとの評価指標は、必ずしもこれらのKPIと一致しません。

これらの分断によって、たとえば広告主が「自社製品の認知度を数%上げたい」という効果を望んだとき、どのメディアにどの程度広告を出すことで、望む効果を実現できるのかわからないという問題が発生します。

博報堂DYグループでは「サービスとしての広告=AaaS(Advertising as a Service)」という考え方のもと、メディア横断でのプランニング・バイイングと広告主KPIとの常時連携を実現する統合メディア運用サービスを提供しています。生活者データ、メディアデータ、マーケティングデータを同一基盤で管理することで、 様々なデータ間の連結分析を実現しています。

日本二大広告会社の一つである博報堂DYグループで起こっているこのような流れは、業界構造そのものを大きく変えていくことが考えられます。また、これまで人の手で行われていたメディアごとの運用業務は将来的には自動化されていく部分も大きいだろうと安藤さんは指摘します。

広告に携わるビジネスパーソンに今後求められるのは、広告主が望む結果(効果)に対して、より大局を見た上で戦略や実行計画を考え、統合されたデータを活かすことができるスキルなのかもしれません。

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