売上と想起 ~顧客に選ばれるための独自性の築き方~ 振り返りレポート
競争が激しい環境の中で生き残り、持続的な成長を実現するためには顧客から比較検討されるのを待つのではなく、「自分たちが何者か」「サービスの独自性は何なのか」を自ら発信していくことが必要不可欠です。
今回は『ブランド力を高める「指名検索」マーケティング 顧客の検索行動を決める、動画広告の活かしかた』(翔泳社)の著者であり、ラクスル株式会社でマーケティング部長/CMOとして売上を7年間で42倍に伸ばし、現在はノバセル株式会社の代表取締役社長としてマーケティングの民主化に取り組まれている田部正樹さんをゲストにお招きしました。
田部さんの提唱される「指名検索マーケティング」をもとに、「自社商品・サービスが戦うべき場所(確実にNo.1を取れる場所)」を明確にし、その場所にいるターゲットから確実に商品・サービスを指名されるために必要な考え方や具体的な方法論を解説いただきました。
もはや名詞・動詞と化したゼクシィやメルカリ
Googleトレンドにおいてラクスルの指名検索数は20倍以上に伸びました。商品カテゴリーとしては「ネット印刷」に分類されるラクスルですが、「ネット印刷」の検索数は大して変化していないにも関わらず伸ばすことができており、結果としてCPAも半分になったそうです。競合と比較されない状態を作ってきた、と田部さんは言います。
指名検索の強さを田部さんが実感されたのは、テイクアンドギヴ・ニーズでウェディングの事業責任者を務めていたときのこと。ブライダル業界においては、結婚式場選びにおいてゼクシィが圧倒的なポジションを築いています。結婚式場を運営するなら、ゼクシィに掲載しているかどうかが問い合わせ数に大きく影響します。それは当時のテイクアンドギヴ・ニーズも同じであり、年間でゼクシィに数十億以上を投じていました。しかし、ゼクシィへの投資をやめたくても、田部さんが在籍している8年間の間、掲載をやめることはできなかったのです。
なぜなら、ゼクシィは「プロポーズされたらゼクシィ」と、もはやプロポーズ後に結婚式場探しをすることにおける名詞や動詞のような存在になっているからです。このポジションを後発で奪取するのは、並大抵のことでは不可能だと言っても過言ではないでしょう。
これはメルカリも同様です。Googleトレンドで見ると「フリマアプリ」よりも「メルカリ」の検索数のほうが上回っているという事実があります。これも、インターネット上で物を売りたいなど、フリマアプリでできることをやりたいと思ったときには、真っ先に「メルカリ」と検索される状態が出来上がっています。
認知はお金をかければ誰でも獲得できます。一方で、ゼクシィやメルカリのような状態は認知が取れれば実現できるわけではありません。このように特定のフィールドにおいて、自社が名詞や動詞のように想起される状態をつくるには、どのように取り組むべきなのでしょうか。