振り返り記事
公開日:2024年2月9日

『マーケティングつながる思考術』連続講座②広告・PR・オウンドメディア・SNSで「できること」と「できないこと」 振り返りレポート

目次

トライバルメディアハウス代表の池田が2023年1月に上梓した、マーケティングの医療ミス撲滅を目指す書籍『マーケティング「つながる」思考術』(翔泳社)の内容をもとにした連続講座の第2回です。

マーケティングコミュニケーション施策の実行において、生活者に情報を伝達する手段であるメディアの存在は欠かせません。

メディアはPaid、Earned、Shared、Ownedの4種類(それぞれの頭文字を取ってPESO)に分類することができ、それぞれの強みや弱みを知ることが、各メディアが持つ特性の理解を深めることにつながります。

今回はマーケティングコミュニケーション施策に不可欠なPESOメディアそれぞれの「できること」と「できないこと」について解説します。

なぜPESOの理解が必要なのか?

『売上の地図』をもとに考えてみましょう。

『売上の地図』のおさらいとなりますが、売上を上げるためには想起される必要があり、想起されるためにはプレファレンスを高める必要があって、プレファレンスを高めるための一要素がブランド・エクイティです。ブランド・エクイティは直接コントロールできるものではなく、施策がインプットされた結果に生じるアウトプット(結果)です。

ブランド・エクイティを高めるためのインプットのひとつがマーケティングコミュニケーション施策であり、上記の『売上の地図』上でピンク色に塗られている「広告」「PR」「ソーシャルメディア」「オウンドメディア」が該当します。これらはPESOメディアとほぼ同義です。PESOメディアの強みと弱みを理解しておくことは、効果的な打ち手の検討に役立ちます。

※オウンドメディアがインプットではない(プレファレンスに向けた矢印が無い)のは、基本的に受け身のメディアだからです。詳しくはオウンドメディアの章で解説します。

次に、マーケティングファネルマップを見てみましょう。

マーケティングファネルマップに記載されている各手法は、一般的にPESOメディアのいずれかを用いて実施されることがほとんどです。PESOメディアの特性を適切に活かすことで、ファネルマップ上に位置された通りの最適な処方を行うことができます。なぜ各手法がファネル上のその位置にあるのかをより深く理解するために、PESOメディアの特性をおさえておきましょう。

PESOメディアの意味とポイント

PESOとはPaid(ペイド)、Earned(アーンド)、Shared(シェアード)、Owned(オウンド)の4つの頭文字をとったもので、メディアの分類を表します。

企業が生活者とコミュニケーションするためにはメディアの存在が欠かせません。マーケティングコミュニケーションを行うための媒介手段がPESOメディアです。

PESOメディアの具体的な内容を解説する前に、そもそもの「メディア」についてのポイントを3つ解説します。

「伝える」と「伝わる」は違う
メディアは企業が伝えたいことや、知ってほしいことなどを生活者に届けるための媒介であるため「何を伝えるか(メディアにどんな言の葉を乗せるか)」ばかりに目が行ってしまいがちです。「伝わるのか?」「伝わったのか?」ということにも意識を向けるようにしましょう。

メディアに対しても人は態度を持つ
人間は人間に対して態度を変えています(会社の同僚と家族とで同じ態度にならないことは想像に難くないでしょう)。同様に人間はメディアに対しても異なる態度を持っています。

たとえば「宇宙人が現れた!」というニュースがあったとして、そのニュースに接触したメディアが新聞であれば信ぴょう性の高い情報だと捉え、驚きの感情を持ちやすいでしょう。一方で、ソーシャルメディアで「宇宙人が現れた!」と見かけても「デマ?」のように疑いの感情を持つのではないでしょうか。

このように、メディアごとに好意的か・信ぴょう性があるか・能動的に見ようと思うか、などの態度がそれぞれ異なっているのです。また、同じメディアであっても、人によって持つ態度が変わる場合もあります。伝わるコミュニケーションを行うために、利用しようとしているメディアは「生活者からどのような態度を持たれているのだろうか?」を考えるようにしましょう。

メディアごとにリーチ力が異なる
メディアをマーケティングコミュニケーションの手段にできる(コミュニケーションの媒介にできる)のは、メディアに人が集まっているからです。

