「考えるスキル」を強みにしよう ~価値あるアウトプットを生み出すためのスキル~ 振り返りレポート
今やあらゆる仕事において「考えること」が日常的に求められるようになりました。中でも、マーケターの仕事は「考えること」なくして成立しないと言っても過言ではありません。
一方で、学校で「考え方」そのものを学べる機会は多くありません。社会に出て、仕事をしながら上司・先輩を真似したり自分なりに工夫したりしながら身につけたという方がほとんどではないでしょうか。
そこで今回は 『「考えるスキル」を武器にする』(フォレスト出版)の著者であるベースストラテジー株式会社代表取締役 筧 将英さんをお招きして、「考えること」と戦略的な頭の使い方のコツを解説いただきます。
筧さんは「考えること」を仕事の成果につなげられる「強み」に変えることは、ちょっとしたコツをつかみ練習を重ねれば誰もができる再現性の高い行為であると言います。
本イベントでは筧さんに「考えること」についての解説とともに、発展形としての「戦略的な」考え方について伺いました。
「考える」って具体的にはどういうこと?
-以下、講師の筧さんにお話しいただいた内容です。
さて、早速ですが「考える」とはいったいどういうことなのでしょうか? 以下5つのポイントを順に紹介します。
1.考えることは、まとめないこと
2.考えることは、分けること
3.考えることは、図にすること
4.考えることは、知ること
5.考えることは、違和感に気づくこと
1.考えることは、まとめないこと
実は「考える」ためには「まとめないこと」が非常に重要です。
一見簡潔にまとまっていても、新たな発見や示唆のない薄い情報となっていることは珍しくありません。まとめることを優先した結果、価値のある要素を取りこぼしてしまうのです。意識的に「あえてまとめない」ことが、考えることの第一歩になります。
まとめないコツの1つめは「思う」と「整理する」の違いを認識することです。たとえば、人と会話や議論をするとき、立場や関係性などの問題から、自分の本音を隠してしまうことはよくあるでしょう。
身構えた状態で自分の考えをアウトプットすると、頭のなかで無意識に話すべき内容・話すべきでない内容を取捨選択してしまうことがほとんどです。そうすると、本当に頭で考えている役立つ情報や面白い話が、口から出にくくなるのです。頭に浮かんだことは、脳が取捨選択をはじめる前に紙に書き出すなどのアウトプット方法で整理するのがおすすめです。
まとめないコツの2つめは、言葉遣いを意識することです。
たとえば、食べ物の味に対する表現で「さっぱり」と「あっさり」は異なる意味を持ちます。しかし、他者との会話の中で、相手がある食べ物に対して「さっぱり」と表現していたとしても、聞き手である自分が自分にとってより耳障りの良い「あっさり」という表現で解釈してしまうことがあるのです。
仕事上のコミュニケーションにおいては、相手が使った言葉を勝手に解釈しないで、そのまま使うことがポイントになります。
普段当たり前のように使う言葉に意識を向けることで、日頃のコミュニケーションで交わされる言葉の微妙なニュアンスの違いに気づけるようになります。
言葉遣いに意識を向ける方法として、普段使っている言葉を「書いてみる」ことをおすすめします。言葉を「書いてみる」を習慣化しておくと、言葉の解像度が高まり、自分の言いたいことの言語化も容易になります。
まとめないコツの3つめは、語彙を増やすことです。
たとえば「ヤバイ」という言葉。これはいくつもの意味を含んでいる便利な言葉です。しかしプランナーやマーケターならば、「ヤバイ」の一言で表せるような事象がおきたとしても、できるだけ多くの言葉で表現できるようになっておきましょう。
語彙が少ないと思考の広がりが少なく、多角的に考えることができなくなってしまいます。人は知っている言葉でしか、物事や現象を理解することができないからです。語彙を増やすことは、マーケターにとって思考のパターンの豊富さに直結すると認識しましょう。
2.考えることは、分けること
「考えるスキル」を高める方法として「分ける」という手段もぜひ覚えていただきたいテクニックの一つです。
「〇〇について考えてきてください」とざっくりと投げられても、どう頭を使って考えればいいのかわからない、という方も多いはずです。そんなときは「考える」ではなく「分ける作業をする」という方法に切り替えると、一気にハードルが下がります。
実は、世の中の多くの仕事はこの「分ける」作業であるとも言えます。上記図のように、分けたい要素を可能な限り列挙し、実際に分けるという作業を行ってみましょう。「考える」という抽象的な概念から、「分ける」というシンプルで具体的な作業に置き換えることで、「考えること」への苦手意識を取り除きやすくなります。
これはマーケティングのフレームワークも同様です。実は、フレームワークも簡単に言えば「分けているだけ」です。フレームワークの使い方が上手な人は、分け方にオリジナリティがあり、軸の作り方が上手なのです。
3.考えることは、図にすること
考えるスキルを高めていくなかで、物事を図で整理することは避けて通れません。テキストだけで定性的な議論をすることは難しく、「図にする」スキルが必須となります。
そのなかでも「概念図」と呼ばれるものは、プレゼンなどの場で議論を前に進めるための道具のひとつです。図の書き方に正解はないので、いくつも作ってみてコツを掴みましょう。たとえ間違っていてもよいので、作った図は他者に見てもらいフィードバックをもらうことがおすすめです。恐れずにどんどん書くことで、概念図の書き方が上達します。
図を使って考えを整理する際は、上記4つの概念図が書けるようになると思考の整理が楽になります。特に「①二軸図」と「②ベン図」を苦手とする人が多いので、これらを書けるとマーケターやプランナーとしての大きな武器になります。これらの概念図は、クライアントと議論をすり合わせる際に重宝します。思考を整理し、議論を前に推し進めるという意味では、業務効率化にも貢献します。
4.考えることは、知ること
「企画やアイデアを考えて」と言われても何も思い浮かばないのは、シンプルにインプットが足りていないことが原因の場合もあります。稀にいる天才と呼ばれる人以外は、自分の中から自然発生的にアイデアが湧き続けることはありません。新しいアイデアを出し、考え方の精度を高めるためには、インプットを習慣化しなければなりません。
5.考えることは、違和感に気づくこと
ビジネススキルを高めるためには、物事の違和感を瞬時に感じ取れる能力も求められます。この違和感は、自分のなかにある基準、平均値から離れるほどに強くなります。いち早く違和感に気づくために、自分にとっての基準となる平均値を持っておきましょう。
マーケターが持っておくべき平均値は「商品/サービスの平均値」と「マーケティング施策の平均値」の2つです。
たとえば、ビールのマーケティング手法について考える際、まずは商品の平均値を把握します。例えばビールの価格は200〜300円くらい、販売形態は缶が主、色は小麦色。これが、商品/サービスの平均値です。
一方「冬にビールのCMをするなら、鍋料理と合わせるのがセオリーだよね」といった、過去の事例から推察したものが、マーケティング施策の平均値となります。
これらの2つの平均値を正しくインプットしておかないと、企画を考えたり、考えたものをアウトプットしたりする際に、「一般認識」とズレが出るケースがあります。特に、自分自身が商品のターゲット層とかけ離れている場合は、より注意が必要です。この2つの平均値をベースにすれば、基本的には大外れしないマーケティングができるはずです。