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公開日:2024年11月20日

実務家から学ぶオリエンの極意 ~全てのしごとに通ずる「お願い」の技法~ 振り返りレポート

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「広告代理店に企画の提案を依頼したら、オリエン内容からズレた提案をされてしまった」「オリエン情報に沿った提案をしたはずなのに、クライアントから微妙な反応をされてしまった」など、受発注先のパートナーとのコミュニケーションにおける認識の齟齬は、マーケティングの現場において決して珍しいことではありません。

ほとんどの仕事は突き詰めていくと「お願いされる」と「お願いする」に行き着きます。その一方で、お願い・依頼の技術は意識されにくいポイントであると言えるかもしれません。
上手にお願いする・されることができずに、最悪の場合「それが人にものを頼む態度か!」というように意欲や態度の問題として扱われることも少なくありません。

そこで今回はニュージーランド航空、ユニリーバ、アウディ・ジャパン、ヤフーを経てソフトバンク株式会社にて新規事業開発統括部 統括部長を務める(所属および肩書きは登壇時当時)井上大輔さんをお招きし、グローバル企業を渡り歩きマーケティングを経験してこられた中で身につけてきた「お願い」の技法を、すぐに使えるフォーマットに落とし込んで解説いただきました。

良いオリエンとは一滴のエッセンスを正しく届けること

-以下、講師の井上さんにお話しいただいた内容です。

まず、「オリエン」とは“オリエンテーション”の略です。新たな広告物(クリエイティブ)を制作する際に、広告を出稿する広告主が、依頼先であるクリエイティブの制作者に対して行う事前説明のことです。クリエイティブの制作者(主には広告代理店や制作会社)にとっては、クライアントの商品・サービスの特徴や広告の目的について知ることができる非常に貴重な機会となります。

広告主側の立場にとって、広告の効果を最大限に高めるうえで大事なのがオリエン・ブリーフィングのスキルです。広告の成否はオリエン力で決まるといっても過言ではないほど、大切なポイントであると感じています。

では、なぜそこまでオリエンが重要であるかを紐解いていきます。広告主がオリエンで説明した内容はまず営業担当が受け取り、そこからクリエイターやマーケター、メディア担当者、外部のパートナーなどに伝えられるのが一般的でしょう。

オリエンのオリエンのオリエンといった形で、最初の内容が伝言ゲームのような形であらゆる登場人物に伝わっていくわけです。オリエンによって伝えられた「最初の一滴のエッセンス」が、最終的には大雨になって、広告制作を担う全ての現場に落ちていくようなイメージです。つまり、最初の原液となる一滴が正しく伝わらなければ、広告主の意図が正しくチームに伝わらず、結果的に効果を発揮しない広告が生み出されてしまうのです。

そこで、広告主が思い描く内容をできるだけ誤差なく伝えるための技術が必要なのです。広告制作に限らず、何かしらの「依頼」を社内外の人に対してするタイミングは仕事の中で溢れています。たとえば人事においての採用計画や、経理においての経理処理、社内で上司が部下に対して何らかの仕事を依頼する際にも、そんな技術は応用可能です。

また、仮に自分が広告主からオリエンを受ける側の場合、質問の形式でオリエンの不備を補う、という意識を持っておくことも一つの手段です。広告主が描いている課題や広告に対するイメージを明確にすることで、結果として最終的に納品し、世に出す広告のクオリティがあがります。

オリエンシートの精度が低いと、最終的な広告のクオリティに大きな影響を与えることは言うまでもありません。しかし、実はそれ以上に、オリエンシートを書き始める前の「準備段階」がとても重要です。

その事前の準備を一言でいうと、その広告が置かれる文脈を整理することです。たとえばウェブサイトを作成しようと考えたとき、「顧客はそのウェブサイトにアクセスする前はどこにいるのか? そして、そのウェブサイトを見たあとにどこに移動していくのか?」という前後関係を整理するイメージです。

代表的な手段として、CMJ(カスタマージャーニーマップ)の整理があげられます。ここでは、特定の商品・サービスを購入する顧客が、商品をまったく知らない状態(スタート)から知って購入する(ゴール)までの導線のことをカスタマージャーニーと定義します。

カスタマージャーニーマップの表頭には、顧客の態度変容(商品・サービスのことを思い出す・候補に入れるなど)のステップ、表側には顧客のブレイクダウン(商品を知っている人・商品購入を候補に入れている人など)を記入します。

こうした整理を事前にしておくことで、例えば特設サイトを作って欲しい、というオリエンをする際に、その特設サイトが置かれている前後の文脈を整理することができるのです。

カスタマージャーニーマップは、それを書き上げることで満足してしまいがちですが、あくまでツールです。使い倒してこそ価値を発揮します。常に実際の利用イメージを思い浮かべながら使い勝手の良いものを作るよう心がけましょう。

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