人の往来が多いメディアだからこそ、見てほしい相手に伝えるというマーケティングコミュニケーションの目的を果たすことができます。人がいないメディアは、メディアとしての役割を果たすことは難しいと言えます。

多くの家庭のリビングに置かれているテレビはメディアとしてのパワーが強く、インターネットの海にぽつんと作られた個人ブログはメディアとしてのパワーは弱くなります(では、なぜ企業が独自に保有するオウンドメディアが成立するのかについては後述します)。

メディアのポイントについて解説したところで、ここからはPESOメディアについて詳細を解説します。

ペイドメディア(Paid)

ペイドメディアとは、メディアが持つ広告枠のことを表します。お金を払って(Paid)メディアに掲載できることからペイドメディアと呼ばれます。

ペイドメディアが持つ最大の強みはコントローラブルであることです。出すメディア、出したい情報、掲載する期間や時間、出稿量など、予算の範囲内で好きなようにコントロールできることが特長です。

そして、ペイドメディアがもっとも得意とするのは認知の獲得です。予算を割いて好きな場所に好きな量だけ出せるペイドメディアは、出稿量を増やせば増やすほど、目に触れてもらいやすく、認知してもらいやすくなります。

『売上の地図』上で売上につながっているのは想起ですが、知られていなければそもそも想起されないため、認知は重要です。認知獲得に強いペイドメディアは今でも重要なメディアであるということに疑いの余地はありません。

逆にペイドメディアが苦手とすることは興味や好意、関心を持ってもらうことです。認知してもらうことでそのまま興味を持ってもらうこともできるというのは、多くの場合幻想です

広告はあくまで企業主語で伝えたいことを伝えるものなので、そもそも無関心な人に対しては暖簾に腕押しであることがほとんどです。私たちは日々多くの広告に接触していますが、認知していても興味がない商品・サービスは少なくないはずです(そして多くの場合、興味がないということさえ認識していない=無関心であることがほとんどです)。それは、どれだけ出稿量を増やしたとしても変わりません。

アーンドメディア(Earned)

アーンドメディアとは、Earned(獲得した)メディアという名の通り、テレビ番組や新聞、雑誌など、メディア自身が情報を取り上げるメディアを表します。実は場所としてのメディアはペイドメディアとほとんど変わりません。

ペイドメディアは主語が自社であり、出稿場所・出稿量・出稿タイミングをコントロールできることに対して、アーンドメディアは主語がメディアであり、取り上げる情報はメディアがコントロールします。その中で自社の情報が取り上げられるように活動するパブリシティなどがアーンドメディアを通じたコミュニケーションを実現するための代表的な手法です。

アーンドメディアが得意とするのは信頼や興味の獲得です。ペイドメディアと異なり、第三者であり(ほとんどの場合において)中立な立場であるメディアを通じて情報を届けることで、興味を持ってもらったり、信頼してもらったりできることが特徴です。

自分で自分のことを「自分はすごい!」とアピールしても多くの人は興味を持ちませんが、第三者に「あの人はすごいよ」と言ってもらうことで興味を持ってもらったり、信頼してもらったりすることができるようなイメージです。

※興味の獲得についてはこちらの講座も参考にしてください。

ペイドメディアとアーンドメディアは、情報を届けるメディアの場所は同じであっても表裏一体の性質を持ちます。

  • ペイドメディアはコントロールできるが、アーンドメディアはアンコントローラブル
  • ペイドメディアは認知獲得が得意で、アーンドメディアは興味や信頼の獲得が得意

なお、アーンドメディアによって認知獲得はできますが、アンコントローラブルなメディアであるため認知獲得を目的とするのであればペイドメディアを活用するほうが合理的です。

オウンドメディア(Owned)

オウンドメディアは自社で保有するメディアを表し、Webサイトが代表的です。オウンドメディアが他の3つのメディアと大きく異なる点は、他のメディアはメディアから生活者という方向に情報が届けられることに対して、オウンドメディアは生活者に訪れてもらう(生活者がメディアに情報を取りに行く)メディアであるということです。

