売上とパーセプション〜市場をつくる新発想を身に着けよう〜 振り返りレポート
「パーセプション」は、消費者が商品やサービスに持つ「認識」を意味します。
今の時代、認知度が高ければ売れるわけではありません。商品やサービスを選ぶ際、生活者の頭の中に浮かぶ好意的な選択肢=想起集合に入るための重要な要素が、このパーセプションです。
たとえば、小さい容器の洗剤が優れているとの認識が広まっていた中、アリエールは洗濯の除菌の大切さを伝えてシェアを獲得しました。また、子供向けとされていた森永ラムネは「二日酔いに効果がある」という認識を浸透させ、大人の顧客を増やしました。さらに、Zoomは会議は実際に人が集まる場所でのみ行われるものという考えを覆し、オンラインでの会議が可能であることを示し導入企業を大幅に伸ばすことに成功しました。
これらの例のように、売上を上げるためには単に認知されるだけでは不十分で、商品やサービスがポジティブに想起される状況を作り出すこと、すなわち「パーセプション」の構築が不可欠です。
この考え方は、大企業だけでなくスタートアップや中小企業にもあてはまります。ステークホルダーの持つパーセプションを変革することで、ビジネスの成長を後押しする可能性を秘めています。
今回は、『PR WEEK』誌の「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」に選出されたPR専門家であり、『パーセプション 市場をつくる新発想』(日経BP)などの著書を多数持つ本田さんをお迎えし、自分たちに有利なパーセプションを生み出すとはどういうことか、そして具体的にそれはどのように実現するのかについて解説したイベントの内容をまとめます。
なぜ、パーセプションがマーケティングで重要なのか?
パーセプションとは、「知覚」「理解」「認識」といった意味を持ちます。パーセプションが注目されている理由は「みんなが知っている」だけでは商品やサービスが売れなくなったから。パーセプションの存在はマーケティングにおいてどのような影響があるのでしょうか。『売上の地図』を用いて考えてみましょう。
『売上の地図』では、売上は「トライアル売上」と「リピート売上」に分類されます。そして、売上にもっとも影響するのが「想起」です。生活者が商品・サービスを購入するとき、真っ先に思い出してもらうことで売上につながりやすくなります。一方で、購入時において自社のブランドや商品が想起されるかどうかは、パーセプションに依存します。
真っ先に思い出してもらえる商品・サービス(想起率が高い商品・サービス)は、顧客に選ばれる確率がもっとも高くなりますが、自社の商品に対して正しい認識(パーセプション)を持ってもらえていなければ、そもそも想起してもらうことができません。だから、パーセプションが重要なのです。
たとえば、「キャンプ」のパーセプションは、かつて多くの人にとって「家族やグループで行くもの」でした。しかし、「ソロ活」や「ソロキャンパー」という言葉が一般的になったことで、「キャンプは一人で行ってもおもしろい/変じゃない」と思われるようになりました。これがパーセプションチェンジです。その結果、「一人で楽しめるアウトドアの趣味」に対する想起の中にキャンプが含まれるようになりました。つまり、キャンプは一人で行っても楽しめるというパーセプションが一般的になったからこそ、「一人でも楽しめる趣味といえば?」に対してキャンプが選択肢に含まれるようになったのです。
※『売上の地図』における想起・パーセプション・プレファレンスの関係についてはこちらの講座で解説しています。