【講座解説記事】『マーケティング「つながる」思考術』連続講座⑥ SNS公式アカウントでモノは売れるのか?
最終更新日:2026.6.30
作成日:2026.6.25
Instagram、TikTok、Xにおいて多くの企業がSNS公式アカウントを運用し、マーケティング効果を得るために試行錯誤を繰り返しています。その一方で「売上や集客につながらない」「拡散しない」「投稿しても全然反応がない」と嘆く企業も少なくありません。SNSマーケティング、とりわけSNS運用はマーケティングの医療ミスを起こしやすい施策です。
MARPSでは、トライバルメディアハウス代表の池田が2023年1月に上梓した『マーケティング「つながる」思考術』(翔泳社)の詳細を解説する連続講座を行いました。本記事は連続講座の第6回、SNS運用について「できること」やSNS運用を行うときにおさえておくべきポイントを解説します。
※連続講座は2024年2月1日~5月16日に実施しました。
要点まとめ
- SNSアカウントは比較検討や購入促進には向かないが、良質な製品パフォーマンスを前提とした再購入(再想起)には寄与する
- ソーシャルメディアとその他の施策を分けるのではなく、ソーシャルメディアの存在を前提にマーケティング全体を捉え直す必要がある
- SNSは生活者が主役の公園のような空間であるため、過度な売り込みは避け、控えめな温度感でコミュニケーションを行いたい
- 生活者の日常を邪魔せずうっすらとつながり続けること。想起につなげるため、RFE(最近・頻度・感情の動き)を意識する
SNS運用ができること
SNS公式アカウントは、『売上の地図』では以下のとおり位置づけられます。プレファレンスの一要素であるブランド・エクイティに影響を与えることができるインプット施策として機能します。プレファレンスが高まった結果、想起される確率が高まり、売上につながっていくという構造です。

マーケティングファネルマップを見てみましょう。SNS公式アカウント運用は、以下の位置になります。

SNS公式アカウントの大きな特徴は、買っていただく前後の両方に寄与する施策であるということです。一方で、比較検討段階への影響やいますぐの購入を促す販売促進効果はありません。詳しくは後述しますが、ソーシャルメディアは買ってもらう場所ではなく、買いたい気持ちをつくる場所であることを意識しましょう。
買っていただく前(ファネルの左側)は比較検討・購入の位置に置かれていないものの、再購入に位置づけることができるのはなぜでしょうか。それは、SNS公式アカウントを通じて購入・利用体験を思い出してもらうことで、そのまま購入に至ってもらうことができるためです(製品パフォーマンスが伴っていることを前提としています)。
「SNSのそもそも」を理解しよう
ソーシャルメディアやその一部であるSNSは、マーケティングが行なわれる場所としてどのような特性を持っているのでしょうか。
フローとストック
ソーシャルメディアには、フローとストックという2つの性質が存在します。大量の情報が一瞬のうちにタイムラインをどんどん流れていくのがフローであり、ほとんどのSNSはフローの性質を持ちます。

