人を動かす企画のつくりかた ~コンセプトを制するものは企画を制する~ 振り返りレポート
マーケティングのみならず、ビジネスにおいて「企画」と無縁でいることは難しいでしょう。企画とは、現状の延長線上ではない未来を見通し、形にすることであると言えます。
今回は『コンセプト・センス 正解のない時代の答えのつくりかた』(WAVE出版)を執筆された、株式会社電通の関係性デザイナー吉田将英さんをゲストにお招きしました。
吉田さんは、コンセプトを基点に世の中を見聞きし、企てを考え、他者と関係性を築いていく感性を「コンセプト・センス」と名づけ、これを体得するための考え方を「コンセプト構文」を中心に磨き上げてこられています。
企画の最初にして最大のポイントである「コンセプト」の構造や具体的な作り方について、ポイントを解説いただきました。
コンセプトは何を示す概念なのか
コンセプトは抽象度が高く、具象物がないため実態を掴むことが非常に難しい概念です。
コンセプトの具体例を挙げると、AKB48の「会いに行けるアイドル」や、スターバックスの「サードプレイス」などがあります。また、「パーソナルコンピューター」のように、特定の企業や団体という枠にとどまらず、もはや社会で共有されるにまで至ったコンセプトも存在します。
また、コンセプトは必ずしも言葉のみで示されるものではないと吉田さんは言います。
たとえば、吉田さんが携わっている電通若者研究部(電通ワカモン)では、若年層をターゲットの一セグメントとしてみなすのではなく、「若者を通して未来を見通す」ことを以下のような図で示しています。このような概念図もコンセプトの範疇に含まれると考えられます。
コンセプトは必ずしも売上や利益に直結するものではありません。アメリカの投資家であるベン・ホロウィッツ氏は「利益は会社にとっては空気のようなもので、それがなければ会社は死んでしまう。けれども、空気を吸うために僕らは生きているわけじゃないだろ」と述べています。売上や利益ではなく、何を目指すのか? という問いへの回答がコンセプトであるとも言えます。
計算やロジカルシンキングでたどり着く“正解”は同質化しつつあります。象徴的なエピソードとして、香水の香りを生み出す調香師の世界では、「いい香りの材料を探る」競争は終わり、いまは「いい香りの中に、いかにわずかに悪臭を混ぜて未知の香りを生み出すか」というゲームチェンジが起こっているそうです。
この調香師の世界で起こっている出来事のように、「もはや意思を持って素敵な非合理性を取り入れることが魅力を生むのではないか」「ロジックとセンス・美意識が交わるところにコンセプトがあるのではないか」と吉田さんは指摘します。