自社保有メディアであるため、発信する情報は自社でコントロール可能です。ペイドメディアと同様、発信内容・発信タイミングもコントロール可能です。一方で、他のメディアは人が集まっているからメディアと呼ばれることに対して、オウンドメディアは他のメディアのように日常的に人が集まっているメディアではありません。

オウンドメディアに人が訪れる理由は、詳しい情報を得るためであることがほとんどです。オウンドメディアはそういった相手に対して詳しい情報を提供し、理解を促進してもらうことに強みがあります。

BtoB製品の場合は、製品詳細を確認し、問い合わせをするかどうかを判断するために購入検討者はオウンドメディアを訪れます。家電や車、家なども同様に、購入を検討している商品・サービスの特徴を知るために購入検討者が訪れます。すでに商品・サービスを認知しており、もっと知りたい・比較検討したい人がわざわざ訪れてくれるメディアがオウンドメディアです。そのため、商品・サービスの購入を直近で検討している人が集まりやすいメディアであるとも言えます。

シェアードメディア(Shared)

シェアードメディアは、ソーシャルメディアのように生活者が生み出したコンテンツを生活者が消費しているメディアのことを表します。

シェアードメディアが得意とするのは興味・共感・意向の獲得です。シェアードメディアで情報を発信するのは生活者であり、生活者同士が興味や感情で繋がりやすいメディアであるため、エモーショナルなつながりを生み出したり、企業と生活者との距離感を近づけたりすることにも長けています。

シェアードメディアは生活者主体のメディアであるため、企業がメディア上に公式アカウントを立ち上げて一員として参加したり、生活者が企業や商品・サービスについて発信していたり、インフルエンサーが企業の代弁者として発信したりしているなど、他のメディアと比べて複雑な性質を持ちます。

※シェアードメディアについては、次回以降の講座で改めて詳しく解説します。

マーケターに求められるのは「適切な配分」

今回は、PESOについて端的にそれぞれの強みや弱みを解説しました。もちろん例外がないわけではなく、ソーシャルメディアを筆頭にPESOの分類だけでは説明できないような新しいメディアも生まれつつあります。

PESOの代表的な性質をおさえつつ、どのような場面で役に立つメディアなのかを多角的な目で見て判断できるようになりましょう。

また、PESOメディアはそれぞれに優劣がつけられるものではありません。ある課題に対してはどれかが得意で、どれかは不得意といったように、課題や場面によって優劣は変化します。つまり、すべてのメディアを自分たちの商品・サービスの課題に合わせてバランスよく活用することが求められます

まとめ

  • 想起やプレファレンスを高めるためには、マーケティングコミュニケーション施策によるインプットが行われる必要がある。そのために用いられるのがPESOメディアであり、それぞれの強み・弱みを把握しておくことが適切な処方のために欠かせない
  • メディアを活用するポイントは「伝えるではなく伝わるを意識する」「メディアに対する態度の違いがあることを認識する」「リーチ力の強弱を知っておく」が挙げられる
  • ペイドメディアは認知獲得を得意とするメディア。出稿場所・内容・時期と期間などをすべて予算に応じてコントロールできることが最大の強みである。一方で、認知してもらうことはできても興味を獲得することまでは難しい
  • アーンドメディアは第三者かつ中立的なメディアによって自社のことを伝えられることで、興味や評判、信頼の獲得を得意とするメディア。ただし、情報を発信してもらえるかどうかと、発信内容についてはコントロールすることができない。認知獲得もできるが不確実性が高く、認知獲得をめざす場合はペイドメディアを活用すべき
  • オウンドメディアは自社保有メディア。他のメディアと違って生活者が自ら情報を取得するために訪れるメディアであり理解促進に強い。すでに興味がある人が訪れるメディアであり、今すぐ客に情報を届けることに適している。一方で情報を発信するだけでは人は来ないため注意が必要
  • シェアードメディアは生活者が発信した情報を生活者が消費しているメディア。感情的なつながりを作り出すことに長けており、興味や共感、意向の獲得が得意。ペイドメディアとしての性質や、第三者に自社のことを語ってもらうアーンドメディア的な性質を持つこともある
  • 各メディアに優劣をつけることはできない。課題に応じて用いるべきメディアが異なるため、各メディアの性質や得意・不得意を把握し、適切な配分ですべてのメディアを有効に活用することがマーケターには求められる

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