フローは情報がどんどん流れていくことに加えて、人それぞれ見ているタイムラインが異なっているという分散という性質を持ちます。この点はよく見落とされがちなので注意しましょう。フローとは対照的に、ストックの性質を持つのが評価サイトやECサイトのレビューです。
SNS公式アカウントは主にフローの環境下で運用されていることがほとんどですが、Instagramはフローとストック両方の性質を持ち合わせたSNSであるといえます。タイムラインによってフローの性質があるだけではなく、購買意思決定に関わる情報探索に用いられる(ストックされた情報が参照される)という性質があります。
SNSはコミュニケーションの根本を変えた
SNSができる前は、企業と生活者の間には情報の非対称性が存在していました。ほとんどの情報が企業やメディアによって生み出され、生活者に対して一方向的に伝えられていたものが、SNSの登場によって一変します。SNSでは生活者が情報を生み出す主体になり、企業の関与しないところで商品・サービスに関する会話が行われていることが当たり前になりました。つまり、企業と生活者のコミュニケーション方法の在り方が根本から変わったと言っても過言ではありません。
ソーシャルメディア時代のマーケティングの到来
マーケティング環境を、ソーシャルメディアとソーシャルメディア以外とで分けて考えることもほとんど意味を成しません。生活者のそばには常にスマートフォンがあり、SNSで日常の過ごし方を決めたり、会話の中にSNSで得た情報が含まれたりするなど、ソーシャルメディアが日常の中に当たり前のように存在している市場環境でのマーケティングコミュニケーションを考える必要があります。マーケティングコミュニケーションの考え方をSNSに特化したり最適化したりするという考え方では視野が狭くなってしまうことに注意しましょう。
SNSは「公園」のような場所である
SNSはユーザーのユーザーによるユーザーのための場所です。SNSという公園を訪れるユーザーは、公園に来ることを目的としています。メディアをコントロールできるものとして認識すると勘違いしてしまいそうですが、前提としてSNSにいるユーザーは自社の商品やサービスに対する用事はないのです(用事があればオウンドメディアやECサイトに訪れるでしょう)。公園に爆音のアドトラックが乗り込んでくると想像してみてください。思い思いの時間を過ごしていたユーザーから、敬遠されたり煙たがられたりしてしまいます。
SNS公式アカウントは公園に出す出店のようなものであると考えましょう。公園に来ている人たちに対して自分たちの情報を「良ければ見てもらえませんか」というコミュニケーションが必要となる場所です。マーケティングをさせていただくという姿勢を忘れないようにしましょう。
SNS公式アカウントによる想起への貢献
SNSはユーザーのユーザーによるユーザーのための場所です。SNSという公園を訪れるユーザーは、公園に来ることを目的としています。メディアをコントロールできるものとして認識すると勘違いしてしまいそうですが、前提としてSNSにいるユーザーは自社の商品やサービスに対する用事はないのです(用事があればオウンドメディアやECサイトに訪れるでしょう)。公園に爆音のアドトラックが乗り込んでくると想像してみてください。思い思いの時間を過ごしていたユーザーから、敬遠されたり煙たがられたりしてしまいます。
SNS公式アカウントは公園に出す出店のようなものであると考えましょう。公園に来ている人たちに対して自分たちの情報を「良ければ見てもらえませんか」というコミュニケーションが必要となる場所です。マーケティングをさせていただくという姿勢を忘れないようにしましょう。

できるだけ最近(Recency)に、頻度高めで(Frequency)、感情を動かした回数が多いほど(Engagement)想起されやすくなるというものです。なお、Engagementは「今日もいいね!」のような好意的な感情の積み重ねによって、感情的な結びつきを少しずつ蓄積していくことが真骨頂であり、SNS公式アカウントがもっとも得意とすることの一つでもあります。
なお、SNS公式アカウントへのエンゲージメントが高い層は、そうでない層と比較して想起率や購入意向が高く、LTVも高いことはトライバルメディアハウスが支援を行った多くのプロジェクトに共通しています。
SNS公式アカウントの機能
また、SNS公式アカウントはRFEを意識したコミュニケーションによって想起を高めることも含め、以下のような機能を果たすことができると整理できます。

情報を知ってもらったり、先述したようなエンゲージメントを増やしたり、生活者の会話を促すファシリテーターのような存在になったり、インフルエンサーとコミュニケーションするための窓口になったりなど、果たすことのできる役割は多岐にわたります。
また、SNSに日常的に触れていると、SNSを通じて世の中の空気感やトレンドを得やすくなります。SNSで適切なコミュニケーションをとるための肌感覚を満たすこともできます。時代に取り残されず、炎上リスクを下げるという間接的な効果もあるはずです。
SNS公式アカウントは、うっすらと生活者とつながり続けられるマーケティング施策として、他施策とは一線を画しているといえるでしょう。
『マーケティング「つながる」思考術』連続講座一覧
②広告・PR・オウンドメディア・SNSで「できること」と「できないこと」
④ コンテンツマーケティングは短期的なCV獲得に有効なのか?
⑪マーケティングのリアルを理解しよう~日常的に買う商品はどう売れる?~